リハビリテーション科コラム

作業療法における役割のとらえ方

リハビリテーション科 作業療法士 久保田 悠介

2023/3/9掲載

役割を大切にすること

みなさんは、「あなたの役割は何ですか?」と聞かれたら、何と答えますか?普段、ご自分の役割を意識することはありますか?

リハビリテーションの1つである作業療法(OT)では、その対象となる方の役割を大切にしています。
今回は、作業療法における役割の捉え方をご紹介します。

  • 何らかの社会集団に所属
  • 私たちは必ず何らかの社会集団に所属しています。例えば、家族であったり、会社であったり、学校であったり、住んでいる地域の一員として所属しています。また、運動部に所属している人もいるでしょうし、ボランティアの一員として活動されている人もいるかもしれません。人は様々な社会集団に所属しながら暮らしています。そしてその所属している社会集団から必ず何らかの期待が寄せられているはずです。つまり、この集団に所属しているのであれば、それらしく振舞って欲しいという期待です。この期待は明言されることもあるでしょうし、暗黙の期待であることもあります。そして私たちはその期待に応えるように行動しています。

所属する社会集団は1人1つということはなく、私たちは複数の社会集団に同時に所属しています。例えば、ある人は会社で会社員として働き、家に帰れば家族の中で暮らし、休日には趣味のサークルに参加しています。そして私たちはそれぞれの社会集団に対する役割意識を持ち、「いろんな顔を持つ」存在と言えます。

ある日突然、病気やけがをして入院を余儀なくされ、今までバリバリこなしてきた社会的役割を失ってしまうことがあります。その所属していた社会集団からの期待に応える行動が出来なくなってしまいます。

ある女性はこれまで主婦として家事や育児を上手にこなしてきましたが、病気で体に麻痺が生じ、車いすでの生活となれば今まで通り主婦としての役割を担うことができなくなります。旦那さんやお子さんからの期待されている料理や買い物が十分にできなくなってしまいます。

ある男性は会社を経営し、経営者としての役割に就いていましたが、病気をきっかけに通勤することが出来なくなり、今まで通りに働くことが出来なくなります。社員から期待されている経営者としての役割や家族から期待されている生計者としての役割を担えなくなってしまうかもしれません。

役割の喪失は、自らの存在意義を失うことにもなりかねず、その後の人生に大きな影響を与えます。一方で、失われた役割は、役割を変更するという形で再獲得する場合もあります。

作業療法の目標や練習内容は、それぞれの人が担う役割によって変わります。人によって役割は異なり、それぞれが大切にしてきた役割はご本人やご家族からのお話で浮き彫りになることもあります。作業療法では、対象となる患者様の役割を理解し、上手に支えることで、その方が人生を取り戻し、生き生きとした暮らしを再開する支援をしていきます。

引用・参考文献:鈴木憲雄「人間作業モデルで読み解く作業療法」

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