広報紙 vol.82しんゆりニュースレター
2025/4/1掲載
手外科センター特集|広報紙
高度で専門的な知識・経験に基づき、患者さんに最適な手の治療を
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新百合ヶ丘総合病院
手外科センター長
外傷再建センター
手外科・上肢外科 部長 -
【プロフィール】
1998年旭川医科大学医学科卒業。98年東京大学医学部形成外科教室入局。99年東京大学医学部附属病院形成外科。2000年東京大学医学部整形外科教室入局。09年東京大学医学部附属病院整形外科。10年国立病院機構相模原病院整形外科。20年より現職。
日本整形外科学会専門医・指導医/日本手外科学会手外科専門医・指導医/AO Trauma Japan 教育委員
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《手外科学とは》
手外科といわれてもピンとこない方がほとんどだと思います。一般の社会では手外科という専門分野が存在することも知られておらず、医療従事者であっても手外科の重要性を理解している人は少ないと思われます。しかし日本で日本手外科学会が設立されたのは1957年であり、その歴史は古く、現在では日本の手外科医の高度な知識と技術レベルは世界に誇れるものであります。手外科学は第二次世界大戦後アメリカで発展し、日本でも戦後急速な経済成長とともに交通事故や工場などでの手の外傷が増えたため手外科学が発展しました。それとともに顕微鏡手術、関節鏡手術、人工関節手術などの技術・手術手技の発展も現在まで続いています。
現代社会では手の機能の役割は大きく、日常や仕事での基本動作やスポーツ・音楽活動などで様々な役割が存在します。
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そのため手外科医において複雑な手指の運動や繊細な感覚、美容的形態の医学的知識は重要であり、手外科は専門性が高い分野となっています。そのため手外科医は、手の繊細な動きや知覚、形態機能に関する知識を持ち合わせ、さらに職業や日常生活動作などの社会的機能を考慮した治療をする必要があるのです。
当センターで手外科の治療を行うにあたっては、まず患者さんの社会的背景を十分に把握し、話し合いながら治療方針を決定していきます。若いスポーツ選手の手の治療と超高齢者の手の治療はその社会的背景が違うため最適な治療方法が異なってくるのです。したがって我々手外科医は高度で専門的な知識や経験に基づいて、患者さんに最適な治療方針を説明しながら進めていきます。
【目次】

手外科センターについて

当院は日本手外科学会の基幹認定研修施設として認定されており、日本手外科学会認定手外科専門医*が3人常勤し(内2人は手外科指導医)、手指から肘関節までのあらゆる外傷、外傷による合併症・後遺症、手外科疾患・傷害の専門的治療が可能です。
※日本手外科学会認定手外科専門医になるためには、医師免許取得後6年間臨床研修をしたあと整形外科もしくは形成外科専門医試験に合格し、さらに3年間の手外科研修の後、手外科専門医試験に合格しなければなりません。

血管や神経の損傷、組織移植に対する顕微鏡手術、肘関節・手関節・指関節内の外傷や疾患に対する関節鏡手術、指・手関節・肘関節に対する人工関節手術など、最新かつ高度な技術や器械を用いて、安心で専門性の高い治療を提供します。
手外科外傷や外傷による後遺症の治療は、外傷再建センタースタッフと共に治療に当たります。
対象となる症例
■外傷・外傷による合併症、後遺症
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- マレット変形
- 伸筋腱損傷
- 橈骨遠位端骨折
- 手根靭帯損傷
- 肘脱臼骨折
- 手指骨骨折
- 末梢神経損傷
- 上腕骨顆上骨折
- TFCC損傷
- 肘靭帯損傷
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- PIP関節脱臼骨折
- 切断指
- 母指MP関節靭帯損傷
- 前腕骨骨折
- 舟状骨偽関節
- 屈筋腱損傷
- 舟状骨骨折
- 肘脱臼
- 骨折後変形治癒

■手外科疾患・傷害
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- 手根管症候群
- ガングリオン
- 肘部管症候群
- デュプイトラン拘縮
- ドケルバン病
- テニス肘
- 強剛母指
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- ばね指
- ゴルフ肘
- 母指CM関節症
- リウマチ手の傷害
- ヘバーデン結節
- 野球肘
- キーンベック病
- 瘢痕拘縮など

最新かつ高度な技術や器械を用いた安心で専門性の高い治療
■手指骨折手術
従来の鋼線を用いた手術では、骨折部の固定力不足や伸筋腱の癒着・関節の拘縮などの合併症が起こる可能性がありました。プレートや髄内スクリューを用いて骨折部の固定性を上げることによって早期関節可動域練習が可能となり、合併症を予防することが可能となりました。



血管や神経の損傷、組織移植に対する顕微鏡手術
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手指などの小さな軟部組織欠損に対しては、小さな遊離皮弁を用いることによって美容的にも機能的にも良好な再建が行えるようになりました。

手関節内骨折などに対する関節鏡手術
以前は大きく皮膚切開をしていた手術は、関節鏡を用いることによって低侵襲で早期社会復帰が可能となっております。

人工関節手術
骨粗鬆症がすすんでいる高齢者骨折に対しては、人工関節置換術を行うことにより術後早期に動かすことが可能となり、早期自宅退院・復帰が可能となりました。
