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2018年1月号

新型タバコ

予防医学センター 袴田 拓

健康診断で診察する際、喫煙者の方には禁煙の意思の有無をお尋ねするようにしています。最近よく耳にする返答は「アイコスに変えましたので大丈夫です。」というものです。このアイコス(IQOS。以下アイコスと表記)という商品、世界的禁煙ブームに危機感を覚えた某たばこメーカーが新戦略として送り出した新型タバコのひとつですが、残念ながらその中身はそれなりの工夫こそ施してあるものの「大丈夫です」とはあまり言えない代物のようです。

新型タバコとは

そもそも新型タバコと言われるものは大きく分けて「電子タバコ」と「加熱式タバコ」の二つに分かれます。アイコスはその「加熱式タバコ」に該当しますが、深夜の某バラエティ番組で紹介されたのをきっかけに急速に広まったのが実情だそうです。シェアの点で他社のGlo(グロー)、Ploom™TECH(プルーム・テック)に大きく水をあけ、世界的に見ても日本におけるアイコスのシェアは95%といいますから大変な人気沸騰ぶりと言えます。

①健康への悪影響が少ない②臭い煙が出ないので周りに迷惑を掛けない、などが受けてる要因のようですが、実際のところどうなのでしょうか?

どこまでリスクが抑えられているのか

1 使用者自身のリスク

健康への影響について日本呼吸器学会は先ごろ新型タバコは「健康に悪影響がもたらされる」「受動吸引による健康被害が生じる」可能性があることを指摘し警鐘を鳴らしました。また日本禁煙学会「加熱式電子タバコは、普通のタバコと同様に危険です。受動喫煙で危害を与えることも同様で、認めるわけにはいきません」と緊急警告を発しています。いくつかの分析によれば加熱式タバコと従来の紙巻きタバコとを比べた結果、依存性の強いニコチンはほぼ同量含まれ、アクロレインニトロソアミンホルムアルデヒドといった発がん性を含んだ有害化合物も数分の1に減ってはいるものの間違いなく含有されていることが明らかとなっています。従来のタバコ1日1本程度の喫煙であっても、喫煙者には非喫煙者に比べ、有意に大きい発がんリスクがあると報告されている通り、例え数分の1レベルであっても発がん物質の影響は懸念されます。

新型タバコに変えて禁煙したつもりになってもニコチン依存からは一向に脱却できず、長きにわたり有害物質を取り込み続けることになります。加熱式タバコの人体に与える影響についての研究はまだ始まったばかりで、何がどれだけよくないかはまだ明らかにされていませんが、学会が非常に危惧していることは確かです。

2 周囲への影響

煙の周囲への影響についてはどうでしょうか。確かに加熱式タバコは煙がほとんど出ず副流煙は存在しませんが、代わりに目に見えないエアロゾル(霧、ミスト)が呼出されます。分析の結果、このエアロゾルにもニコチンニトロソアミンベンゾピレンホルムアルデヒドが含まれることが判っています。見える副流煙より見えないエアロゾルの方が不気味です。

禁煙の入り口

しかし紙巻きタバコから新型タバコに変えた方々の胸の内を考えてみると、タバコの有害性から逃れたい願望が垣間見え、おそらく禁煙の入り口に立っておられるのだと思われます。ぜひもう一歩踏み出し入り口の扉を開け、完全禁煙を目指していただけたらと願います。CMでもお馴染みの禁煙治療が病院の専門外来で受けられます。健康保険の適応もありますのでお金の負担は心配いらないでしょう。タバコ代が一番高くつくはずです。喫煙者の方々で禁煙に少しでも関心のある方はぜひ気軽にご検討いただければと考えます。

参考文献

高野義久ら:治療「禁煙up to date新型タバコなど禁煙対策の最新情報」99(11):2017
戸次ら(国立保健医療科学院)産業医大誌J UOEH.39(3):201-207,2017
Auer R et al:Heat-Not-Burn Tobacco Cigarettes:Smoke by Any Other Name.JAMA Intern Med,177(7):1050-1052,2017