浅田 弘法 医師  動画インタビュー|ドクターインタビュー

2017年9月29日掲載

今回のドクターインタビューは、浅田 弘法 医師 にお話を伺いました。

インタビュー内容

  1. 自己紹介
  2. 当院産婦人科のご紹介
  3. 当院産婦人科の特徴
  4. 患者さんへのメッセージ

特別インタビュー

当院の腹腔鏡下手術件数が年々増えています

2016年からは、婦人科腹腔鏡下手術が年間1100件を超えてきています。 現在は東日本1位の件数で、全国でも3位以内の症例数となる見込みです。

腹腔鏡下手術を多くの患者さんが選択されます

一部の巨大な腫瘍や多発性子宮筋腫などを除けば、婦人科領域の良性疾患のほとんどが、腹腔鏡下手術の適応となってきました。特に子宮内膜症は再発もあるため、よい適応と考えられています。婦人科領域の悪性疾患に対しては、疾患によって事情が異なっています。子宮肉腫と卵巣がんは一般的に腹腔鏡下手術の適用ではありません。播種や再発を促進することが危惧されているからです。一方、比較的頻度の高い子宮体がんや子宮頸がんなどは、腹腔鏡下手術の適応になることが多くなっています。病状によっても変わりますが、病院の技術導入の状況によって開腹手術になるか腹腔鏡下手術になるかが決まるのが現状です。手術をさせていただく側からの視点では、腹腔鏡下手術は拡大視野を共有できるため、習熟してくると、開腹手術より腹腔鏡下手術の方がやりやすくなってきます。また、何よりも患者さんにとって負担が少なく、手術後の体調回復が早く、社会復帰が早期から可能となります。子宮内膜症や悪性腫瘍といった疾患では何度も手術をお受けになることもありますので、そのような患者さんにとっても腹腔鏡下手術で治療をうけることのメリットがあると考えています。当院の場合、婦人科の手術の95%以上が腹腔鏡下手術で行われており、腹腔鏡下手術の環境に医師・手術部スタッフが慣れていることが当院の特長だと思います。

当院では、腹腔鏡下手術導入を開院時から行っていますが、良性疾患では消化管や尿路系などへ進展していて骨盤痛の症状が強い重症内膜症の治療や、比較的大型で、他院では開腹手術のみが適応とされている子宮筋腫の治療が腹腔鏡で可能なことが多い施設です。また、悪性疾患への適応は、腹腔鏡下手術が保険適用になる前から、先進医療あるいは自費で行っていたという経歴があり、神奈川県内でも最も早期から腹腔鏡下婦人科悪性腫瘍手術を導入していた施設の一つです。当院のスタッフは、開院前から技術的なトレーニングを行い、いくつかの先進的な施設に見学に行き、技術を導入する準備をしてきました。腹腔鏡下子宮体がんの手術は、施設認定を取得し、多数の患者さんを治療させていただいています。腎静脈の近くまでリンパ節を切除する必要が有る場合は、通常の保険診療とはなりませんが、腹腔鏡下で行ってきました。腹腔鏡下広汎子宮全摘術は自費診療の時代から行っていましたが、先進医療となったため、当院でも先進医療施行施設として承認され、施行しています。トラケレクトミーという、子宮体部を温存する子宮頸癌の術式も当院で導入しました。

リンパ浮腫という問題は悪性疾患でリンパ節を切除する場合には一定頻度で避けられない合併症です。これに対しても、対策がないかと模索してまいりました。乳がんや悪性黒色腫の領域では一般診療となっているセンチネルリンパ節生検という手法がその対策の一つです。転移の可能性があるリンパ節だけを検査して、正常なリンパ組織は温存するというセンチネルリンパ節生検を取り入れた低侵襲治療です。婦人科領域では、国内でもこの方法はいくつかの施設で臨床研究として行われ、すでに、初期の子宮頸がんに対しては、条件がととのえばリンパ節郭清を省略することまで行っている施設が数施設(函館市民病院、東北大学病院、鹿児島大学、北野病院など)あります。当院でも一年以上前からセンチネルリンパ節切除の研究を開始し、技術的に成熟してきましたので、初期子宮頸癌に対して、一定の条件を満たしていればリンパ節生検にとどめて、リンパ節郭清を省略することを開始しました。

当院は、腹腔鏡での低侵襲治療として、子宮頸がん、子宮体がんに対応し、センチネル生検の導入によるリンパ浮腫予防にも取り組んでいる、臨床的に先進的な施設となっています。

診療・手術にあたって大切にしていること

我々医師にとっては多くの手術の中のお1人であっても、患者さんにとっては1度きりの大切な手術ですから、患者さんにとって最善の診療は何かを良く考えたうえで対応しています。手術をさせていただくならば一番クオリティーの高い手術をしたいですし、最良の治療を提供したいと考えています。いつもベストな診療と手術を提供したいと思っています。また腹腔鏡とはいっても単なる外科的治療です。薬物治療や放射線治療など、それ以外の治療も含めて、患者さんのQOLをより良く維持できる治療方針を、カンファレンスで議論しながら決めていくようにしています。

先生のバイタリティ、健康の源は何でしょうか

  • 働く時は働いて、休む時は休む、オンオフのメリハリはつけています。もともと学生の頃はアイスホッケーをしていましたが、今は少しテニスをする程度です。忙しい時もありますが、それが患者さんの役に立っていればやりがいがあります。病院の中では質の高い医療を提供することを目標に日々の診療を行っていますが、それ以外にも、他の地域の医療施設で、腹腔鏡下手術や先進医療(腹腔鏡下広汎子宮全摘術、腹腔鏡下傍大動脈生検)を導入することを支援しています。自分たちの診療レベルの向上も行いますが、技術の安全な普及にも貢献していきたいと考えています。一方、患者さんに役に立つ診療を提供していくには、自分の体調維持も必要ですから、運動や読書などのために、ほかから介入されない時間をなんとか確保するようにしています。

    医療という仕事は人のためにつくすことが要求されますが、よい医療を提供していくには、そこにかかわるスタッフ個人個人のhappinessも維持される必要があります。産婦人科チームの中でもオンオフをはっきりするように心がけています。女性医師には妊娠・出産などの機会がありますので、勤務に関して考慮することが必要ですし、男女にかかわらず、家族の用事があるときは、優先的に休めるようにしています。良い医療を提供していくことと、個人の時間を確保することに気をつけていますが、臨床業務への態度として、常によりよい方向性を学んでいく真摯な態度が最も大事だと考えています。自分ひとりではなく、産婦人科のチーム皆で協力できるような体制をつくりたいというのが目標です。

婦人科の受診を迷っている女性たちに、アドバイスをお願いします

診断がついていない方と診断がついている方とでは違いますが、診断がついていない方で症状がある場合には、迷わず受診されることをお勧めします。最初の窓口は地域のクリニックでも当院でも、どこかに受診されて下さい。ご受診された上で、いろいろな医師の意見を聞きながら、ご自分の納得する治療を受けていただければと思います。一方、ある程度の診断が付いている場合は、現在の主治医の先生と相談し、治療方針や治療する施設を検討していただくことになると思います。

当院は、病理診断科や放射線診断科による診断や判断が早く、診断から治療まで迅速な対応が可能な、スピード感のある病院です。外来診療では、混雑の具合によりとてもおまたせすることもありますが、できるかぎり、診断から治療までのタイムラグを少なく、かつ正確に行っていきたいと考えています。診断までの時間が比較的早く、土曜日にも診療を行っている施設ですので、お仕事をしていてお忙しい女性にもお役にたてると考えています。また、最近は、遠方からの患者さんも増えています。このような患者さんへは、来院時の時間はとてもかかりますが、できるかぎり受診日数少なく治療をお受けになれるように工夫しています。

病院を受診することはとても抵抗があるかもしれませんが、お困りのことがありましたら、いつでも受診されてください。どなたでも、初診での受診は可能ですが、お近くの先生に紹介状を頂いて受診いただくとスムーズな受診が可能となります。

新百合ヶ丘総合病院の特長・今後の抱負

新百合ヶ丘総合病院は手術症例が年間6,000例余り、救急車の受け入れ台数は年間8、000台近くになりました。日本でも有数の救急告示病院として大きな役割を果たしております。2年後には186床の増床を予定しており、563床の病院となります。

今後もスタッフ一丸となり、地域医療・先進医療・救急医療のさらなる充実を目指し、皆様に信頼される病院づくりに邁進したいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。