2019年8月号 ドクターコラム

感染対策室 神保 麻耶 / 志賀 光二郎

ヘルパンギーナとは

  • ヘルパンギーナとは
  • ヘルパンギーナは、1~5歳の乳幼児を中心に初夏から秋にかけて流行する、のどが痛くて熱が出る風邪、いわゆるウイルス性咽頭炎の一種です。「夏風邪」のひとつとしても数えられ、小さなお子さんと接する機会の多い方にとっては、たいへん身近な疾患です。多くの大人の方にとっても,子どもの頃に乗り越えてきた病気で、一般的には予後良好です。

一方で、乳幼児に多いため、のどの痛みや発熱のせいで水分がとれず、脱水になって重篤になったり、まれではあるものの髄膜炎や急性心膜炎に発展して重症化したり、免疫力の低下している大人に感染して重症化したりと、決してあなどれない病気でもあります。

臨床症状

  • 臨床症状
  • 感染経路は接触感染、飛沫感染です。2~4日の潜伏期間ののち、38~40度の高熱とのどの痛みで発症します。特徴はのどの奥に小さな水ぶくれができることです。水ぶくれが破れると潰瘍となりさらに痛みます。下痢を伴うこともあります。通常、発熱は1~3日程度で軽快し、1週間程度でのどの痛みも改善します。

水を飲むだけでも激しくのどが痛むので、水や食事を拒否する上に、発熱もあいまって、非常に脱水になりやすい状態です。ぐったりと活気がなくなってきたら、すぐに医療機関の受診が必要です。

原因は?

エンテロウイルスの一種であるコクサッキーA群によるものがほとんどです。しかしコクサッキーA群にもさまざまな型があり、またB群や他のエンテロウイルスが関連することもあります。一度かかったからといって二度とかからないわけではなく、繰り返し罹患する可能性があります。

治療法

原因ウイルスに対する特効薬はなく、対症療法になります。解熱剤で熱を下げて症状を軽減することは可能ですが、自分の免疫力でウイルスを追い出す必要があります。水分摂取による脱水予防が最も重要です。食事の形態も、おかゆや、やわらかくゆでたうどん、雑炊にするなど、のどへの刺激が少なく飲み込みやすいものに工夫する必要があります。

周囲への感染対策

感染力は急性期(発熱やのどの痛みが強い、発症して数日の期間)に最も高いですが、2~4週間にわたってウイルスが便から排出され続けるため、感染力が0ではありません。発症後1ヶ月程度は注意が必要です。手洗い、うがい、マスクの装着を徹底しましょう。便中にウイルスが排出されるため、おむつなどの排泄物の処理には、使い捨てのゴム手袋を利用するなどし、十分に気をつけましょう。食器やタオルを共有しないようにし、ウイルスへの直接的な暴露を避けましょう。

エンテロウイルスは、一般に消毒薬に強く抵抗を示します。アルコールなどでは不十分で、ノロウイルスの感染予防の際にも使用する次亜塩素酸ナトリウムを使用しましょう。

ヘルパンギーナは感染症法で5類感染症定点把握疾患に定められており、指定届出医療機関(全国約3,000カ所)から所轄保健所等を通じて国へ報告されています。学校保健法では出席に関する決まりはなく、症状改善後は登校可能ですが、学校医のお医者さんに相談するのが良いでしょう。