リハビリテーション科コラム

脱水症の症状と治療

リハビリテーション科 理学療法士 市川 亘亮

2023/7/29掲載

脱水とは

  • 脱水とは
  • 体液(細胞外液)の喪失により生じる病態です。体内のナトリウム濃度によって、高張性、等張性、低張性脱水に分類されます。体内の水・ナトリウムバランスが乱れると、血漿ナトリウムの濃度や細胞外液量に異常が生じ、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、浮腫、脱水などの状態になります。

高張性脱水(高ナトリウム血症を合併した脱水)

高張性脱水とは、体液が濃くなった状態です。体液を喪失したうえで、それに見合った水分摂取がなかった場合に生じます。

原因 下痢、嘔吐、発汗(特に飲水行動が取れない場合)、尿崩症など
症状 口渇、倦怠感・脱力、発熱、興奮・傾眠などの精神症状、痙攣、意識障害
治療 低張液の輸液

通常、人が喪失する水分(汗、排尿など)はほとんどが低張(体液よりも薄い)であるため、喪失したままでは高張性脱水となります。

特に、口渇感の低下した高齢者、自発的に飲水できない乳児、意識障害のある患者様は注意が必要です。

等張性脱水

水とナトリウムが比較的等しく失われた場合に生じます。

原因 出血、熱傷
症状 倦怠感・脱力、立ちくらみ、めまい、意識障害
治療 等張液の輸液(重度低張性脱水では高張液輸液も検討)

低張性脱水(低ナトリウム血症を合併した脱水)

低張性脱水とは、体液が薄くなった状態です。体液を喪失し、それよりさらに低張な水分を摂取した場合に生じます。

原因 下痢、嘔吐、発汗など
症状 倦怠感・脱力、頭痛、立ちくらみ、めまい、悪心・嘔吐、痙攣、意識障害
治療 等張液の輸液(重度低張性脱水では高張液輸液も検討)

脱水の対応

脱水となった人は、体力を消耗しているため、原則安静を保ちます。また、室温が高いとさらなる脱水症状を助長するため、室温を快適に保つことも重要です。

脱水と聞くと、”どんどんお水を摂取させよう”と思いがちですが、真水を飲むとさらに体液が薄まり、低ナトリウム血漿を進行させてしまいます。そうすると、脳細胞浮腫などを引き起こし重篤な神経症状を呈することがあります。飲むのは水ではなく、スポーツドリンクや経口補水液など、体液の濃度にも配慮された飲み物を飲むようにしましょう。

また、脱水は分類によって輸液の種類が変わるため、落ち着いたら近医へ受診し、適切な治療を受けることを推奨します。

脱水のサイン

①舌の湿潤状態

〇:適度な潤いがある
✕:舌に潤いがなく乾燥している(ひび割れているような舌は注意)

②皮膚の状態

前腕や大腿部、すねの辺りの皮膚状態を観察します。
〇:乾燥はなく鱗屑(りんせつ(粉がふいている状態))がない
✕:乾燥や鱗屑がある

前腕、大腿部、高齢者では胸部の皮膚をつまんで離しても10秒以内に跡が戻らない場合、脱水の疑いがあると判断する(ハンカチーフサイン陽性)。

③尿の量・色

〇:尿量は1日あたり1000~1500m・色は薄黄色〜黄褐色
✕:尿量は1日あたり1000ml以下・色は濃い黄色

④その他の所見・症状

脱力感/全身倦怠感、血圧低下、腋窩(えきか(わきの下のくぼみ))の乾燥/発汗の消失、心拍数の増加、体重減少など

もうすぐ梅雨が明け、夏を迎えます。光熱費の高騰から節電のために、エアコンなどの使用を控える方もいらっしゃいますが、必要な時には、体調を考慮しエアコンなども併用し、栄養バランスの整った食事や水分摂取などで体調管理を行い、今年の夏も乗り越えていきましょう!

【出典元】
・病気がみえる vol.8 腎・泌尿器 第3版
・看護がみえるvol.3 フィジカルアセスメント
・フィジカルアセスメント 完全攻略Book 曷川 元