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2019年2月号 ドクターコラム

ビタミンDの効用

消化器内科 科長 /  予防医学センター 消化器内科部門 部長 袴田 拓

ビタミンDの効用

ビタミンDの効用

「ビタミンD不足は世界的問題である」とアメリカ国立衛生研究所(NIH)は指摘していますが、なかでも日本人のビタミンD濃度は極めて低いため厚生労働省は2018年12月ビタミンD摂取基準値の引き上げを発表しました。ビタミンDはカルシウムや骨の代謝に欠かせない栄養素として知られています。

戦後、昭和30年頃まではビタミンD不足でくる病の子供や骨軟化症の大人が多かったため、ビタミンD豊富なタラの肝臓を絞った肝油を子供に飲ませる習慣がありました。食生活が豊かになりくる病の子供も減りこのような習慣は消滅しましたが、現在も国民のビタミンD濃度は必ずしも十分ではなく潜在的ビタミンD欠乏状態の人が少なくないようです。

健康に対する様々な効用について

このビタミンDについて近年研究が進み、健康に対するより様々な効用があることが明らかになっています。まず、免疫力の向上やアレルギー症状を改善する作用です。ビタミンDには細菌やウイルスを殺す「カテリジン」というタンパク(抗菌ペプチド)を作らせる働きがあります。また「β-ディフェンシン」という抗菌ペプチドを皮膚上に作らせ、バリア機能を高めていることもわかっています。ビタミンDは食べ物から摂る以外に紫外線を浴びることで体内に合成されますので、紫外線が減少する冬場はビタミンDが減少し抗菌ペプチドも減少。風邪やインフルエンザにかかったりアトピー性皮膚炎が悪化しやすくなるのはそのためでもあるようです。

さらに冬場に多い問題は花粉症です。
近年、花粉症の発症要因のひとつに腸の関与が指摘されています。リーキーガット症候群といって、腸の粘膜細胞間の結合が緩んで隙間が大きくなるため未消化で分子が大きいままのタンパク質や糖、さらには口から入った花粉などが腸壁から漏れ出てやすやすと体内に侵入するため過剰なアレルギー反応を惹き起こすのです。ビタミンDはこの緩んだ腸粘膜の結合状態を改善し、適切な免疫抗体の産生を促すことで花粉症を根本的に改善してくれます。

また最近ビタミンDが心や神経のバランスを整える脳内物質セロトニンを調節することがわかり、うつなどのメンタル症状に効果的であることがわかってきました。例えば北欧諸国は自殺率が比較的高いとされていますが、日照時間の短さからくるビタミンD合成不足が一因ではないかとされています。日本でも「冬季うつ」といって日照時間の短い冬に抑うつ症状の患者が増加します。美白を気にして紫外線を極力避けている女性の方は多いですがせめて1日15分程度は日光を浴びるようにしたいものです。

ビタミンDが摂れる食材

ビタミンDが摂れる食材

ビタミンDが摂れる食材としては
①きくらげや干しシイタケなどのキノコ類
②内臓ごと食べられる魚類、ししゃもやしらす干し
などのほか、も推奨されます。
ビタミンDと健康に関する研究はさらに進んでおり、
・発達障害や統合失調症、認知症との関係
・子宮筋腫や月経困難症、不妊症との関係
・糖尿病や心血管系への影響
・大腸癌や前立腺癌、乳癌の予後
・血中ビタミンD低値群では、死亡率が1.26倍上昇

など極めて多岐に渡る分野で報告が集まり、ビタミンDは大変注目されている栄養素となってきました。
世界的摂取不足が懸念されている昨今ですのでサプリメントを用いた補充も一つの選択肢となるでしょう。ただし、ビタミンDは脂溶性ビタミンであるため過剰摂取もありえますのでサプリメント利用の際は詳しい知識を持った医師や薬剤師、栄養士との相談をお勧めします。



【参考文献】
Journal of Steroid Biochemistry & Molecular Biology (2005) 97:3-5
Science (2006) 311:1770-1773
British Journal of Cancer (2007) 97:446-451
Virology Journal (2008) 5:29
Archives of Internal Medicine (2008)11-168:1629-1637
Fertility and Sterility (2010) 94:1314-1319
溝口徹「花粉症は1週間で治る!」さくら舎、2018年