広報紙 vol.81しんゆりニュースレター
2025/3/1掲載
呼吸器内科特集|広報紙
安心して最新・最適な呼吸器治療が受けられるように
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新百合ヶ丘総合病院
呼吸器内科 部長 -
【プロフィール】
昭和大学医学部卒業。昭和大学医学部第一内科。昭和大学医学部大学院医学研究科。昭和大学医学部内科学講座呼吸器アレルギー部門。米国ピッツバーグ大学,Drug Discovery Institute, Postdoctoral fellow。東京都保健医療公社荏原病院呼吸器内科。2016年より現職。
日本内科学会認定内科医・指導医/日本内科学会総合内科専門医/日本呼吸器学会専門医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医/日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医/日本がん治療認定医機構がん治療認定医/身体障害者指定医(呼吸機能障害)/難病医療費助成における難病指定医
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呼吸器内科は、気道や肺を中心とする様々な呼吸器疾患、特に一般細菌やウイルス、真菌、結核や非結核性抗酸菌症などの呼吸器感染症、気管支喘息などのアレルギー疾患、喫煙関連の慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、がんなどの悪性新生物などを中心に診療を行っております。
現在、常勤医8人、日本呼吸器学会呼吸器専門医7人、日本呼吸器学会呼吸器指導医3人、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医4人、指導医2人で、各医師が高い専門性を持って診断、治療を行っております。
今回は、私の専門分野であるがん治療についてご紹介しましょう。呼吸器内科で扱う肺の悪性疾患は、肺がんや悪性胸膜中皮腫、胸腺腫瘍などがあります。当科の強みは、検査、診断、治療を一貫して当院で行えることです。患者さんは可能な限り迅速に血液検査や画像検査を受け、気管支内視鏡を用いた経気管支生検、CTやエコー下穿刺生検、外科的生検などの検査により、医師は病理診断による確定診断を最短で行います。また患者さんに合った治療選択を行うため、がん遺伝子検査などのコンパニオン診断を行います。
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他科とも緊密な連携をとり、外科的治療、放射線治療、薬物治療などを行います。外科的治療は2人の経験豊富な呼吸器外科専門医が手術を担当し、ダビンチによるロボット手術の導入により早期の退院も可能です。放射線治療科は、放射線治療専門医がサイバーナイフ治療、リニアック治療を行い、タイムラグなく治療連携が可能です。呼吸器内科は免疫チェックポイント阻害剤による免疫治療、殺細胞性抗がん剤治療、がんの遺伝子検査に基づく分子標的治療薬などを組み合わせた化学療法を中心に行います。
がんによる痛みや精神的な辛さを伴う患者さんには、緩和ケアチームの介入や緩和ケア病棟への入院によるサポートも行っております。また当院は外来化学療法室が充実しており、外来通院で仕事をしながらでも安心して抗がん剤治療を受けることが可能です。
近年の医療は発展が目覚ましく、新薬の開発により医療者も常に知識や経験のアップデートが必要です。我々は患者さんやご家族が安心して最新の最適な治療が受けられるように、邁進していきたいと考えております。近隣の先生方とも連携を取りながら、地域医療の一翼を担えればと考えております。引き続きよろしくお願いいたします。
気胸とその治療
呼吸器内科科長 内海健太
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肺は左右の胸郭(筋肉と肋骨と横隔膜に囲まれた空洞)にぴったり入ったスポンジのような臓器です。気管支を通して口鼻とつながり、空気が出入りしています。空気から酸素を体内へ取り込み、二酸化炭素を体外へ排出しています。
気胸は、このスポンジのような肺の表面に、空気の袋(大きさは様々)ができ、空気の袋が破けて孔が開き、孔が気管支とつながっていることにより生じる疾患です。空気が口鼻から気管支を通って孔から肺の外に漏れ出ます。胸郭は大きくなれないので、空気が胸郭内かつ肺外に出ると肺が縮みます。このため、呼吸困難、咳嗽(がいそう)、胸痛を生じます。肺が縮み、心臓を圧迫すると、心臓の動きを制限して血圧が低下する「緊張性気胸」を生じます。
気胸の治療は、まず肺の外かつ胸郭内に溜まった空気を体外へ抜き出します。通常は、胸腔ドレーン(チェストチューブ)を体外から挿入します。次に、肺の表面にできた孔を塞ぎます。自然に塞がるのを待つ、体外から器具を挿入する胸腔鏡下手術で孔を塞ぐ、癒着剤を入れて肺の胸郭を接着させる、などがあります。
もともとの肺疾患(慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、肺がん、肺炎)があると、全身麻酔下の胸腔鏡下手術は困難な場合が多いため、気管支内視鏡を用いて孔に通じる気管支に詰め物(日本人の渡辺洋一先生が開発したシリコン製のEWS)をすることもあります。

写真は、肺リンパ脈管筋腫症(肺に多数の空気の袋ができます)という、若年女性に多い疾患です。繰り返す両側の気胸に胸腔ドレーンや癒着を行いました。その後は肺移植を受けられています。
気胸を生じたら、CT検査を行い、なんらかの肺疾患があるかどうかを調べることをお勧めいたします。
気管支喘息と抗体製剤について
呼吸器内科医長 赤司 俊介
気管支喘息は、気道のアレルギー性炎症により呼吸困難や咳、喘鳴(ぜんめい)が生じる病気です。症状が悪化すると発作が起こり、入院になることもあります。重症の喘息では、従来の治療薬だけでは十分に症状をコントロールできない場合があり、「抗体製剤」という新しい治療法が注目されています。
■抗体製剤とは?
抗体製剤は、体内で炎症を引き起こす特定のたんぱく質や細胞をターゲットにして、その働きを抑える薬です。喘息の場合、アレルギー反応や免疫系の過剰な働きによる炎症を抑えることで、症状の改善を目指します。この治療は皮下注射として使用され、多くの場合、2〜8週間ごとに定期的に投与されます。2025年1月現在、5種類の製剤が存在し、血液検査や生理検査、合併症により使い分けます。
■抗体製剤が適しているのはどんな患者さん?
抗体製剤は、通常の治療(吸入薬など)で症状がコントロールできない重症喘息患者さんに使用されます。特に以下の条件に当てはまる方が対象になります。
- 重症に対する十分な治療を行っているにも関わらず、繰り返し発作が起こり、日常生活に支障をきたしたり、入院歴がある方。
- 内服のステロイド薬を使用しても症状が改善しない方。
- 血液検査での血中好酸球数、IgE濃度や生理検査の呼気一酸化窒素濃度によりアトピー型や好酸球型など特定の炎症タイプの喘息と診断されている方。
代表的な抗体製剤の種類と特徴

■抗体製剤のメリットと注意点
≪メリット≫
- 発作が減少し、症状が安定し、入院の機会が減ります。
- 従来の吸入ステロイド薬の使用量が減少し、副作用のリスクを軽減できます。
- 日常生活の質(QOL)の向上が期待されます。
≪注意点≫
- 抗体製剤は高額な薬剤であり、医療保険や高額療養費制度などの利用について確認が必要です。
- 定期的な注射治療が必要であり、通院が求められます。
- 副作用は基本的に少ないですが、投与後にまれにアナフィラキシーなどの副作用が報告されています。
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抗体製剤は、重症喘息に苦しむ患者さんにとって新たな希望となる治療法です。特に、これまでの治療では症状が十分に改善しなかった方にとって、大きな助けとなる可能性があります。従来の治療に比べて高額ですが、入院や頻回な通院により時間や体力を奪われ、入院費がかかるよりは患者さんにとってプラスとなる可能性が高いです。気管支喘息でお困りの方は当院呼吸器内科外来までお問い合わせください。
呼吸器内科医師紹介
①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格・公職等- 永井 厚志
(呼吸器内科/呼吸器疾患研究所所長)
①呼吸器疾患 ②東北大学医学部 ③日本内科学会内科認定医名誉会員/日本呼吸器学会専門医名誉会員(理事長、学会長歴任)/日本肺癌学会特別会員/日本呼吸器内視鏡学会名誉会員(学会長歴任)/日本呼吸ケア・リハビリテーション学会功労会員(学会長歴任)/COPDガイドライン作成委員長(歴任)/FCCP(Fellow of the American College of Chest Physicians)/医学博士 -
中嶌 賢尚(呼吸器内科部長)
①呼吸器疾患・肺がん ②昭和大学医学部 ③日本内科学会認定内科医・指導医/日本内科学会総合内科専門医/日本呼吸器学会専門医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医/日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医/日本がん治療認定医機構がん治療認定医/身体障害者指定医(呼吸機能障害)/難病医療費助成における難病指定医 - 内海 健太(呼吸器内科科長)
①呼吸器内科一般・気管支喘息 ②東京医科大学医学部 ③日本内科学会総合内科専門医/日本内科学会認定内科医/日本呼吸器学会専門医・指導医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医/医学博士 - 青山 梓(呼吸器内科医長)
①呼吸器内科一般 ②東京女子医科大学医学部 ③日本呼吸器学会専門医/日本アレルギー学会専門医/日本内科学会総合内科専門医/日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医 - 赤司 俊介(呼吸器内科医長)
①呼吸器感染症、呼吸不全、呼吸器全般 ②横浜市立大学医学部 ③日本内科学会総合内科専門医/日本呼吸器学会専門医・指導医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医/日本内科学会認定内科医/日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医/難病指定医 - 寺田 友子(呼吸器内科医長)
①呼吸器内科一般 ②信州大学医学部 ③日本呼吸器学会呼吸器専門医/日本内科学会総合内科専門医/日本内科学会認定内科医/医学博士 - 島田 絢子(呼吸器内科医長)
①呼吸器内科一般 ②千葉大学医学部 ③日本呼吸器学会呼吸器専門医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医/日本内科学会認定内科医/日本内科学会総合内科専門医/医学博士 - 大中 真之介(呼吸器内科医員)
①呼吸器内科一般 ②岩手医科大学医学部