広報紙 vol.73しんゆりニュースレター

2024/6/1掲載

消化器外科特集

循環器内科特集|広報紙

専門知識と熱意を持って、最善の医療サービスを

  • 新百合ヶ丘総合病院
    循環器内科 部長(不整脈部門)
    たかはし よしひで
    髙橋 良英医師
  • 【プロフィール】
    1997年東京医科歯科大学医学部卒業。土浦協同病院、フランスボルドー大学病院(Haut-Lévêque Cardiology Hospital)、横須賀共済病院、東京医科歯科大学先進不整脈学准教授を経て、2021年4月より現職。Best Doctors in Japan。
    医学博士/日本内科学会総合内科専門医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本不整脈心電学会認定不整脈専門医
  • 循環器内科では、心臓に関する様々な疾患に対して高度な医療を提供しています。心臓病の中には、心筋梗塞や不整脈など突然発症し、緊急で診断・治療を行わなければ命にかかわる病気もあります。そのような緊急性の高い病気に対して迅速に対応するために、救急科・集中治療科・心臓血管外科・血管外科のバックアップを得て、24時間体制でカテーテルを用いた検査や手術などの救急診療を行い、患者さんの命を守るために最善を尽くしています。また、重症患者さんに集中的な治療を行った後には、リハビリテーション科の協力のもと、患者さんの心身機能の回復をサポートし、より円滑に元の生活に戻っていただくことを目標としています。

    現代の医療技術によって、一命をとりとめることも少なくありませんが、病状が進んでから治療するのでは完全な回復が望めないこともあります。超高齢化社会の現代では、より元気な状態で生活できる時間(健康寿命)を延ばすことが求められています。そのためには症状が乏しい病気の初期段階から治療し、大病の芽を摘んでおくことが必要です。

  • 日々の生活の中では異常に気付かず、健康診断で問題が発見された患者さんには、精密検査を行い患者さんの5年後、10年後を見据えて必要に応じた治療を行っています。近年、内科で行うカテーテル手術や外科手術は、技術の進歩によって10年前と比べると安全で、簡単で、楽に受けられるようになってきています。10年前のイメージで「心臓のカテーテルや手術は怖くて大変なもの」と思っている方も、手術が必要といわれた時は、ぜひ担当医の説明に耳を傾けてください。

    薬やカテーテル手術だけでなく、生活習慣の改善も健康寿命を延ばすためには必要です。健康管理において食事や運動、睡眠、禁煙、節酒が大切なことは広く知られています。血圧管理も非常に重要です。生活習慣や血圧の管理は患者さんの生涯にわたって必要なため、地域のクリニックの先生方との連携を深めるように努めています。私たち循環器内科は、院内の診療科・多職種および近隣の病院・クリニックと連携を図り、患者さんの現在とこれからの健康を考え、専門知識と熱意を持って最善・最新の医療サービスをこれからも提供してまいりますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

【目次】

FFR-CTについて

循環器内科 部長(冠疾患部門) 櫻井 馨

心臓を栄養する血管(冠動脈)が狭窄や閉塞によって血液の流れを阻害されると、心臓に必要な酸素や栄養が不足します。この状態を「虚血」と呼びます。これにより、心臓の機能が低下し、不整脈や心筋梗塞などの深刻な病態が引き起こされる可能性があります。

  • ①FFR-CT(ハートフロージャパン合同会社ホームページより)①FFR-CT(ハートフロージャパン合同会社ホームページより)
  • 心臓カテーテル検査(冠動脈造影)では、冠動脈の狭窄や閉塞を直接的に観察可能です。狭窄があった場合に、特殊なワイヤーを使って冠動脈の前後の圧の評価をすることで虚血の有無を評価できます(FFR)。

    今まではCTで分かることは狭窄の有無だけであり、虚血の有無までは評価ができませんでしたが、最近FFR-CTと呼ばれるコンピューターシミュレーションによる追加の血流解析を行うことで、カテーテル検査を行うことなく有意な虚血が存在しているかどうかを推定する新しい検査法ができました。解析の結果、画像上赤く塗られ、数値が0.80以下であれば虚血があるという判断になります。

従来であれば 「カテーテル検査で調べる必要があります」といわれたようなケースでも、「FFR-CT検査の結果ではカテーテル検査は不要でお薬による治療のみしっかりと行ないましょう」という判断ができることも多くなります。当院では2022年11月より(神奈川県で5施設目)この検査方法を導入しており、昨年1年間で約100例に対して解析を行っています。

心房細動と飲酒

循環器内科 部長(不整脈部門) 髙橋 良英

心房細動は不整脈の病気の一つであり、動悸や息切れなどの症状を呈すこともありますが、全く症状がなく健康診断で見つかることもあります。無症状でも、心房細動が原因で脳梗塞や心不全を発症することがあるため、心房細動を治療する必要があります。

心房細動の発症には加齢や高血圧などが関わっていますが、飲酒も一因です。飲酒習慣のある患者さんは禁酒することで、心房細動の出現頻度を減らすことができます。

縦軸:アブレーション後心房細動非再発率、横軸:アブレーション後フォロー期間縦軸:アブレーション後心房細動非再発率、横軸:アブレーション後フォロー期間

また、カテーテルアブレーションというカテーテル手術で心房細動を抑制することができ、当院でも1年間に200人以上の方がこの治療を受けています。しかしながら、カテーテル手術の後に飲酒を継続すると術後の再発率が高くなることが最近の研究で明らかになりました。健康維持のためには、治療を受けるだけでなく、正しい生活習慣を心がけることも必要です。

新しいアブレーション治療

循環器内科 部長(不整脈部門) 髙橋 良英

不整脈の病気の多くは、心臓の中の一部の組織が原因で生じています。その原因となっている組織を高周波電流で焼灼して不整脈を抑制するカテーテルアブレーションという治療が、1990年代に開発され現在でも使用されています。高周波電流による治療は、電流を流してから組織の温度が上昇するまで時間を要し、焼灼したくない神経や血管などまで焼灼してしまう危険性を伴っています。

そこで、これらの欠点を補うために、パルスフィールドアブレーションという技術が新たに開発されました。この方法は、極めて短い時間に組織に高電圧を加えることで不整脈の原因組織を損傷させるもので、組織の温度は変化しません。そして、神経や血管は損傷されないため、従来よりも安全に短時間に治療ができると期待されています。2025年から本邦では使用できる予定であり、なるべく早くこの新しいシステムを導入できるよう当院では準備を進めております。

パルスフィールドアブレーション

  • パルスフィールドアブレーション
  • パルスフィールドアブレーション

心臓リハビリテーション

循環器内科 医長  福島 琢

心臓リハビリテーションとは、心臓病を持つ方々の体力や不安・抑うつ状態を改善し、社会復帰を実現して、病気の進行を防ぎ、再発・再入院を減らすことをめざして運動療法・生活指導・カウンセリングを行うプログラムのことです。心不全領域においては、近年推奨の4つの薬剤に加えて、第5番目の柱として位置付けられており、運動を中心とした心臓リハビリテーションの実施はガイドラインでも強く推奨されています。

  • ①心肺運動負荷試験(CPX)①心肺運動負荷試験(CPX)
  • 当院では、入院早期の急性期リハビリに加えて、退院後に外来で行う心臓リハビリにも力を入れています。退院後の日常生活における適切な運動内容を決定するためには、運動負荷試験や身体機能評価を行い、個々の患者さんに合わせた運動プログラムを決定することが重要です。退院直後に心肺運動負荷試験(CPX)を行い、「どのくらいの強度で」「週に何回くらいの頻度で」運動すべきかを具体的に決定します。

その後、保険適用できる最大150日の外来心臓リハビリを施行します。リハビリ卒業時にはCPXを再度施行し、外来リハビリによる運動能力向上を実感していただくと共に、今後の運動内容や生活上の注意などをお伝えしていきます。理学療法士が付き添いながらリハビリを行い、脈拍数や血圧などの具体的な数字をフィードバックしますので、外来リハビリ終了後もそれらの指標を参考にご自身で運動を続けていくことができます。

他院の外来に通院しながら、当院のリハビリプログラムのみ参加していただいている患者さんもいますので、お気軽に循環器内科外来までご相談ください。

循環器内科 医師紹介

循環器内科 医師紹介ページ

①卒業大学 ②専門分野/得意な領域 ③専門医・指導医・資格等
  1. 櫻井 馨【循環器内科部長(冠疾患部門)/医療安全管理室】
    ①東京慈恵会医科大学医学部 ②虚血性心疾患、心血管インターベーション、循環器疾患一般 ③医学博士/日本内科学会総合内科専門医・指導医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本心血管インターベンション治療学会専門医/CQSO(最高質安全責任者)1期生
  2. 髙橋 良英【循環器内科部長(不整脈部門)】
    ①東京医科歯科大学医学部 ②不整脈診療、カテーテルアブレーション ③医学博士/日本内科学会総合内科専門医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本不整脈心電学会認定不整脈専門医
  3. 福島 琢【循環器内科医長】
    ①札幌医科大学医学部 ②虚血性心疾患、心血管インターベーション、循環器疾患一般 ③医学博士/日本内科学会総合内科専門医・指導医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本心血管インターベンション治療学会専門医/日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士
  4. 秋元 耕【循環器内科医員】
    ①日本医科大学医学部 ②不整脈診療、カテーテルアブレーション、循環器一般 ③日本内科学会認定内科医/日本循環器学会認定循環器専門医
  5. 田仲 明史【循環器内科医長】
    ①山梨大学医学部 ②不整脈診療、循環器一般 ③日本循環器学会認定循環器専門医/日本内科学会認定内科医/日本不整脈心電学会不整脈専門医
  6. 原 果里奈【循環器内科医長】
    ①山梨大学医学部 ②循環器一般 ③日本内科学会認定内科専門医/日本循環器学会認定循環器専門医/日本心エコー図学会SHD心エコー図認証医/日本周術期学会経食道心エコー認定医
  7. 工藤 侃【循環器内科医長】
    ①東京医科歯科大学医学部 ②虚血性心疾患 ③日本内科学会認定内科専門医
  8. 西尾 祥郎【循環器内科医員】
    ①筑波大学医学群 ②循環器一般 ③日本不整脈心電学会着用型自動除細動器処方資格
  9. 福村 健太【循環器内科医員】
    ①聖マリアンナ医科大学医学部 ②循環器一般 ③なし
  10. 清川 篤【循環器内科医員】
    ①東京医科大学医学部 ②循環器一般 ③なし