2020年8月号 ドクターコラム

てんかんとは(第一回)

小児科 医長 田村 雅人

てんかんとは

  • てんかんとは
  • 脳の一部に過剰に興奮する細胞が存在し、それが時として脳の広い範囲に広がり、痙攣などの発作として現れる疾患です。脳の細胞それ自体が興奮する性質を持っているのです。よく誤解されがちですが、何か別の原因、例えば低血糖や脳出血などで脳の細胞が興奮する場合はてんかんではありません。

てんかんの診断

てんかんの診断で一番大切なのは、「てんかんらしさ」と考えています。「痙攣+脳波の異常=てんかん」とは限らないからです。通常、てんかんの診断は痙攣などの発作と脳波の異常で行います。それをご存知の方は「え?」と疑問に思われたかもしれません。

脳波異常は、何事もなく日常を過ごしている方の中にも一定の割合で認められることが分かっています。前述の<てんかんとは>でもお話した通り、子供ではてんかん以外の原因で痙攣することも少なくありません。低血糖や脳出血などの病的な原因もあれば、幼児期にしか起こらない、泣き入り引きつけなどのように病的とは言いきれない原因もあります。たまたま脳波異常をもつお子さんが、てんかん以外の原因で痙攣することもあるのです。

逆も然りです。脳波検査はおよそ30分前後の記録になりますが、脳波が正常であっても30分の検査の間に異常が出なかっただけかもしれません。

ここまで話すと、一体てんかんの診断はどうすればいいのか分からなくなってしまうかもしれません。私がてんかんを診断するのに大切にしているのは「てんかんらしさ」です。その「てんかんらしさ」を見極めるのに必要なのが問診です。発作を起こす前後、発作時の状況や様子を詳細に聞き取ります。問診票に書いていただいても、改めてしつこく聞くことがあります。てんかんらしさを見極めるためです。問診を検討した上で脳波も参考にします。痙攣の様子と脳波の異常が合わなければ、関係はないと判断します。また脳波の異常がなくても、発作の様子でてんかんっぽい印象があれば、30分の検査の間に異常が出なかっただけかもしれないと考え、てんかんの診断を下すこともあります。どちらかと言えば、私はてんかんの診断を下す方に慎重になります。てんかんの治療は年単位になりますが、診断を誤り、てんかんではない方がてんかんの薬を飲んでも、不要な治療を受けるばかりか、てんかんの治療に必要だからと信じ、薬の副作用を我慢し続けてしまうこともあるからです。

私のてんかん診療においては「てんかんらしさ」を見極めて、診断をしていきたいと考えています。