2021年5月号 ドクターコラム

その腰痛は放っておいて大丈夫ですか?

脊椎脊髄末梢神経外科 医長 菊地 奈穂子

今回は厚生労働省国民生活基礎調査で有訴者率、受診率ともに毎年上位にある、よくある痛み、腰痛症状についてお話します。

危険な腰痛

  • 腰痛について
  • 腰痛、非常によくある症状ですがその原因はさまざまです。腰痛の原因脊椎由来、神経由来、内臓由来、血管由来、心因性、その他に分けられます。具体的な例をあげますと、尿路結石、子宮筋腫、大動脈瘤など腰とは一見関係のない疾患が原因かもしれません。

よくある腰痛の中には早く病院を受診したほうがよいものがあります。表1をご覧ください。腰痛のRed flags(危険信号)です。これらに当てはまる方は重篤な疾患(腫瘍、炎症、骨折など)が隠れている可能性があります。

重篤な脊椎疾患(表1)重篤な脊椎疾患
腰痛診療2019ガイドラインより

これらの疾患は放置しておくと病状が悪化し治療に難渋する可能性が高くなります。まだ若いから、今まで健康だったから大丈夫と過信するのではなく、表1にあてはまる腰痛が見られる場合は早めに専門医を受診し、問診、身体所見などの診察をうけ、適切な検査を行い適切な治療を受けましょう。(図1)

腰痛の診断手順(図1)腰痛の診断手順
腰痛診療2019ガイドラインより

受診したほうが良い腰痛

いつもの腰痛だけど病院に行ったほうがいいのかな、それほどでもないのかなと迷っておられる方も多いと思います。下肢の感覚障害(しびれ、疼痛、知覚低下)、運動障害(歩行時に膝や腰が抜ける感じやスリッパが脱げてしまうなど)を伴う腰痛は脊髄神経の圧迫による症状の可能性があります。

腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折、腰椎分離症などは、検査をすれば診断は可能で、患者さんの状態に応じた治療を行うことで症状の改善が見込めます。病院受診を迷っておられる方は一度脊髄外科を受診してみてはいかがでしょうか。

検査では異常がない腰痛

コロナ禍の今、自宅で過ごす時間が増えている方が多いと思いますが、皆さんも肩こり、腰痛などを自覚されることは多いのではないでしょうか。痛みとは非常に不快な感覚で、痛みなんて感じなくなればいいのにと思われるかもしれません。

しかし私たちの体は痛みを感じることで自分の体の中に起こっている異常に気付くことができます。痛みを感じなければ体に起こっている危険を察知しそれを回避することが難しくなり病気やケガを繰り返してしまいます。

痛みを感じることは自分の体を守る重要な役割があります。ただの腰痛も、ご自身の身体に起こり始めている病気のサインかもしれません。病院で検査をいろいろされても特に異常が見られないこともたくさんあります。

しかし検査で異常がなくても体に痛みがある場合は、普段の姿勢や生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。姿勢、運動不足による筋力低下、体重過多などが筋肉や関節に負荷がかかり痛みとしてサインを出しているのです。

MRIなどでは現時点で異常がなくとも、悪い生活習慣を続けることにより将来起こる加齢性変化を早く進めてしまう可能性があります。運動、ストレッチ、姿勢に注意をしましょう。