2019年11月号

糖尿病に対する運動療法

リハビリテーション科 理学療法士 山本 哲也

世界保健機構(WHO)は、成人の糖尿病有病者数が2014年までに4億2,200万人に達したと発表しました。さらに今後有効な対策をしなければ、2025年までに世界の糖尿病人口は7億人以上に増えると予測しています。2016年時点で日本国内においても、糖尿病が強く疑われる者と糖尿病の可能性を否定できない者の合計が総人口の15%を超える約2,000万人いるとされています。糖尿病は様々な合併症を引き起こすため万病のもとと考えることもできます。今回は糖尿病の運動療法について簡単にお話させていただきます。

1.運動の目的

  • 脱水症が起こるピークとは
  • 糖尿病における運動療法の目的としまして以下の2つが挙げられます。

    ①短期効果(食後高血糖の改善)

    運動は血液中のブドウ糖をエネルギー源として消費し、血糖値を下げる効果があります。特に食事の後の運動は急激な血糖の上昇を抑え速やかな低下につながるため効果的です。

    ②長期効果(インスリン抵抗性の改善)

    数か月間トレーニングを続けていると、運動を継続することによって筋力がつき基礎代謝が高まると共に、インスリンの効きが良くなるため血糖値が上がりにくく、血糖コントロールの改善に役立ちます。

2.運動の種類

運動の種類は以下の3つに大別されます。

①有酸素運動

ウォーキングやジョギング、自転車エルゴメーターなどが該当します。

②筋力トレーニング

スクワットやつま先立ち腕立て伏せなどが該当します。

③体操・ストレッチ

準備運動や整理運動が該当します。

3.運動の①時間や②頻度 ③強度

①時間

1日20分~60分(1週間で約150分を目標に)。食後1時間~2時間後を目安に。

②頻度

週に3回~5回を目標に。できれば毎日(細切れ運動でも効果あり)。

③強度

軽~中等度レベル。楽~ややきついと思うレベル。会話しながら実施できるレベル。

4.運動時の注意点

インスリンや経口血糖降下薬を内服している方は低血糖症状に注意しましょう。また、血糖コントロールが不良な方や合併症などをお持ちの方は運動を実施してもよいか、まずは主治医に確認しましょう。



最後に、運動を継続させるためには習慣化する必要があります。まずは短い時間でも良いので、楽しく汗をかいてみてはいかがでしょうか?