広報紙 vol.96しんゆりニュースレター

掲載日:2026-6-1

腎臓内科・透析内科特集

腎臓内科・透析内科特集|広報紙

腎臓のみならず全身を診る

  • 新百合ヶ丘総合病院
    腎臓内科・透析内科 科長

    はまの なおと

    濱野 直人 医師
  • 【プロフィール】
    九州大学医学部医学科卒業。国立国際医療センター初期研修医。国立国際医療研究センター病院後期研修医。福岡赤十字病院、東海大学腎・代謝内科、小田原市立病院を経て、2024年より現職。
    日本内科学会総合内科専門医/日本腎臓学会腎臓専門医・指導医/日本透析医学会透析専門医・指導医/日本腎臓リハビリテーション学会代議員/臨床研修指導医/日本内科学会認定医/医学博士
  • 腎臓内科がもっとも大切にしている診療のテーマは、「幅広い腎機能の患者さんの全身を診る」ことです。腎臓は、背中側に2つある握りこぶし大の小さな臓器ですが、体の中の老廃物や余分な塩分や水分を尿として外に出すだけでなく、血圧の調整、血液を作るホルモンの分泌、骨を丈夫に保つ働きなど、全身のバランスを整える重要な役割を果たします。この腎臓の働きが低下した状態を慢性腎臓病(CKD)と呼び、腎機能が低下すると腎臓そのものだけでなく、心臓や血管、さらには筋肉や骨など、全身にさまざまな影響が現れます。

    私たちは、単に腎機能の数値だけを見る診療は行いません。初期の腎機能低下から、透析や腎移植などの腎代替療法が必要な状態に至るまで、あらゆるステージの患者さんを受け入れ、一人ひとりの全身の状態と生活背景を丁寧に把握することを基本としています。

    当科の診療には、大きく分けて3つの柱があります。第一は「腎臓を守り、進行を防ぐ治療」です。 健康診断などで尿たんぱくや腎機能異常を指摘された早期の段階から、原因を正確に診断し、最新の知識に基づいたお薬の調整や生活指導を行い、腎臓が悪化しないようサポートします。

  • 第二は「チーム医療(多職種連携)による生活の支援」です。医師だけでなく、看護師、管理栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカー、リハビリ職などのスタッフがチームを組み、食事や生活上の悩み、お薬の不安などをまとめて解決できる体制が整っているのも当院の強みです。合併症がある場合には他の専門科と適切に連携をとりながら解決を目指します。

    第三は「ライフスタイルに合わせた腎代替療法の提供」です。もし腎臓の働きが極度に低下してしまった場合でも、血液透析、腹膜透析、腎移植など、患者さんの希望や生活スタイルに最も合った治療法を相談しながら決めていきます。さらに当科では透析手段(バスキュラーアクセスや腹膜透析カテーテルなど)のトラブル全てに対応可能な体制を整えています。

    また私たちは地域のクリニック(かかりつけ医)の先生方との連携を非常に重要視しています。普段の体調管理は通い慣れた地域の先生にお願いし、専門的な検査や治療が必要なときには当院がしっかりと対応する「二人主治医」の体制で、患者さんを地域全体で途切れなく守ります。

    私たちは「腎臓という木を診ながら、患者さんという森(全身・人生)を診る」医療を実践してまいります。少しでもご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

【目次】

腎臓を保護する包括的治療
チームで支える「土台」と「最新の薬」

腎機能は一度低下すると元に戻すことが難しいため、腎臓を長持ちさせ、透析を遠ざけることが治療の最大の目標となります。その目標を達成するため、当科では「日々の生活の土台づくり」と「最新のお薬」を組み合わせた包括的な治療(図1)を行っています。

  • 腎臓を保護する包括的治療イメージ
    図1
  • 腎機能は一度低下すると元に戻すことが難しいため、腎臓を長持ちさせ、透析を遠ざけることが治療の最大の目標となります。その目標を達成するため、当科では「日々の生活の土台づくり」と「最新のお薬」を組み合わせた包括的な治療(図1)を行っています。

  • 腎臓を保護する包括的治療イメージ
    図2
  • まず不可欠なのが、食事や運動といった生活習慣の土台づくりです。腎臓病の治療は病院に来る日だけでなく、毎日の生活そのものが治療に結びついています。当科では医師だけでなく、多職種で構成された専門チームを組み(図2)、切れ目のないサポートを提供できるように2024年に慢性腎臓病透析予防外来を立ち上げました。看護師が生活背景を考慮した注意点などをご説明します。

塩分制限はCKD治療において最重要項目ですが、無理のない美味しい食事の工夫やコツを管理栄養士と相談していきます。薬剤師も交えて、安全なお薬の飲み方について一緒に確認します。腎臓リハビリは腎機能低下を防いでくれる可能性が示唆されていることから、リハビリ職の存在も不可欠です。実際に、このようにさまざまな専門スタッフがチームでサポートすることで、腎臓を守るだけでなく、患者さんがより長く元気に過ごせることも分かっています。これら総合的な土台が腎臓を守ることにつながります。

そして、この土台の上に立つのが、ここ5年ほどの間に次々と登場した「腎臓を保護するお薬」です。かつては血圧を下げるお薬が中心でしたが、現在では「4つの柱」と呼ばれる複数のお薬を患者さんの状態に合わせて組み合わせることで、腎臓の機能低下を抑えられることが示されています。さらに糸球体腎炎やネフローゼ症候群といった疾患に対する治療薬も、近年大きな進歩を遂げています。

専門チームがサポートする「生活習慣改善の土台」と、最新の知識に基づいた「お薬」。この両輪を回すことで、私たちは患者さんの腎臓と全身の健康をサポートします。

ライフスタイルに合わせた腎代替療法
ご自身の生活を第一に

もし、腎臓の働きが低下して体内の老廃物や水分を自力で外に出せなくなった場合には、腎臓の働きを代わりに行う治療(腎代替療法)が必要になります。腎代替療法には「腹膜透析」「血液透析」「腎移植」の3つの方法があり、当院は2種類の透析に対応しており、腎移植をご希望の際には専門の病院と連携しています。

なかでも、当科が特に力を入れている治療法が「腹膜透析(PD)」です。腹膜透析は、お腹に入れた細い管(カテーテル)を通じて透析液をお腹の中に入れ、ご自身の体にある腹膜を使って、血中の老廃物を透析液へ移して体の外に出す治療です。自宅や職場で行う透析方法であり、「おうち透析」という言葉をテレビCMなどで耳にしたことがあるかもしれません。血液透析のように毎回太い針を刺す苦痛がなく、通院回数も月に1回程度で済むため、お仕事を続けたり、ご旅行に行かれたりと、これまでの生活のペースを維持しやすいのが最大の魅力です。また、野菜や果物などの食事制限が血液透析よりも緩和されることや、ご自身の腎臓の働き(尿を出す力)を長期間保ちやすいという、医学的にも優れた点があります。もちろん、当科では血液透析が必要な方にも安全な治療環境を提供しています。

  • チームカンファレンスの様子
    (写真1)チームカンファレンスの様子
  • 透析は導入すれば終わりというものではなく、その後の生活を大きく左右する長期間にわたる治療です。そのため当科では、透析開始後も適切な管理ができているか、よりよい医療を提供できないかを検討するために、スタッフみんなで相談する場を設けています(写真1)。「あなたらしい生活」を守ることをチーム全員で第一に考え、最適な治療法を提供していきます。

健診での早期発見と、地域の医療機関との連携

  • 健診結果のイメージ
  • 腎臓病は初期には自覚症状がほとんどないため、病気に気づく大切なきっかけは「健康診断」です。「尿たんぱく」や「尿潜血」といった検尿の異常に加え、血液検査でわかる「クレアチニン」や、そこから計算される「eGFR(腎臓の点数のような指標)」といった数値の悪化は、腎臓からの大切なサインです。今後は職場の定期健診において、40歳以上であれば血清クレアチニンの検査が追加される見込みであり、ご自身の腎臓の働きを早い段階から数字で確認できる機会が増えていきます。健診で検尿異常や、クレアチニン・eGFRなどの数値の異常を指摘された場合は、精密検査が必要です。自己判断で様子を見続けずに、まずは一度当科受診をご検討ください。

  • 医療連携のイメージ
  • また、治療にあたっては、大きな病院だけで完結させるのではなく、お住まいの地域にあるクリニック(かかりつけ医)の先生方と協力する「二人主治医制」を実践しています。例えば、日々の血圧の管理や風邪などの体調不良については、普段の様子をよく知るかかりつけ医の先生に診ていただきます。そして、専門的な精密検査やお薬の調整が必要なタイミングでは当科がしっかりと引き継ぎます。

    当科での治療方針が定まり状態が安定すれば、再びかかりつけ医の先生の下での通院に戻っていただくことも可能です。もちろん、その後も定期的に当科で詳しいチェックを行い、万が一進行が見られた場合にはすぐに対応できる体制を整えています。

【近隣医療機関の先生方へ】

近年、糸球体腎炎やネフローゼ症候群の新薬開発が急速に進み、患者さんに適切な治療を届けるためにも腎病理診断の重要性が増しており、当科でも腎生検の適応を判断し、速やかに施行できるよう体制を整えております。一方で現在、日本のCKD患者数は成人の5人に1人に上るとされており、腎臓内科医のみで全ての患者さんの診療を長期継続することは困難な状況にあります。だからこそ、地域の先生方との「二人主治医制」が不可欠です。当科では、腎生検の必要性の判断、病理診断から、最新の薬物療法、透析の導入、全身合併症の管理まで包括的に対応いたします。

腎臓内科・透析内科 医師紹介

腎臓内科・透析内科

①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格・公職等
  1. 篠﨑 倫哉 (血液浄化療法センター長/腎臓内科・透析内科統括部長)
    ①腎臓疾患全般、ブラッドアクセス・腹膜アクセス手術、透析療法(腹膜透析・血液透析)を含めた血液浄化療法 ②九州大学医学部 ③日本透析医学会専門医/日本腎臓学会認定腎臓専門医・指導医/日本内科学会認定医/日本内科学会総合内科専門医
  2. 松井 勝臣(腎臓内科・透析内科部長)
    ①腎臓内科学全般、透析療法全般、腹膜透析関連の手術ならびにバスキュラアクセス作成・管理 ②聖マリアンナ医科大学医学部 ③日本内科学会総合内科専門医・指導医/日本透析医学会専門医・指導医/日本腎臓学会認定腎臓専門医・指導医/腎代替療法専門指導士/日本臨床腎移植学会認定医/日本移植学会認定医/日本腹膜透析医学会認定医/VA血管内治療認定医/医学博士
  3. 濱野 直人(腎臓内科・透析内科科長)
    ①腎臓疾患全般、慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常、腎病理診断、透析療法(腹膜透析・血液透析)を含めた血液浄化療法 ②九州大学医学部 ③日本内科学会総合内科専門医/日本腎臓学会腎臓専門医・指導医/日本透析医学会透析専門医・指導医/日本腎臓リハビリテーション学会代議員/臨床研修指導医/日本内科学会認定医/医学博士
  4. 稲永 亮平(腎臓内科・透析内科医長)
    ①腎臓内科、透析内科全般 ②杏林大学医学部 ③日本内科学会認定内科医/日本腎臓学会認定腎臓専門医・指導医/日本透析医学会専門医/日本内科学会総合内科専門医・指導医/インフェクションコントロールドクター(ICD)/日本化学療法学会抗菌化学療法認定医/医学博士
  5. 田邊 淳(腎臓内科・透析内科医長)
    ①腎臓内科全般、透析療法全般、腎炎、ネフローゼ全般、腎病理 ②聖マリアンナ医科大学医学部 ③日本腎臓学会腎臓内科専門医/日本内科学会認定内科医/日本透析医学会専門医/医学博士
  6. 村木 直弘(腎臓内科・透析内科医長)
    ①腎臓内科・透析内科全般 ②信州大学医学部 ③日本専門医機構認定内科専門医/日本透析医学会専門医/日本腎臓学会認定腎臓専門医/日本腹膜透析医学会認定医
  7. 島田 剛(腎臓内科・透析内科医員)
    ①腎臓領域全般 ②新潟大学医学部 ③なし