広報紙 vol.99しんゆりニュースレター

掲載日:2026-9-1

心臓血管外科特集

心臓血管外科特集|広報紙

患者さんに寄り添い、地域に頼られる医療を実践する

  • 新百合ヶ丘総合病院
    心臓血管外科 部長

    たきなみ がく

    滝浪 学 医師
  • 【プロフィール】
    2012年北里大学医学部医学科卒業。14年昭和大学江東豊洲病院心臓血管外科助教。18年岩手医科大学心臓血管外科助教。24年総合南東北病院心臓血管外科医長。26年4月より現職。
    心臓血管外科専門医・修練指導医/日本脈管学会専門医/日本外科学会外科専門医/アジア心臓血管胸部外科学会国際会員/胸部・腹部ステントグラフト指導医/浅大腿動脈ステントグラフト実施医/下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医/医師臨床研修指導医・プログラム責任者/日本脈管学会評議員/日本血管内治療学会評議員
  • 2026年4月より縁あって、当院の心臓血管外科部長を拝命し、福島県にある総合南東北病院本院より着任いたしました。初期研修から本院で育ち、心臓血管外科医として大学病院やハイボリュームセンター、本院での研鑽を経て、現在に至ります。当時現役であった、渡邉一夫 南東北グループ総長から直接指南された、「全ては患者さんのために」、「鬼手仏心」の姿勢で日々の診療を行っております。

    心臓血管外科では主に心臓や大血管の手術治療を行っております。侵襲が大きく、生きるか死ぬかの手術であるというイメージが強いと思いますが、時代の変遷とともに開心術は安全で標準的に治療が可能になりました。血管領域ではステントグラフトなどのカテーテル治療とのハイブリッド治療を行うことで、治療戦略の選択肢が広がり、手術成績は格段に向上しました。心臓血管外科手術は我々以外にも各内科、麻酔科、集中治療科、口腔外科、看護師、臨床工学技士、理学療法士、ソーシャルワーカー、医療事務など様々な職種との協力が必要になり、当院には各部門に優秀な人材が揃っているため、盤石であります。

  • さらに循環器内科や血管外科をはじめとする関連診療科と密接に連携し、カテーテル治療や薬物治療を考慮し、手術が必要な時期や状態を見極めて、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供しています。手術になる場合には、外来診療の段階から十分な説明を行い、患者さんとご家族に納得していただいたうえで治療を進めてまいります。

    また退院後のアフターケアは重要と考え、救急救命センター、リハビリテーション科と協力し、治療を受けた後の患者さんが困らないフォロー体制をとっています。
    「断らない医療」「垣根のない医療」を理念とし、緊急症例や治療方針にお悩みの患者さんについても、積極的にご相談を受けてまいります。紹介状をお持ちでない患者さんからのご相談にも柔軟に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

【目次】

一般的な疾患の病態と手術治療方法

心臓血管外科で治療対象となる疾患には、次のようなものがあります。

心臓疾患

虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、心臓弁膜症、成人先天性心疾患、心臓腫瘍、その他(不整脈手術、左心耳閉鎖など)
→心臓構造が変化すると、心臓自体の機能が低下し、息切れや浮腫(むくみ)、動悸症状が出現します。
治療には薬物療法、カテーテル治療、手術療法があり、正確な診断をした上で治療することが重要です。

血管疾患

胸部大動脈瘤、急性大動脈解離、腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、静脈疾患、その他
→心臓から送り出された動脈が高血圧や動脈硬化により瘤化し、進行した場合、破裂したり、血管が裂け、激痛 と共に突然死に至る場合があります。閉塞性疾患では、下肢虚血症状を伴います。治療には薬物療法、カテーテル治療、手術療法があり、当院では主に血管外科と連携し、治療を行っています。

狭心症や心筋梗塞に対するCABG治療
僧帽弁閉鎖不全症に対する形成術(MVP)
心房細動に対するMAZE手術
胸部大動脈瘤に対する大動脈基部置換
胸部大動脈瘤に対する全弓部置換

症例提示 72歳 女性

〈 手術までの経緯 〉

呼吸困難で救急搬送され、心不全治療のため緊急入院となりました。重症大動脈弁狭窄症、冠動脈有意狭窄の診断で紹介となりました。

問題点として、上行大動脈から大腿動脈周辺まで広範囲に動脈硬化(CT写真の白い部分)を認めました。脳梗塞後で左半身麻痺があり、虚弱で日常生活動作(ADL)が低い方でした。

CT画像と手術図

〈 手術と術後経過 〉

推奨年齢や広範囲な動脈硬化で、大動脈弁カテーテル治療(TAVI)は困難であること、冠動脈ステント留置(PCI)しにくい病変であったことから、当科で大動脈弁置換術(AVR)+冠動脈バイパス術(CABG)+左心耳切除を施行しました。

術後経過は良好で、約2週間後に元気に自宅退院されました。

〈 手術工夫 〉

通常、上行大動脈送血を行い、上行大動脈遮断をしてAVR+CABGを行いますが、動脈硬化範囲が広く、腋窩動脈から送血を行いました。心原性脳梗塞予防に左心耳切除術も行いました。

最近のトピックス

低侵襲心臓外科手術 (MICS)

低侵襲心臓外科手術

これまで、開心術は胸骨正中切開でのみ行われてきましたが、限られた症例に右肋間開胸での小切開手術が可能になりました。

MICSの方が術野が限られるため、手術の難易度が高ければ、出血量が増えたり手術時間がかかり、低侵襲手術とはいえない場合もございます。年齢や手術内容、患者さんの体型、既往や状態によって、検討すべきとされています。

胸腔鏡下左心耳閉鎖術

腹腔鏡下左心耳閉鎖術

不整脈(心房細動)になった方は、通常の5倍脳梗塞のリスクが高く、90%は左心耳内血栓によるものとされています。

『不整脈非薬物治療ガイドライン2018』において、脳梗塞予防のための左心耳閉鎖術がclass IIaの推奨となり、2022年より小開胸で行う胸腔鏡下左心耳閉鎖術が新たに保険適応となりました。

適応症例

  1. 出血合併症リスクが高いなどの抗凝固療法が困難な場合
  2. 塞栓症を繰り返す心房細動症例
  3. カテーテルでの抗不整脈治療の不成功例

心臓血管外科 医師紹介

心臓血管外科

①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格・公職等
  1. 滝浪 学 (心臓血管外科部長)
    ①成人心臓血管外科治療、低侵襲大血管治療 ②北里大学医学部 ③心臓血管外科専門医・修練指導医/日本脈管学会専門医/日本外科学会外科専門医/アジア心臓血管胸部外科学会国際会員/胸部・腹部ステントグラフト指導医/浅大腿動脈ステントグラフト実施医/下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医/医師臨床研修指導医・プログラム責任者/日本脈管学会評議員/日本血管内治療学会評議員
  2. 堀田 明敬(心臓血管外科医長)
    ①心臓血管外科全般 ②福島県立医科大学医学部 ③腹部ステントグラフト指導医/胸部ステントグラフト実施医/下肢静脈瘤血管内治療実施医/日本外科学会外科専門医
  3. 【非常勤医師】緑川 博文
  4. 【非常勤医師】髙野 隆志