2019年7月号 ドクターコラム

漢方のはなし

内科 医長 松元 かおり

  • 漢方のはなし
  • 皆さんは漢方薬をのんだことがありますか。2012年のある調査では80%以上の医師が日常的に漢方薬を処方しているというデータがありました。多くの医師が病院で漢方薬を処方しているのです。

「漢方のイメージはいかがでしょうか。」と患者さんに伺うと「中国の薬?」「副作用がない?」「薬草?」「苦い?」「高価?」などいろいろな印象をお持ちですが、まず一つ言えることは、漢方は日本の伝統医学であるということです。

漢方薬とはどんな薬?

漢方の原型は紀元2世紀頃の中国で成立したと言われていますが、日本に本格的な漢方医学が根付いたのは16世紀以降です。室町時代に明の医学が伝わり、江戸時代に鎖国の影響もあって日本独自の発展をしたそうです。江戸後期に広まったオランダ医学「蘭方」に対して今まであった医術を「漢方」と呼びました。このように漢方は日本独自の伝統医学なのです。

では漢方で使われる、漢方薬とはどのような薬でしょうか。 漢方薬はいくつかの生薬(しょうやく)を決められた分量で組み合わせて作られた薬です。生薬は化学的に合成されたものではなく天然物そのもの、あるいは蒸したり、焼いたりといった簡単な加工をしたものをいい、イメージとしては草の根っこや茎、木の皮や実などです。それぞれの生薬が多くの有効成分を含んでいるので、いろいろな生薬を組み合わせた漢方薬は、ひとつの薬でもさまざまな作用を持ち、複数の病気や症状にも効果があります。例えば風邪薬として有名な葛根湯は、肩こり、じんま疹、乳腺炎などにも効果があります。葛根湯はくずの根っこやシナモン、ナツメや生姜などの7種類の生薬で構成されていて、それぞれの生薬の相互作用で効果を発揮します。このように漢方薬は生薬のハーモニーなのです。

漢方のはなし

これに対して、西洋薬は化学合成されたもので有効成分が単一です。菌を殺したり、熱や痛みをとる、血圧を下げるなど一つの症状や病気に対して強い効果があります。

このように漢方医学と西洋医学では使う薬も異なっており、それぞれ別の医学です。イメージとしては、西洋医学は病気の原因を調べてそれをピンポイントに治療し、漢方医学は症状から身体の不調和を見つけ全体を整えて治療します。どちらが良いかではなく、それぞれに得意、不得意分野がある、別の医学なのです。

漢方の得意分野

漢方の得意分野を、どんなときによく使われるかの例を挙げて説明しますと、疲れやすい、風邪を引きやすいなどの虚弱体質や冷え症やのぼせなどによく使われます。特に身体を温めて、冷えだけでなく痛みや様々な症状を治す薬があるのは漢方の特長のひとつです。そして色々な検査でも異常がないけれどつらい症状がある、という方は結構いらっしゃいますが、そんな時は症状に対して薬を使う、漢方の出番だと思います。 またストレスからくる様々な心と体の不調にもよく使われます。

漢方では「心と身体は一体である」という考え方があり、症状のある部分だけを治療するのではなく、心身全体の調和をはかることを目標としています。そして西洋医学の治療の副作用を和らげるためにも漢方薬が使われており、例えば抗がん剤治療の副作用にも用いられています。

漢方薬の効果と副作用

漢方薬は長く飲まないと効かないのでしょうか。これは薬の種類や症状によって大きな差があります。例えば、こむら返りに使う漢方薬は大抵、1回で効きます。また風邪のような急性の症状には1~2日で効くことが多いです。しかし漢方薬は慢性の症状に使われることも多く、その場合は長く飲んでいただくこともあります。大概は1~2ヶ月で効果が表れてくることが多いです。

また漢方薬には副作用がないのでしょうか。
漢方薬にも副作用はあります。一番多いのは胃もたれなどの胃の不調、二番目は発疹、痒みなど皮膚の症状です。頻度は低いですが、間質性肺炎や肝機能障害も起こりえます。

漢方にも西洋医学にも得意分野、不得意分野があります。どちらが良いかではなく、両方の得意分野を上手に活かした治療を受けることをお勧めします。特殊な薬以外は保険がききますので、漢方に興味がある方は、まず漢方外来で相談してみてください。