2021/9/24掲載(更新2021/11/04)
難聴になると認知症のリスクが高くなる
難聴は認知症の発症要因の一つという報告が厚生労働省から発表されました。
日本人の高齢者4人に1人が認知症
現在、日本の認知症患者は約462万人(2012年厚生労働省調べ)。高齢者の4人に1人は認知症、またその予備軍といわれています。団塊世代が後期高齢者となる2025年には、患者数が700万人を超えると見られています。
2015年1月、政府は高齢化が急速に進む日本の問題に、認知症の対策強化に向けての国家戦略である新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)を策定。認知症発症予防の推進と認知症高齢者の日常生活を支える仕組みづくりに国をあげて取り組みはじめました。 その中で認知症の危険因子として「加齢」や「高血圧」の他、「難聴」も一因として挙げられています。
どうして難聴と認知症に関係があるの?
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難聴が進行するにつれ、様々な影響を及ぼします。
難聴になると、周囲からの情報量が絶対的に減少します。
その結果、他人の言っていることがよく聞きとれない、会話がうまく成立しない、という経験を繰り返し、周囲との関わりを避けるようになります。そして、だんだん社会との交流が減少し、精神的健康にも影響を与え、認知機能の低下をもたらすことがあります。
しかし難聴になるとすぐに認知症になるわけではありません。
難聴によりコミュニケーションが少なくなったり、社会との関わりが減ったりすることで認知機能に影響が出る可能性があります。
加齢に伴う難聴
難聴は年を重ねるにつれ、誰でも起こりうるものです。
聴力の低下は30代からすでに始まっており、難聴が進むにつれて聞こえる音が減っていきます。

このグラフは、縦の数値で音の大きさ、横の数値で周波数・音程の高低を示しています。
加齢性の難聴は、一般的に高い音から聞こえが悪くなります。したがって、会話の中でも高い周波数エネルギーを要する子音が聞き取りづらくなり、「さとうさん」と「かとうさん」や、「いちじ」と「しちじ」を聞き間違えたり、聞き分けることが難しくなったりすることがあります。
聴力の低下は、徐々に起こるため自分では気づきにくい、というのも加齢性難聴の特徴です。
聞こえにくいとコミュニケーションが取りにくい
「声をかけても返事がないから余計な話はしない」
聞こえの問題で、家族や友人とのコミュニケーションがしにくいと感じていませんか?コミュニケーションがうまくいっていないのは、もしかしたら難聴が原因かもしれません。
聞こえにくさは自覚しにくい
加齢による聞こえは徐々に低下するため、本人も気づかないまま対応が遅れることが少なくありません。また、難聴は見えにくい障害で周囲の人から理解されにくい側面もあります。
「テレビの音が大きすぎるので一緒に見ない」「同じことを繰り返し尋ねられるので面倒」など、難聴に対する理解不足のために人間関係にも影響を及ぼすこともあります。
聴覚情報は様々な情動を引き起こす非常に大事なものです。
会話コミュニケーションは、耳に言葉が入ることから始まります。耳で言葉を聞いて、脳で思考し、言葉で返す、というのが会話をするときの処理プロセスです。つまり聴覚は、思考をするための大事な情報源であり、この聴覚によって、「楽しい」「うれしい」などの情動を引き起こします。したがって聴覚は、コミュニケーションをする上でとても大事なのです。
補聴器を使って音を届けましょう!
難聴の進行をそのままにしておくと、コミュニケーションが不足し、孤立が進み、最終的には認知機能の低下やうつを発症するリスクが高まります。早めに補聴器を使うことで脳に音を届けましょう。
コロナ禍で在宅されている方、外に出て社会活動をする機会が減ってしまった方も補聴器を装用してラジオを聴く、新聞を朗読する、補聴器で拾った音を聴くトレーニングをすることで補聴器に馴れるようになります。
当院神経聴覚耳科では補聴器認定指導医が言語聴覚士、認定聴覚技能士とともに補聴器のフィッティングを進めております。補聴器について関心のある方、購入希望のある方、心配のある方はぜひ受診をご検討下さい。