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2018年5月号

アルツハイマー型認知症

神経内科 矢﨑 俊二

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とアミロイドカスケード仮説

認知症の代表であるアルツハイマー型認知症は、病理学的に大脳に老人斑と神経原線維変化の2つを特徴とするアルツハイマー病によって大脳皮質、海馬などに神経細胞死、シナプス減少、アセチルコリン濃度低下などが起こり、認知症症状が発症したものです。
この疾患は、ドイツの精神科医のアロイス・アルツハイマーが、112年前の1906年に嫉妬妄想・記憶低下などを主訴とする51歳の女性の症例を発表したことに始まります。その後、アルツハイマー型認知症の病態研究は発展し、神経病理学的研究、生化学的研究によりアルツハイマー型認知症の認知機能低下の機序としてアセチルコリン系の障害(コリン仮説)やグルタミン酸神経毒仮説が生まれ、現在の抗認知症病薬(コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬)の開発に至っています。
さらに分子生物学的研究により、アミロイドカスケード仮説が定着しています。
脳組織に存在するアミロイド前駆体蛋白がセレクターゼという酵素によって切断・分解されてアミロイドβになり、その重合したアミロイド凝集が老人斑を作り、また脳組織に存在するタウ蛋白がリン酸化されてリン酸化タウとなり神経原線維変化を作る(タウ仮説)ことがわかってきました。

アルツハイマー型認知症の早期診断の進歩

現在は、アルツハイマー型認知症が発症する前に軽度の「もの忘れ」が出てくる
軽度認知障害(MCI)という時期(認知症予備軍)があり、MCIが発症する20~30年以上前から脳には老人斑と神経原線維変化が出現してくる、つまりアミロイドβやリン酸化タウが凝集・沈着してくることもわかっています。
そこで、アルツハイマー型認知症の診断には、MCIやさらにその前の時期からの早期検査が重要です。現在、アミロイドβに関する血液検査やタウの脳脊髄液検査が可能になりましたが、まだその結果がMCIやアルツハイマー型認知症の確定診断に結び付くまでには至っていません。
画像検査ではアミロイドPETやタウPETが開発されていますが同様であり、保険適応もありません。

アルツハイマー型認知症の治療薬開発の進歩

アルツハイマー型認知症の上記の治療薬は根治薬ではなく、MCIの治療薬はありません。
アミロイドカスケード仮説やタウ仮説から、本疾患の治療はMCI以前の脳のアミロイドβとタウの形成・凝集の予防、認知症発症後のアミロイドβとタウの分解・排出促進が本質的です。
現在多くの抗認知症病薬開発の中で、抗アミロイドβ抗体やセレクターゼ阻害薬などの数種類の新薬が治験の最終段階(第3相)にたどり着いています。
その中で最も期待されているのは、アデュカヌマブという新薬(アメリカのバイオジェン社)で、脳内アミロイドβ量を低下させる作用があり、2022年4月に試験が終了する見込みです。アルツハイマーがこの病気を発見してから112年が経ち、さらに4年後には人類最大の疾患の一つであるアルツハイマー型認知症が予防・治療できる可能性の時代を迎えようとしているのです。
この夢が実現することを切に願ってやみません。