医療コラム

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2017年5月号 

5月病について

精神科科長 戸部 有希子 

5月、美しい桜の花とともにそれぞれの新たな生活が始まり、怒涛のような1か月が過ぎました。みなさまは楽しいゴールデンウィークを過ごせましたでしょうか。旅行や趣味を楽しんだ方、のんびりご自宅で過ごされた方など様々におられると思います。休み中に十分体も心も休めて、気持ちを新たに頑張ろうと張り切っていらっしゃる方も多いことでしょう。しかし、もしかして、ゴールデンウィークで休んだはずなのに、なんだか体が重い、気分が憂鬱、食欲がない、前向きな気持ちになれず学校や仕事になんとなく行きたくない、という方はいませんでしょうか。4月に新生活を迎えた方が五月ごろ特にきっかけもなく心身の不調をきたすことを一般に五月病※と呼ばれるようです。
※正式病名ではありません。

五月病という言葉が出現したのは1960年代後半でした。高度成長期に、受験戦争が過熱するなか、厳しい受験を潜り抜けて超難関大学に入学した学生の一部が、5月にだんだん無気力となり学校に来なくなってしまうという現象から名付いたそうです。受験での燃えつき、新しい環境への失望が関連しており高度ストレス環境からの急激な解放による適応不全という点で、潜水病に喩えられたりしました。
近年では、五月病は学生だけではなく、新社会人でも見られるといわれています。新社会人は燃えつきというよりはむしろ、のんびりした学生生活から厳しい社会生活への変化にうまく適応できない場合や学生の五月病と同じく入社後に直面する理想と現実のギャップに打ちのめされることなどが関連していると思われます。
そんな五月病を吹き飛ばす 5つの秘訣をお教えします。

1、睡眠習慣を見直しましょう

精神科の外来に「朝起きられなくて、気力がでず、仕事でもミスばかりしてしまう」とご相談に来られる方がいます。
一見、「うつ病かな?」と間違えてしまいそうです。しかし話を聞くうちに、その方はクリエイターという仕事柄、昼過ぎに出勤し、朝まで仕事をして、3時間ほど寝てまた出勤するという生活をされているということが判明しました。
よほどの生まれつきの体質の方でない限り3時間睡眠では睡眠不足と
なります。睡眠不足は体の不調や注意力・集中力の低下、気分の落ち込みや苛立ち、高ぶりといった様々な心身の異常を生じます。また、太陽のリズムに逆らって昼夜逆転の生活をすることにより 自律神経の不調をきたすこともあります。
健康のためには、 朝型の生活で6~7時間の睡眠をとることを心掛けましょう。朝、起きづらい、日中極端に眠くなる、休みの日に普段より長時間眠るという方は睡眠不足の可能性があります。また、深酒をしてうっかり明かりをつけたままソファで眠ってしまう、なんてこともないように気を付けましょう。

2、食生活を見直そう

飲み会続きで暴飲暴食を繰り返したり、ファストフードばかりの生活にはなっていませんか。胃腸の調子が悪くなって、体調が悪くなれば、気分も前向きになれません。
バランスのとれた適量の食事を心がけましょう。ちなみに、炭水化物の取りすぎは、気分の落ち込みや集中力低下をきたす可能性があります。特に午後の眠気だるさ対策としては、昼食の糖質を控えてみてはいかがでしょうか。

3、アルコールの飲み過ぎに注意

歓送迎会などの飲み会も増えることでしょう。確かにお酒を飲むと一時的な高揚感が味わえますが、深酒をした翌朝はきまって憂鬱な気分になるということはありませんか。過度なアルコールの常用はうつ病やアルコール依存症、認知症の原因となることが知られています。 お酒の飲み過ぎにはくれぐれも気をつけましょう。

4、適度なストレス発散

新しい環境で体験するストレスは、新入生や新入社員が成長するために必要な「肥料」のようなものです。しかし、過度な肥料を与えすぎると植物が枯れてしまうように、ストレスをためすぎると、心身の不調をきたしてしまいます。ストレス発散のために趣味に打ち込むことや友人と過ごす時間を楽しむのもよいでしょう。スポーツで汗を流す、カラオケなどで大きな声を出して歌うことも効果的です。
また、 ストレスが溜まりにくい考え方を身に着けることも効果があります。たとえば 「~すべき」や「~でなければならない」などの極端な思考は避けたほうが良いでしょう。 適度なストレスを乗り越えた先に成長があるのです。 自分ひとりで抱え込まず同僚や友人、家族の力も借りながら、ゆっくりとストレスを自らの力に変えていきましょう

5、自分を褒める

自己肯定感自己重要感は人間の根の部分を支える重要な感覚です。しかし新しい環境では、何かとうまくいかないことが多かったり、叱られることが多くなったりして自信を失いがちです。また、それまで自信をもって行えていたことも、新しい環境ではやり方の変更を要求されるなどして、それまでに築いてきたもの総てを覆されてしまうような気持ちになるかもしれません。
しかし、だからと言って、自信を失う必要はないのです。誰しも初めてのことをうまくできるはずがありません。たとえ1回目がうまくいかなったとしても、2回目3回目と工夫しながら回数を重ねるうちに段々と出来るようになってくるはずです。1年上の先輩と同じようにできるようになるのに、1年かけてよいのです。焦って自分を責める前に、 頑張っている自分をほめてあげましょう。ただ、理想を言えば周りの人がこの時期に積極的に本人を認めるような言葉をかけてあげてほしいところです。

いかがでしょうか。これらを意識しながら日々の生活を続けていれば、多くの人は1~2か月もすれば環境になれ、新しい目標が出来て五月病なんて忘れてしまうでしょう。
しかし、やろうと思っても自分の力ではうまくできない、ますます元気がなくなっていく、という場合は精神科(心療内科)を受診してみてもよいと思います。