永井 厚志先生 動画インタビュー|ドクターインタビュー

2018年3月7日掲載

今回のドクターインタビューは、当院呼吸器内科 呼吸器疾患研究所 所長 永井 厚志先生にお話を伺いました。

インタビュー内容

  1. 当院の呼吸器内科の特長
  2. ここ数年で変化・成長したこと
  3. 肺炎の治療について
  4. 診療で大切にしていること
  5. 今後の抱負と皆さまへのメッセージ

特別インタビュー

当院の呼吸器内科について

当院の呼吸器内科は専門医6名の体制で臨んでいます。4名の常勤医師、2名の非常勤医師はそれぞれ各分野の第一人者であり、日本では第一級レベルの質の高い診療を行っております。当院は呼吸器外科と呼吸器内科の連携が非常に密で、毎週1回は必ず両科の医師が集まって、患者さんの集学的治療(内科的治療・外科的治療・放射線治療など複数の治療法を組み合わせて行う治療法)を行っているのが大きな特長です。

増加傾向にある肺炎について

肺炎には大きく分けて2種類あります。肺の組織が細菌やウイルスなどの病原体に感染して炎症を起こす肺炎と、リウマチなどの膠原病・特殊な自己免疫疾患・薬物・毒物が原因で起こる間質性肺炎です。基本的に間質性肺炎を治す方法はなく、どのように延命効果を得るかということが医学上の問題になります。まず医師が第一にすることはCT画像で肺の状態を確認し、患者さんの病歴・背景から肺炎の原因を探るということです。そして原因、症状、重症度に応じた治療を行います。必要であれば適切な抗菌薬(抗生物質)を投与します。原因が分からない場合は、病態に応じた治療になります。また、肺炎は風邪などの感染症が加わった場合に一気に悪化しますので、感染予防が非常に重要になります。

診肺結核について

日本において、常日頃忘れてならないのは肺結核です。昔に比べて少なくなったと言われていますが、現在50才以上の世代は小さな頃に肺結核にかかっている割合が高く、高齢になって免疫力が落ちている方や、生体防御(身体を守る力)が落ちている方は、従来かかっていた結核が再燃することがあるのです。肺結核が蔓延してしまうとたいへんですから、兆候を見逃さず正しく診断することが必要です。

当院の呼吸器内科で一番多い疾患は

一番多いのは、通常の感染症です。風邪からはじまって、肺炎・重症肺炎、特に高齢者には誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が食道ではなく肺に侵入し、細菌が繁殖して炎症を起こす)が多いです。誤嚥性肺炎は重症化しやすい肺炎です。肺の病気は息苦しさ・咳・痰の3つの症状が代表的ですが、高齢者にはそのような症状が出ないことが多く、まず最初に食欲不振、胃のむかつきという消化器症状が出ます。それが4~5日続いて、その後に肺の症状が出るので、どうしても手遅れになってしまいます。来院時はほとんどの方が食事を摂ることのできない状態で、脱水症状になっているので、まず脱水を治してから病原体の治療を行います。

気管支喘息などのアレルギー疾患について

気管支喘息は通常の若い年代に起きる喘息と、高齢者喘息があります。高齢者喘息は従来のアレルギーとは別のメカニズムで喘息発作を起こすこと、また難治性であることが特徴です。一人一人の患者さんの病態が違えば、治療の効果の現れ方も違ってきますので、治療はガイドラインに沿うだけではなく、個別の治療が重要となります。 吸入ステロイド剤も、吸入器の形も進化しています。ですから、それぞれの患者さんに適した薬を厳選します。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)について

日本では、COPDの一番の原因は喫煙であると考えられています。また「pm2.5」という大気汚染物質も肺にダメージを与えるとされ、問題になっています。個々の方に関してCOPDの原因を突き止めることは難しいのですが、疫学調査(病気の原因と思われる環境因子を設定し、その因子が病気を引き起こす可能性を調べる統計的調査)の結果をもとに推測します。 動作時に息切れがするのが特徴で、在宅酸素療法(HOT)をされる方の約半数はCOPDの患者さんです。在宅酸素療法は携帯用酸素ボンベの機械が大きかったり、引っ張って移動しなければならないということがあり、身体を動かさなくなってしまう患者さんが多くいらっしゃるのですが、本来の目的は酸素を吸うことによって身体を動かしていただくことにあります。病態を良くするためには何よりも動くことが必要で、普段から身体を動かしていると息苦しさは徐々に軽くなってきます。

肺がんについて

  • 肺がんは組織別にみると、小細胞がん、大細胞がん、腺がん、扁平上皮がんの4種類あります。小細胞がんは進行がんで、見つかった時点で身体のあちこちに転移している可能性が高く、手術で完全に治すことはできません。よって抗がん剤による薬物療法が治療の中心となります。日本人に多いのは腺がんと扁平上皮がんです。この2つのがんは早期に発見すれば、完全に治すことが可能です。

    <検査>胸部単純写真だけでは直径20mm以下の小さながん(早期がん)を見つけることは難しいですから、CTを撮ることをお勧めします。CT画像から肺がんが疑われる場合には、さらに組織検査を行います。代表的なものは気管支鏡検査で、肺の中にファイバースコープを入れて、組織を直接見て診断します。

<治療法>主に外科療法(手術)、薬物療法(化学療法)、放射線療法があります。薬物療法はこの5年で目覚ましく進歩しました。従来は殺細胞性の抗がん剤が使用されてきましたが、分子標的抗がん剤(がんが増殖するルートを断ち切る薬)が登場し、最近では免疫チェックポイント阻害薬(身体の中のがんを殺すリンパ球の働きを活発にする、高額の薬)が開発されました。当院が得意としている放射線治療もたいへん効果的です。放射線を当てることによってがん細胞だけを殺すことができるので、生体に害を与えず、副作用もほぼありません。放射線治療後に外科的手術をしたり、放射線治療と抗がん剤を組み合わせて延命効果をはかることもあります。一昔前には「見つかったら余命は2~2.5年ほどしかない」と言われていた肺がんが、いまでは充分5年以上生存できるという確証が得られるようになりました。がんの治療法は日々、世界中でめまぐるしく進歩しているのです。

診療にあたって大切にしていること

日「患者さんの病態をどう把握するか」ということです。これは研修医のときから変わっておりません。

今後の抱負と、ホームページをご覧の皆様へのメッセージ

今後の抱負としましては、当院の所在地である神奈川県北部の地域医療連携を推進していきたいと考えております。 現在、日本全国で呼吸器内科医が減少していることもあり、地域医療を存続させるためには医療連携が必要です。

当院では今後も患者さんに最適な治療を提供できるよう努力してまいります。正確な診断のもとに呼吸器疾患の治療を受けたいという患者さんのご要望がございましたら、私共はいつでもお受けさせていただきます。そして治療には最善の努力をつくしますので、いつでもご相談ください。