2020年11月掲載 薬剤科コラム

ワクチンについて

薬剤科 湯田 春菜

  • ワクチンについて

  • だんだんと涼しくなり秋も深まる中、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
    昨今、新型コロナウイルスが世界中に蔓延している中、一刻も早いワクチン開発を全世界中の人々が心待ちにしています。
    今回はそんなワクチンについてお話ししたいと思います。

予防接種とは、病気に対する免疫を付けたり、免疫を強くするためにワクチンを接種することを言います。ワクチンを接種することで病気にかかりにくくなり、社会に病気が蔓延してしまうことを防ぐことができるとされています。ワクチンは感染症の原因となる細菌やウイルスを加工・精製して病原性を弱めたり無くしたりして体にとって安全な状態にした医薬品です。

ワクチンの種類

生ワクチン

病原体は生きているが、細菌やウイルスの病原性を弱めたもの。効果が得られやすく、接種回数は少ない。
代表例)MR(麻しん風しん混合)、麻しん、風しん、水痘(水疱瘡)、BCG(結核)、おたふくかぜ

不活化ワクチン

病原性を無くした細菌やウイルスの一部を使用。生ワクチンに比べ効果は低いため、数回の接種が必要。
代表例)DPT-IPV四種混合(D:ジフテリア、P:百日咳、T:破傷風、IPV:不活化ポリオ)、日本脳炎、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、肺炎球菌

トキソイド

細菌の生産する毒素を取り出し、免疫を作る能力を残したまま無毒化したもの。不活化ワクチンと同様に数回の接種が必要。
代表例)ジフテリア、破傷風

ワクチンの効果

一般的にワクチンの接種により、多くの方は免疫が獲得できるとされています。 ただし、ワクチンの種類によって効果が得られる割合や効果が持続する期間が異なります。 例えば、麻しんや風しんワクチンは高い割合で免疫獲得が期待できます。一方で、インフルエンザワクチンは毎年少しずつウイルスの性質が変化するため、高い割合の効果が期待できないこともあり、接種後も感染してしまう場合もあります。しかし、ワクチンを接種することでその後の重症化を防ぐ効果が証明されています。特に重症化しやすい高齢者や基礎疾患を持っている方、小児には接種が強く推奨されます。

ワクチンの副作用

  • ワクチンの副作用

  • 全身反応として発熱、頭痛、悪寒、倦怠感(5~10%)、局所反応として注射部位の発赤、腫脹、疼痛(10~20%)があります。これらの症状は比較的軽く、通常2~3日程度でおさまります。ごくまれに重いアレルギーなど重篤な副反応が起きることがあります。アナフィラキシーショックなど重篤な症状が出た場合には緊急の対応が必要になりますので、接種後少なくとも30分は接種した医療機関で経過を見ましょう。帰宅後に異常が見られた場合には速やかに医師や医療機関へ連絡してください。

※2020年10月1日から異なるワクチンを接種する場合の接種間隔が以下の通り変更になりました。 生ワクチンを連続で接種する場合は従来通り27日以上間隔をあける必要がありますが、それ以外の場合については従来の間隔の規定がなくなりました。

ワクチンを接種する場合の接種間隔

まとめ

ワクチンは個人を病気から守るだけでなく、社会全体への流行を抑えて感染症の拡大を防ぎ、守る役割もあります。ワクチン接種に関する規定を守り、正しい時期に定められた予防接種を受けることで、我々は免疫を獲得でき、実際に様々な感染症から守られています。しかし、人へ投与する医薬品であるため、その効果や安全性が証明されなければ安心して使用することができません。ゆえにその開発・流通までには多大な労力、時間、費用がかかることも事実です。現在、世界中の製薬会社が新型コロナウイルスに対するワクチン開発に向けて毎日研究を進めています。一刻も早いワクチン開発と新型コロナウイルスの終息を祈ります。

【参考】
厚生労働省ホームページ
一般社団法人 日本ワクチン産業協会
田辺三菱製薬 ワクチン.net