2021年2月号 ドクターコラム

『骨盤臓器脱』
~あなたの骨盤は大丈夫ですか?~

産婦人科 医長 奥野 さつき

『骨盤臓器脱』をご存知ですか?

  • 骨盤臓器脱
  • 女性の骨盤内にある膀胱、子宮、腟、直腸は骨盤の底にある筋肉や靭帯によって支えられています。この支えが緩むと支えられていた臓器が徐々に本来の位置から下がってきます。そして膣から体外へ押し出されてしまった状態が『骨盤臓器脱』です。

脱出してくる臓器や部位によって、膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤とも呼ばれ、複数が同時に起こることもあります。また、子宮摘出後では膣脱と呼びます。

年齢を重ねたり、出産を繰り返したり、閉経によるホルモン変化が加わることにより、骨盤底を支える筋肉や靭帯が緩んでくることが主な原因です。肥満、慢性の便秘や咳、重い荷物を持つ仕事などもお腹に常に力がかかるためになりやすいことが知られています。

「何かが下がってくる感じ」、「挟まっている感じ」、「圧迫される感じ」といった違和感からはじまり、「尿が近い」、「残尿感がある」などの排尿時の症状、また「残便感がある」や「便がでにくい」といった排便時の症状、脱出部分がこすれたときの出血など、脱出部位や程度により症状は様々です。

症状が高度になると、「外出が億劫になった」「旅行やスポーツを楽しめなくなった」など、生活に制約がでてきてしまい、生活の質が下がってしまうことが問題となります。

欧米では出産経験のある女性の約4割に骨盤臓器脱が見られたとの報告があります。
骨盤臓器脱の症状に悩まれている方は多いのですが、「年齢のせいと諦めていた」「恥ずかしくて受診できなかった」「どこに相談したらよいのかわからなかった」など、なかなか受診につながらないのも実情です。『骨盤臓器脱』とその治療方法があるということを知っていただき、婦人科受診のきっかけとなればと思います。

骨盤臓器脱の治療

治療は、保存的治療手術療法に大きく分けられます。当院で行っている主な治療方法は以下になります。

<保存的治療>ペッサリー療法

腟内にペッサリーと呼ばれる器具を挿入します。サイズや形状はさまざまです。適合サイズがあり、正しい位置に挿入することができれば、脱出を抑えることができます。違和感が強い、滑脱を繰り返すなど不適合例もあります。長期留置により膣の炎症を起こす、膣が傷ついてしまうといったトラブルもあるため、定期的な入れ替えと診察を要します。

脱出が軽度な方や他の合併症などを理由に手術を受けられない方、手術の待機期間中の方などに使用は限定されます。

<手術療法>

従来、膣から子宮を摘出し、余分な腟壁を切除し、膣と膀胱を支えている筋膜、直腸と膣を支えている筋肉をそれぞれ補強する手術が広く行われてきました。もともと弛緩した筋膜や靭帯を補強してくるため、再発率が20~30%と高いことが欠点でした。

腹腔鏡手術を多く行っている当院では、現在腹腔鏡下仙骨腟固定術(Laparoscopic Sacrocolpopexy LSC)という手術を主に行っています。子宮頸部を残して子宮を摘出し、前後腟壁にメッシュを固定して、仙骨の靭帯に引き上げて固定するという手術です。メッシュという丈夫な人工物を使用して正常な位置に釣り上げてきますので、再発率が低いのが特徴です。

ここでは治療方法の一部を挙げていますが、年齢、脱出の程度、生活状態、他に治療中のご病気があるかどうかによって適切な治療方法が異なります。適切な治療を選択することによって生活の質の改善につながります。

悩まれている方、ぜひ一度婦人科にご相談ください。