広報紙 vol.28しんゆりニュースレター
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新百合ヶ丘総合病院
低侵襲婦人科手術センター長
産婦人科統括部長あさだ ひろのり 浅田 弘法 医師 -
【プロフィール】
慶應義塾大学医学部卒業。1991年慶應義塾大学医学部助手(専修医)。95年済生会神奈川県病院産婦人科。2000年慶應義塾大学病院診療医長(産科)。05年慶應義塾大学専任講師(医学部産婦人科)。12年より現職。
日本産科婦人科学会認定医/日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医/日本生殖医学会生殖医療専門医
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当院は開院から7年を経過いたしました。地域の救急を担うとともに、地域の分娩体制の改善や、婦人科疾患の受け入れ施設の確保も役割の一つとなっています。産科部門の充足が地域のニーズではありましたが、総合病院として、婦人科疾患も広い範囲で網羅して対応できる施設を整えてきました。 当院の産婦人科では、産婦人科領域の広範囲の疾患に内視鏡治療が可能です。2018年の産婦人科腹腔鏡手術の報告では、国内で最も症例数が多い施設として取り上げられています。腹腔鏡の適応は良性疾患に限られていましたが、当院では婦人科悪性腫瘍(子宮頸がん、子宮体がん)に対しても腹腔鏡を早くから導入し、神奈川県内では最も多くの経験を有しています。有効で低侵襲な治療を行うことを目指しており、悪性疾患の患者さんにはセンチネルリンパ節生検の手技も先進的に取り入れてきました。この手技は、必要最低限のリンパ節だけに切除を限局し、リンパ浮腫などの合併症を減少させるために開発された方法です。疾患の治療精度を下げずに、どこまでリンパ節切除を省略するかが問題になります。婦人
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科領域でのセンチネルリンパ節生検が臨床応用されている施設は国内ではまだ数えるほどしかありませんが、当院では一部の病状に対して、実地診療として開始しています。一方、良性疾患への腹腔鏡手術は、子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣嚢腫など多岐にわたって適応となっています。当院では外科や泌尿器科とも連携し、通常は開腹手術で対応されている膀胱内膜症・尿管内膜症・直腸内膜症などに対しても、腹腔鏡で対応しています。
内視鏡手術の経験が豊富な施設であることが当院産婦人科の特徴ですが、診療としての質の維持には診療科の相互連携が欠かせません。病理診断科、放射線診断科、外科、泌尿器科との連携をフットワーク良く対応できるのも特徴となっています。また、不妊症治療の成績も、専門クリニック同等かそれ以上の妊娠成績を維持しています。胚培養の技術に優れているのみならず、婦人科疾患について適切なタイミングで迅速に治療ができることもあり、総合病院のメリットをいかして、迅速な不妊症治療を提供しています。
低侵襲で質の高い治療を、患者さんの立場に寄り添いながら行っていきたいと考えています。
産婦人科の悪性疾患と腹腔鏡手術件数
受診の際は、必ずご予約をお取りの上、ご来院ください。
【予約電話番号:0800-800-6456(9:00~17:00)】 ※月~土(日・祝日除く)
子宮頸がん

子宮頸がんの外科的治療は開腹手術・腹腔鏡手術があります。治療方法は腫瘍の大きさによって大きく異なります。最近の報告では開腹手術が優れているとの報告もあり、腹腔鏡手術の適応は限られますが、腫瘍の大きさが小さくリンパ節転移リスクが少ない場合に、腹腔鏡による神経温存広汎子宮全摘術を施行しています。
子宮体がん



子宮体がんの外科的治療は、子宮体部への浸潤やリンパ節転移の評価によって異なってきます。子宮への浸潤が少ない場合は、腹腔鏡による子宮全摘術・両側付属器切除術を行います。浸潤がある場合やリンパ節転移リスクが高い場合は、上記の手術に加えて、骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節切除を追加します。当院は先進医療で腹腔鏡下傍大動脈リンパ節切除術が施行可能な施設です。傍大動脈リンパ節の切除は開腹手術では大きな腹部切開が必要とされますが、腹腔鏡では比較的小さな創部で、出血量も少なく行うことが可能です。
◆当院における子宮頸がん腹腔鏡手術 手術件数
子宮頸がん | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|
前がん状態 | 29 | 38 | 39 | 46 | 41 | 193 |
浸潤がん | 1 | 13 | 10 | 9 | 20 | 53 |
計 | 30 | 51 | 49 | 55 | 61 | 246 |
子宮体がん | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|
前がん状態 | 3 | 9 | 3 | 10 | 12 | 37 |
浸潤がん | 33 | 38 | 48 | 58 | 64 | 241 |
計 | 36 | 47 | 51 | 68 | 76 | 278 |
センチネルリンパ節生検
センチネルリンパ節生検の手技は、はじめに転移が起こるリンパ節をリンパ流の評価により見つける方法です。乳がんでは臨床的に使われている歴史がある方法ですが、産婦人科では今後の評価が必要な手技です。過去の臨床研究では有用性が示唆されているため、この手技の評価を行ってきました。当院では、一定の基準を設けて、センチネルリンパ節生検で転移を認めなかった場合、リンパ節切除を省略することを開始しました。この方法によりリンパ浮腫の発症を防ぐことが可能となります。
リハビリテーション科の紹介
当科では、合計65名のスタッフが“医療保険:入院・通院(外来)”と“介護保険:訪問でリハビリテーション”のサービスを提供させていただいております。大別すると、以下の班ごとに業務にあたっています。2020年度には回復期リハビリテーション病棟が新設される予定で、多様な病状や時期、状況に応じたサービス提供が可能になります。皆様のご要望に応えられるよう努力してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
外科班
外科班は、主に脳神経外科、整形外科、脊椎脊髄末梢神経外科を主科に入院されている方々のリハビリテーションを担当しております。脳卒中後遺症や外傷・骨折の手術後などに行う運動機能訓練や、脳卒中後遺症に対する言語訓練・高次脳機能訓練を実施しております。
内科班
内科班は、心不全や呼吸器疾患、がんに対するリハビリテーションや、入院に伴う体力低下(廃用症候群)の予防を目標としたリハビリテーションを担当しております。それぞれの疾患を持つ方々に対し、より専門的なリハビリテーションを提供できるよう、班内に「心臓リハビリテーションチーム」と「総合リハビリテーションチーム」を編成しております。
外来班
外来班は、病気や怪我の後遺症に対するリハビリテーションはもちろん、家事や通勤など社会生活における運動のアドバイスなども行っております。毎週火曜日にはリハビリテーション専門医による外来診療が行なわれており、脳卒中後遺症に対するボトックス療法(手足のつっぱりに対する治療)なども実施しております。
訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションは、利用者様の自宅にスタッフが訪問し、心身機能維持・向上のためにリハビリテーションを行う介護保険サービスです。実施地域は麻生区内・稲城市平尾が中心で、その他地域への訪問はご相談させていただきます。介護保険でのサービスとなりますので、要支援・要介護の認定を受けられている方で日常生活に不安のある方はぜひ一度ご相談ください。
体外受精セミナー
体外受精に関心を持たれている方々を対象に、毎月一回、『体外受精セミナー』を開催しています。お気軽にご参加ください。


- 日時
- 基本、毎月第4土曜日 11月30日(土) / 12月28日(土)
15:00~16:00 - 会場
- 新百合ヶ丘総合病院3階 研修室
- 講師
- 新百合ヶ丘総合病院 産婦人科 部長 田島 博人 医師
もしくは 産婦人科 医長 原 周一郎 医師 - 内容
- ①不妊治療の基礎知識
②体外受精の実際~高い妊娠率を得るために~
③手続きと費用について
④ご質問にお答えします - 参加
- 無料(お茶菓子付き)
※ご夫婦そろっての参加をおすすめします。もちろんお一人でもご参加いただけます。 - 申込み
- 広報課 ☎044-322-9991(代)
※お電話でご予約ください(要予約・先着20組)
~ 田島博人医師からのメッセージ ~
当院では不妊治療の切り札である体外受精を開院当初より行っており、積極的に妊娠を望まれるご夫婦を対象に毎月一回、土曜日の15:00より体外受精セミナーを開催しております。
体外受精の現況ですが、2018年は686件の採卵と400件の胚移植を施行し、胎嚢確認に至る妊娠率は40歳未満で40.4%、妊娠が厳しくなる40歳以上でも24.6%と高い成績を維持しています。セミナーでは基本的な妊娠のしくみから実際の治療の進め方、メインである体外受精の詳細について広くお話しをしています。不妊治療はタイミング法、人工授精を経て体外受精に進むことが一般的ですが、ご年齢・時間との勝負になることも多く、初めから妊娠率の高い体外受精を行う場合も少なくありません。体外受精というと高度で特殊な治療法と考えられる方もおられますが、1978年に世界初の赤ちゃんが誕生して以来41年が経過し、今日では不妊治療といえば体外受精という時代となっています。無駄に時間を消費せず、効率よく妊娠を成功させる体外受精の方法を、排卵誘発-採卵-胚凍結・胚移植の一連の流れで、なるべく分かり易い言葉で解説するようにしています。
すぐには体外受精まで考えていない方でも、お気軽にセミナーを受講ください。ご夫婦で参加いただくことで普段はあまり真剣な会話になりにくい妊娠の話をする良い機会になることと思います。もちろんお一人でのご参加も大歓迎です。実際の診察を行うリプロ外来は現在総勢10名の医師で担当しており、心の通った診療を行うことを心掛けております。こちらも、いつでも皆様の受診をお待ちしております。
講座・イベントのご案内
◆医学健康講座 ※時間…14:00~15:00/会場…STRホール(新百合ヶ丘総合病院3F、定員150名、先着順)
11月6日(水) | いざという時に役立つ‼ 災害・事故での首~胸の大ケガに対する緊急処置 ※12:30よりオータムコンサート開催 |
呼吸器外科 医長 志賀 光二郎 先生 |
11月8日(金) | 「病院」には種類と役割があります。~あらかじめ知っておくと役に立つ~ ※12:30よりヘルマンハープコンサート開催 |
医療福祉課 藤田 誠治 社会福祉士 |
11月16日(土) | 「アンチエイジング教室」 ~老化を防ぐ栄養のお話~ ※12:00より映画「人生フルーツ」上映会開催 ※事前申込み制 |
予防医学センター 消化器内科部門 部長 袴田 拓 先生 |
◆市民医学講演会 ※時間…14:30~15:30
11月15日(金) | あなたの腎臓は大丈夫? ~腎臓病の発見から関わり方まで~ |
腎臓内科/透析内科 稲永 亮平 先生 | 和光大学 ポプリホール鶴川(定員120名) |
11月19日(火) | 知って得!肺がん外科治療の最前線 ロボット手術と1泊2日の外科手術 |
呼吸器外科 統括部長 小田 誠 先生 | 小田急ホテルセンチュリー相模大野 8F 相模野(定員120名) |
11月27日(水) | あなどれない 貧血 | 血液内科 部長 田内 哲三 先生 |
ベストウェスタンレンブラントホテル 東京町田/B2F翡翠(定員120名) |
※ 講座の講師及び演題は予告なしに変更になる場合がございます。
医学健康講座の最新お知らせはこちらから
2019年9月の救急車受け入れ台数は565台でした。