主な治療法|歯科口腔外科

主な治療法

親知らずの抜歯について

「日本人の親知らず」は顎骨内に埋まっている状態が多く、感染して痛みや腫れなどの症状に悩まされることがあります。「親知らず」は歯の一部が見える「半埋伏歯」の状態であることもあり、食後の歯磨き不良や体調の低下から細菌が侵入して炎症を起こします。「親知らず」が水平に埋まっている場合は、手前の歯を吸収したり、歯並びに悪影響を及ぼすこともあります。また、上あごの親知らずは、ほほに向いて斜めに生えたりすることがあり、ほほの粘膜や下の親知らず周囲の歯ぐきに傷をつけたりします。顎骨内に完全に埋まったままでいる場合は、のう胞(ふくろの病気)や腫瘍を発生させる場合もあることから、かかりつけ歯科の健診で上記の症状や異常を指摘された場合は、総合病院口腔外科を受診することを勧められます。

  • 下顎水平埋伏智歯の抜歯難易度の分類;Winter 分類

  • 「親知らず」は、下顎(下アゴ)の中を走行している神経に近接していることがあり、抜歯によって一時的に口腔内外の感覚に異常(しびれ)をきたすことが稀にあります(約0.5~1.5%の発生頻度)。当科では年間平均700本 の埋伏智歯の抜歯を行っていますが、他の偶発症についても術前に十分な説明をした上で、「親知らず」が神経と近接している場合にはCT検査を行って、歯と神経との位置関係について事前に正確な診断をした上で抜歯を行っています。そこで智歯抜歯は外来局所麻酔で可能な状態、入院全身麻酔が必要な状態などを判断します。水平埋伏智歯抜歯の難易度はWinter分類で判断します(図)。

口腔がんの治療について

口腔がんの発症率はがん全体の約1-2%とされています。口は直接目で確認できる場所であるにもかかわらず、早期発見・治療は困難な現状です。歯を磨く際に口の歯肉や舌粘膜を明るいライトで観る人はほとんどいないと言われています。また、口腔がんに対する知識がまだまだ十分でないことも伺えます。人は口で食事を噛んで(咀嚼)、飲み込みます(嚥下)。さらに言語を作る重要な機能でもあります。口は生命維持や社会生活を送る上で極めて重要な役割を果たしています。よって口腔がんは進行すると日常生活に大きな障害となります。

口腔がんの診断は視診、触診に加えてCT、MRI、PET-CT、超音波検査などの画像診断によって病気の広がりや転移(口腔がんでは特に首のリンパ節や肺への転移が多くみられます)の有無を診断します。さらに組織検査を行うことにより、がん以外の疾患との鑑別や悪性度について詳細に調べます。治療方法は病期(がんの進行度)によって決定します。他のがんと同様に、手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤 による治療)を組み合わせることにより、集学的な治療を行います。当科では、Stage 1、2のがんに対しては口腔機能を温存できる手術療法で治療します。それ以上では、とても大きな手術となります。進行がんでは、年齢、全身状態、転移の状態などを考慮した上で化学放射線治療などの選択もあります。治療は組み合わせで行います。

当院ではセカンドオピニオンを推奨しており、患者さんや家族が十分に 納得できる形で治療法を決定しています。

顎変形症の治療について

顎変形症とは、上アゴ(上顎骨)や下アゴ(下顎骨)の発育が良すぎたり、不良であったりが原因で歯列の咬み合わせが、「受け口」や「出っ歯」になることです。咀嚼不全、発音不良や不本意な表情などの症状があります。それによって悩みをかかえたりすることも少なくありません。

このような患者さんに対して当科では外科矯正手術(上下のアゴの骨をスライドさせて正常な咬み合わせにす手術を行っています。手術時期は身長発育が終了する17歳以降に行います。手術前に矯正専門医による歯列の準備が必要です。

治療開始には、歯列模型(歯型)やレントゲン資料を用いた顎変形症診断を行います。手術はすべての口の中だけで行いますので、顔の表面に傷はできません。術後は矯正歯科医による咬合の微調整を行います。全ての治療期間は個人差がありますが、2年程度となります。

上下のあごの骨折治療について

  • 左右非対称の噛み合わせ症例左下顎骨骨折:チタニウム製プレート固定

  • 転倒や交通事故などにより上下のアゴの骨折が発生することがあります。骨折すると噛み合わせがずれて咬合不全と成り咀嚼不可能となります。治療は受傷前のかみ合わせに戻すことを重視した機能回復治療となります。

    受傷当日は応急処置を行い、受傷後1週間以内をめどに手術計画を立てます。  顎骨骨折治療の大原則は「咬合(咬み合わせ)の回復」です。医療用ワイヤーで上下歯列を正常な咬み合わせに誘導し、口が開いたり、咬み合わせがずれないように固定します。骨折部位はチタニウム製プレートやスクリューで固定する方法が大半を占めます。最近では、再手術で摘出の必要がない吸収性プレートを用いる場合もあります。骨折部のズレがわずかな場合はと歯列の固定のみの場合もあります。手術を行うか否かは骨折部位、骨片の偏位などで決定されます。術後は、可能な限り早期の社会復帰をしていただけるような治療を心がけています。