広報紙 vol.95しんゆりニュースレター
掲載日:2026-5-1

リハビリテーション科特集|広報紙
医療のゴールを守る、リハビリテーション科
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新百合ヶ丘総合病院
リハビリテーション科 部長もろとみ のぶお
諸冨 伸夫 医師 -
【プロフィール】
2000年昭和大学医学部卒業。07年昭和大学病院リハビリテーション医学診療科助教。09年榊原記念病院循環器内科医員。13年榊原記念病院循環器内科医長。15年ゆみのハートクリニック在宅診療部。17年昭和大学藤が丘リハビリテーション病院講師。21年より現職。
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リハビリテーション科は内科や外科などと同じ基本診療領域19科目の1つで、独立した診療科です。専門医を単独で取得し、診療科として標榜することができます。
専門医数は全国で3,098人(2025年現在)とまだ少なく、高齢化の進む本邦では最も必要とされている診療科の1つです。内科や外科などが疾患特異的に診療を行うのに対して、私たちリハビリテーション科は「障害」や「生活」を診る診療科です。その対象は脳血管疾患(脳卒中など)、運動器疾患(骨折など)、脊髄損傷、神経筋疾患(神経難病など)、切断、小児疾患、リウマチ性疾患、内部障害(呼吸器疾患、循環器疾患、腎疾患など)、がん疾患などと実に多岐にわたります。治療は理学療法、作業療法、言語聴覚療法にとどまらず、物理療法(温熱療法、電気刺激療法、磁気刺激療法、超音波療法など)、義肢装具療法、薬物療法、外科的療法、栄養療法など多様です。
さらに近年ではリハビリテーション工学やIT分野の進歩により、ロボット治療や遠隔リハビリテーション治療なども行われようになりました。当院でも最新のリハビリテーション機器を複数導入しています。
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当院では2026年4月より、リハビリテーション科専門医を新たに2名増員しました。全国的に専門医が不足する中でも、当院ではより高度で専門性の高いリハビリテーション医療を安定して提供できる体制を整えています。
当院の特徴の1つとして、外傷再建センターと連携し、複雑な外傷症例に対しても術後早期から回復期まで、切れ目のないリハビリテーション治療を行っています。また、循環器内科と連携し回復期リハビリテーション病棟において、入院下での集中的な心臓リハビリテーションを実施しています。その後は外来心臓リハビリテーションへとつなぎ、心疾患の再発予防にも取り組んでいます。
地域の皆様が病気やけがをされた際にも、安心して生活を再開していただけるよう、リハビリテーション診療を真摯に提供してまいります。
地域の医療機関とも連携しながら、継続的なリハビリテーション医療の提供に努めてまいります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
医療のゴールを守る、リハビリテーション科
医療というと、手術や救命救急のような「命を救う場面」が注目されがちです。確かにそれらは医療の入口を守る大切な役割です。しかし、命が助かったあと、その人はどんな生活を送るのでしょうか。そこで重要になるのがリハビリテーションです。
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リハビリテーション科は、病気やけがのあとに、もう一度「その人らしい生活」を送れるかどうかを大きく左右する存在です。歩けるようになること、食事ができること、仕事や家庭に戻ること―その一つ一つを守り、支えています。もしここで十分な支えがなければ、助かった命も生活の質を大きく損なってしまいます。リハビリテーションとは「もとに戻すための努力」や、ましてや「障害を克服するための訓練」ではありません。それは障害を抱えた患者さん本人やご家族が、これからの新たな人生を「再スタートするための準備」の総和なのです。最後まで、患者さんの生活というゴールを守る存在、それがリハビリテーション科です。
リハビリテーションにおけるチーム医療
リハビリテーション科が医療のゴールキーパーとして役割を果たすためには、チーム医療が欠かせません。当院当科のチームには理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、医師、歯科医師、義肢装具士、社会福祉士、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、臨床検査技師、放射線技師そして看護アシスタントなど、数多くのスタッフが関わっています。そして私たちは、患者さんやご家族もその一員と捉えています。
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スタッフはそれぞれの専門性を活かしつつ互いに協力をして、身体動作、日常生活動作、食事、コミュニケーション、退院後の生活環境にいたるまで総合的に支えます。そしてそれを退院後の生活のなかで実践していくのが、患者さん本人とご家族になります。誰か一人が欠けても、ゴールを守ることはできません。
また、リハビリテーションは病院の中だけで完結しません。介護保険サービスや行政福祉のスタッフに加えて、ご友人などの地域住民や職場の方々のサポートを得て、退院後の生活の先まで見据えた支援が可能になります。患者さんやご家族が主体的にご自分の生活を再開して紡いでいく―そのゴールを守り、支えていくこと全体がリハビリテーションなのです。そしてその実現のために多職種によるチームメンバーが綿密に連携し、情報を共有し、同じ方向を向いてできることを一つ一つ積み重ねていくことが重要だと考えています。
リハビリテーション機器の紹介
1.バイタルスティム
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バイタルスティム(インターリハ社)は、嚥下障害患者に対する神経筋電気刺激療法を行う治療機器です。近年、嚥下障害に対する電気刺激療法は、その有効性を示すエビデンスが数多く報告されています。当院では急性期から回復期リハビリテーションに至るまで、患者さんの状態に応じて本機器を積極的に活用しています。また、筋活動を可視化するバイオフィードバックを併用することで、患者さん自身が回復過程を実感しやすくなり、リハビリテーションへの意欲向上にもつなげています。
2.キューブスキャン
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キューブスキャンBioCon-900は、3D測定が可能な膀胱内尿量測定機器です。急性期医療では排泄機能障害により尿道カテーテルを留置することがありますが、回復期リハビリテーション病棟では、カテーテルを抜去しトイレでの排泄再獲得を目指していきます。この過程で膀胱内に尿が残っていると、膀胱炎や腎盂腎炎を引き起こすリスクがあります。当院ではキューブスキャンを用いて膀胱内残尿量を客観的に評価しながら、安全に膀胱リハビリテーションを行っています。
3.ストレングスエルゴ
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ストレングスエルゴ8 V2は、心肺運動負荷試験に用いるエルゴメータです。本機器は、従来のエルゴメータと異なり、無駄な負荷変動を抑えながら、指定した負荷までスムーズに調整することが可能です。また−50Wのような低負荷領域から60Wの高負荷まで正確な負荷を安定して維持できるため、心機能が低下した患者さんに対しても安全かつ精密な評価が行えます。これにより心臓リハビリテーションにおいて、患者さん一人ひとりの状態に即した、より適確な運動処方を実施できています。
当院でのリハビリテーション診療
当院は総合病院であり急性期、回復期から生活期まですべての時期においてリハビリテーションを提供しています。スタッフは総勢130名(理学療法士90名、作業療法士29名、言語聴覚士11名)で患者のリハビリテーション治療にあたっています。
急性期リハビリテーション
急性期では、合併症の予防と早期回復を目的として、入院直後からリハビリテーションを開始しています。当院では診療科を問わず主治医からリハビリテーションの依頼があり、年間の依頼総件数は124,314件(2025年)にのぼります。その中で、集中的なリハビリテーション治療が必要で適応のある方は、回復期リハビリテーション病棟へ移り継続してリハビリテーション医療を受けていただいています。
回復期リハビリテーション
当院では、回復期リハビリテーション病棟入院料1を算定しています。これは、国が定める厳しい施設基準を満たした医療機関にのみ認められるものです。その体制のもと、質の高いリハビリテーション診療を提供しています。
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回復期リハビリテーション病棟 -
回復期リハビリテーション病棟疾患別割合
当院の回復期リハビリテーション病棟では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に加え、医療ソーシャルワーカーを配置しています。さらに、当院の特徴として病棟専属の管理栄養士や薬剤師がチームに加わり、栄養管理や薬物療法の面からも患者さんの回復を支えています。また、歯科医師・歯科衛生士による口腔ケアも実施しており、食べる力から全身状態の維持・向上につなげています。このように多職種が密に連携することで、より高度で専門的なリハビリテーション診療を実践しています。
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リハビリテーション病棟における実績指数(2025年) -
リハビリテーション病棟 在宅復帰率(2025年)
生活期リハビリテーション
退院された患者さんに対しては、訪問による生活期リハビリテーションを行っています。退院直後は生活環境や生活様式が大きく変わるため、転倒などの事故や病状の悪化が起こりやすい時期です。
そこで私たちは、患者さんのご自宅を訪問し、実際の生活の場に即したリハビリテーションを行うとともに、安心して日常生活へ移行できるよう支援しています。年間の訪問リハビリテーション実施件数は、延べ7,182件(2025年)と年々増えています。
その他のリハビリテーション
嚥下造影検査(VF)は、毎週火曜日の午前に実施しています(2025年:39件)。当院リハビリテーション科および他診療科の患者さんに加え、近年では地域の介護施設から、嚥下機能評価に関するご依頼やご相談も増えています。
また、火曜日午前には非常勤医師によるリハビリテーション科外来を開設しており、一般的なリハビリテーション診療や身体障害者の認定相談に加えて、脳卒中後遺症による痙縮に対するボツリヌス療法(ボトックス治療)も行っています。
まさらに、火曜日午後には義肢装具外来を開設しています。当院では、義肢装具等適合判定医の資格を有する医師が診察を行い、補装具の処方をしています。原則として当院で診療を行った患者さんを対象としていますが、他院・他施設の患者さんからの装具に関するご相談にも対応しています。その際は、紹介状をご持参のうえ、まず火曜日午前のリハビリテーション科外来を受診してください。
リハビリテーション科 医師紹介
①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格等- 諸冨 伸夫
(リハビリテーション科部長)
①心臓リハビリテーション ②昭和大学医学部 ③心臓リハビリテーション指導士/日本専門医機構認定リハビリテーション科専門医/日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科指導医/日本在宅医療連合学会認定専門医・指導医/義肢装具等適合判定医/身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由、音声・言語・そしゃく機能障害)/医学博士 - 越川 尚男(リハビリテーション科医長)
①外科一般 ②千葉大学医学部 ③日本外科学会認定医/日本消化器病学会専門医/日本消化器外科学会認定医/医学博士 - 竹島 慎一(リハビリテーション科医長)
①リハビリテーション全般 ②防衛医科大学校医学教育部 ③日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医/日本神経学会神経内科専門医/日本内科学会総合内科専門医/日本脳卒中学会専門医 - 上原 朋子(リハビリテーション科医長)
①リンパ浮腫・高次脳機能障害 ②大分大学医学部 ③日本専門医機構認定リハビリテーション科専門医/日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科指導医/日本内科学会認定内科医 - 北原 行雄(リハビリテーション科/脳神経外科医長)
①脳神経外科リハビリテーション ②弘前大学医学部 ③日本脳神経外科学会専門医・指導医/日本リハビリテーション医学会認定臨床医/医学博士 - 他科とも連携してチーム医療を行っています
- 川島 彰人(総合診療科部長)
- 岡﨑 裕司(外傷再建センター イリザロフ組織再生部長)