2022/1/25掲載
外傷再建センターとは
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外傷というのは、いわゆるケガのことであり、外傷再建センターでは交通事故などによる大ケガの救急治療から、過去に受けた治療の後遺障害の治療まで、様々な外傷に対応しています。
日本の医療は病気の治療偏重で怪我の治療は軽視されています。多くの先進国では病気の救急とは別に外傷専門の救急センターが人口100〜200万人に1ヶ所設置され24時間全ての外傷に対応しています。それに必要な医療スタッフを擁し、受け入れを断わることはありません。
しかしながら日本にはそのようなセンターはありません。
我々は日本で初めてのそのような外傷専門の救急センターを目指しており、どんな怪我にも対応できるよう様々なスペシャリストを集め、先端医療機器を駆使して治療に当たっています。
外傷再建センターで行う治療法
どんなにひどい怪我でも怪我人は病人ではありません。うまく治せば元通りの健康体に戻ります。どれだけうまく治るかは医師の腕次第です。曲がったり捻れたり短くなったりしているのに、あるいは骨が繋がらないままになっているのに、もうこれ以上は治らないと言われている人はいませんか。
現在では、骨や関節の変形を矯正したり短くなった骨を長くしたりする新しい骨切り法やイリザロフ法、繋がらない骨を繋ぐチッピング法、切断された指・腕・脚の再接着や無くなった骨や皮膚を補填するフラップ手術等のマイクロサージェリーなど新しい技術が開発されています。
座ることもできないほど変形した骨盤でさえ最高の技術を持った医師ならほぼ元通りに矯正することができます。
そのような技術の中から幾つかもう少し詳しくご紹介します。
イリザロフ法
イリザロフ法はロシアで始められた方法で、組織は張力をかけ続けると新しい組織が作られ徐々に長くなるという治療法です。骨は硬くて伸ばせないので骨を切ってそこに出来た仮骨を延長します。イリザロフ法を用いれば脚を5cmぐらい長くするのは容易です。また延長直後の仮骨は柔らかいので曲げるのも捻るのも自由自在です。ほぼ全ての骨の変形はイリザロフ法で治すことができます。
チッピング法
チッピング法(骨粉砕法)は、骨折が繋がらないままになっている偽関節に対する治療法で、偽関節周囲の骨をバラバラに砕いて骨折治癒機転を盛大に起こさせ偽関節部を癒合させようとするもので、私が考案した方法です。一般的に行われている骨盤からの骨移植と同等以上の治療成績があり、採骨部の合併症が全くないのが特徴です。
32歳男性 サッカー中に受傷:チッピング法で偽関節の骨癒合促進、イリザロフ法で変形矯正


42歳男性 偽関節により変形:チッピング法とイリザロフ法の併用で骨癒合と変形矯正の同時治療



粉砕部に旺盛に形成される仮骨を使ってイリザロフ法を併用することも可能ですから、偽関節部に短縮や変形のある患者さんでも同時に矯正することが可能です。
マイクロサージェリー
マイクロサージェリーは手術用顕微鏡を使った血管縫合手術ですが、当センターでは世界最高倍率の手術用顕微鏡とそれを使いこなせる医師によって0.5~0.2mmの血管も確実に縫合できますので、切断指・肢の再接着も高い生着率を保っています。
また挫滅創などで生じた皮膚・筋肉・骨の広範な欠損に対しては、血管柄付き筋皮弁や血管柄付き骨移植によって補填することができます。
病気ではなく怪我の治療で困っている方は、是非外傷再建センター受診をご検討ください。