広報紙 vol.60しんゆりニュースレター

2023/2/1掲載

リハビリテーション科特集

リハビリテーション科特集|広報紙

  • 新百合ヶ丘総合病院
    リハビリテーション科 部長
    もろとみ のぶお
    諸冨 伸夫 医師
  • 【プロフィール】
    2000年昭和大学医学部卒業。07年昭和大学病院リハビリテーション医学診療科助教。09年榊原記念病院循環器内科医員。13年榊原記念病院循環器内科医長。15年ゆみのハートクリニック在宅診療部。17年昭和大学藤が丘リハビリテーション病院講師。21年より現職。
    心臓リハビリテーション指導士/日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医・指導医/日本在宅医療連合学会認定専門医・指導医/医学博士
  • リハビリテーション科は内科や外科などと同じ19の基本診療領域の1つで、独立した診療科目です。単独で専門医を取得し標榜することができます。専門医数は全国で2,613人(2021年)と少なく、高齢化の進む本邦では最も不足している診療科の1つです。対象となる障害分野は、脳血管疾患、運動器疾患、脊髄損傷、神経筋疾患、切断、小児疾患、リウマチ性疾患、内部障害(呼吸器疾患、循環器疾患など)、がん疾患などと幅広く、横断的診療を行います。

    リハビリテーション診療とは、各疾患の基礎的な知識に基づいた上で患者さんの障害に着目して、様々なリハビリテーション評価をします。評価には運動機能評価、嚥下機能評価、高次脳機能評価、膀胱機能評価などの身体的な面だけでなく、日常生活動作評価などから家屋評価、社会的評価(家族背景や職業、余暇活動など)まで様々なものがあります。そこから障害を整理してリハビリテーション処方をします。リハビリテーションカンファレンスでは多職種が集って患者さん一人ひとりに合わせた治療目標を立てていきます。

  • リハビリテーション治療では、理学療法、作業療法、言語聴覚療法はもちろんですが、それ以外に物理療法(温熱療法、電気刺激療法、磁気刺激療法、超音波療法など)、義肢装具療法、薬物療法、栄養療法などがあります。昨今ではリハビリテーション工学の分野も進んでおり、ロボットを使用した治療も行われます。治療は疾病の再発や再入院の予防のみならず、障害を抱えた生活の支援とその持続を目指します。

    患者さんには、年齢や疾患を問わず様々な障害をお持ちの方がいます。私たちは、患者さんとそのご家族がこれからどうしていくのがよいかを一緒に考えてリハビリテーションの目標を立てます。その過程がリハビリテーションの始まりなのです。障害を抱えて生活することは大変なこともあるかもしれませんが、そこから生まれる喜びや楽しみもきっとあります。私たちは患者さんやご家族がこの地域で少しでも暮らしやすくなるよう、リハビリテーション診療にこれからも真摯に取り組んでまいります。どうぞ今後とも当院、そして当科をよろしくお願いいたします。

【目次】

障害を肯定する:リハビリテーション医学

  • リハビリテーションとは
  • リハビリテーションとは何のためにあるのか。それは患者さんが障害を受け入れるためでも、まして障害を克服するためでもありません。リハビリテーションは、患者さんが「そこにある障害を肯定し、生活の場で障害とともに再び生きていくこと」への行動の総和であると私たちは考えています。

皆さんはこれまでに大きなケガや病気をしたことがあるでしょうか。中には一度も大病を患ったことがない方もいるかもしれません。しかしたとえそのような方でも、年齢とともに体力は落ちていきます。これまでできていたことや当たり前だったことが、ある日突然あるいは少しずつできなくなっていきます。それは辛く悲しいことかもしれません。リハビリテーション科ではそのような方々の新たな可能性を探して、できることを増やし新しい生活を再スタートするための支援をします。

  • リハビリテーションとは
  • 内科や外科などの診療科は、病気やケガの診断や治療を主とするのに対して、私たちは障害の診断と治療を基本としています。たとえば「歩行障害」の原因には、骨折、下肢切断、片麻痺、脊髄損傷、心不全など様々なものが挙げられます。リハビリテーション科ではその全てに対して歩行障害の原因を評価し、歩行能力の再獲得や移動手段の再検討を行います。そしてリハビリテーション診療は医師だけでなく、セラピスト、看護師、管理栄養士、ソーシャルワーカー、薬剤師、義肢装具士など多くの職種によって進められます。

これは一般的に「チーム医療」と呼ばれますが、ここでいうチームとは野球やサッカーのようなチームとは異なります。スポーツでは同じような考え方の人が集まり、意思統一を図りながら進められていくことが多いです。

しかし医療職種はそれぞれの考え方や立場・職務もまったく異なります。それでも1つだけ共有していることがあります。それがリハビリテーションの目標です。私たちは患者さんもこのリハビリテーションチームの一員としてとらえています。そしてすべての関わる人で考えたリハビリテーションの目標の達成に向けて、それぞれが動き出します。バラバラのように見える動きの中にも、目標の達成に向けた意図とつながりがそこにはあります。ちょうど様々な楽器を持ち合わせて1つの楽曲を演奏していく音楽に似ています。美しいハーモニーは人の心に響くように、リハビリテーション治療は時に素晴らしい効果を見せることがあります。

回復期リハビリテーション病棟

回復期リハビリテーション病棟とは病気やケガで入院された方が、病態が安定した後にリハビリテーションを中心に入院を継続して行うためのシステムで、2000年に開始されました。機能回復や能力向上を目的に、集中的かつ包括的にリハビリテーション治療を受けることができます。

現在、全国に約9万床の回復期リハビリテーション病棟が開設されています。入棟できる疾患や状態と最大の入院期間が厚労省より定められています(表1)。当院では365日、1日最大3時間のリハビリテーション治療が行われます。そして食事や着替え、排泄など練習によりできるようになったことは、看護師とともに病棟生活で実践し身につけていくようにします。退院が近付くと社会復帰に向けた生活練習も行います。高齢者で介護サービスを利用される場合は、退院前にご本人やご家族だけでなく介護福祉職の方も交えて話し合いをします。そして本人の希望に沿うだけでなく、持続可能な療養生活の再開へとつなげます。

表1 回復期リハビリテーションを要する状態 算定上限日数
回復期リハビリテーション病棟に
入院する患者
1 脳血管疾患、脊椎損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント手術後、
脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発神経炎、多発性硬化症、
総神経叢損傷等の発症後若しくは手術後の状態又は義肢装着訓練を要する状態
算定開始日から起算して150日以内
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、
重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷の場合は、
算定開始日から起算して 180日以内
2 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節若しくは
膝関節の骨折又は2肢以上の多発骨折の発症後又は手術後の状態
算定開始日から起算して90日以内
3 外科手術後又は肺炎等の治療時の安静により
廃用症候群を有しており、手術後又は発症後の状態
算定開始日から起算して90日以内
4 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経、筋又は靭帯損傷後の状態 算定開始日から起算して 60日以内
5 股関節又は膝関節の置換手術後の状態 算定開始日から起算して90日以内
(新)6 急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態 算定開始日から起算して90日以内

【参考】厚生労働省 令和4年度診察報酬改定の概要 入院Ⅱ(回復期・慢性期入院医療)より ※一部改変

当院でのリハビリテーション診療

  • 回復期リハビリテーション病棟回復期リハビリテーション病棟
  • 当院は総合病院であり急性期、回復期から生活期まですべての時期においてリハビリテーションを提供しております。スタッフは総勢111名(理学療法士76名、作業療法士21名、言語聴覚士14名)で患者さんのリハビリテーション治療に当たっています。

■急性期リハビリテーション

急性期では合併症の予防と早期回復のために、入院直後からリハビリテーションが行われます。当院では診療科を問わず主治医からリハビリテーションの依頼があります。年間のリハビリテーション依頼の総件数は132,514件(2022年入院・外来含)にもなります。そしてさらなるリハビリテーション治療が必要で適応のある方は、回復期リハビリテーション病棟へ移動します。

■回復期リハビリテーション

  • リハビリテーションとは 表2 リハビリテーション病棟入棟患者疾患別割合
    (2022年10月31日時点)
  • 当院では2020年7月に回復期リハビリテーション病棟を起ち上げました。これまでに回復期リハビリテーション病棟では多くの患者さんを受け入れてまいりました(表2、表3)。

リハビリテーション病棟入棟患者数表3 リハビリテーション病棟入棟患者数

施設基準は「回復期入院料1」を算定しており、各リハビリテーションセラピストやソーシャルワーカーはもちろん、管理栄養士や病棟専属の薬剤師も当院では配置しており、より質の高いリハビリテーションの提供に努めています。在宅復帰率も高い水準を維持しております(表4)。

在宅復帰率表4 在宅復帰率

(全国平均は、2022年版「回復期リハビリテーション病棟の現状と課題による調査報告書」より入院料1を算定している施設で算出)

また2022年4月には診療報酬の改訂があり、心疾患(急性心筋梗塞または心臓術後の状態)の方も入棟できるようになりました。当院では循環器科が常駐しており、当科と連携して全国に先駆けていち早く心疾患患者の回復期リハビリテーション病棟における心臓リハビリテーションを開始しております。

■生活期リハビリテーション

当院では生活期の患者さんに対して、訪問リハビリテーションを行っています。退院直後は生活様式が変わり、転倒などの事故や疾病増悪が起きやすいことが知られています。そこで私たちは患者さんのお宅へ訪問し、生活の移行支援をしています。年間の訪問リハビリテーションの件数は、2022年で延べ7,060件(延べ1,327人)と増えています。

  • リハビリテーションとは 写真1 嚥下造影検査
  • このほかにも、2021年4月からは嚥下造影検査を火曜日午前に開始しました(写真1)。リハビリテーション科の患者さんだけでなく、他の診療科からの嚥下機能評価の相談も増えています。また火曜日午前にはリハビリテーション科外来を開設し、脳卒中後遺症の痙縮治療(ボトックス注射)も行っています。火曜日午後には義肢装具外来を開設しています。当院では義肢装具等適合判定医の資格を有する医師が補装具処方をしています。
    外来診察担当表はこちら

リハビリテーション科医師紹介

①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格・公職等

  • 諸冨 伸夫(リハビリテーション科部長)

    ①心臓リハビリテーション ②昭和大学医学部 ③心臓リハビリテーション指導士/日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医・指導医/日本在宅医療連合学会認定専門医・指導医/義肢装具等適合判定医/身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由、音声機能・言語機能又はそしゃく機能の障害)/医学博士

  • 越川 尚男(リハビリテーション科医長)

    ①外科一般 ②千葉大学医学部 ③日本外科学会専門医/日本消化器病学会専門医/日本消化器外科学会認定医/医学博士

  • 北原 行雄(リハビリテーション科/脳神経外科医長)

    ①脳神経外科リハビリテーション ②国立弘前大学医学部 ③日本脳神経外科学会専門医・指導医/日本リハビリテーション医学会認定臨床医/医学博士

  • 【非常勤】吉田 健太郎

    ①リハビリテーション科一般 ②東京慈恵会医科大学医学部 ③アメリカ心臓協会BLSインストラクター/アメリカ心臓協会ACLSプロバイダー/JMECC(日本内科学会認定内科救急・ICLS講習会)プロバイダー/嚥下機能評 価研修会修了/ボトックス実技・手技セミナー修了/ゼオマイン実技・手技セミナー修了/福祉住環境コーディネーター検定試験1級/義肢装具等適合判定医


他科とも連携してチーム医療を行っています。

  • 川島 彰人(総合診療科部長)

    帝京大学医学部医学科卒業

  • 水越 元気(脳神経内科部長)

    日本医科大学医学部卒業

  • 別府 保男(整形外科/骨軟部腫瘍研究所所長)

    長崎大学医学部卒業