2020年6月掲載 薬剤科コラム

病院薬剤師の仕事について

薬剤科 竹内 絵美

新型コロナウイルスの感染拡大により自宅で過ごす時間が多くなり、生活の変化が著しかったことと思いますが、体調にはくれぐれもご注意ください。今回は、近日放送予定となっているテレビドラマでも取り上げられている、病院薬剤師の仕事についてご紹介します。

薬剤師とは

薬剤師法という法律の第一条は、「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」とされています。薬剤師になるには国家資格である薬剤師免許が必要となり、取得には大学の薬学部を卒業しなければなりません。薬剤師の仕事として皆さんが多く目にする機会があるのは、保険調剤薬局で働く薬剤師ではないかと思います。薬剤師は他に、製薬会社の研究開発やMR(医薬情報担当者)、保健所等の行政など、様々な業種で活躍しています。

病院薬剤師の仕事

当院では外来患者さんの薬は院外処方箋の発行を行っており、薬の受け渡しなどでかかわる機会もないため、病院薬剤師の仕事内容についてはあまりイメージできない方も多いと思います。病院薬剤師は主に、入院患者さんの薬の管理や院内の薬剤の管理を行っています。仕事内容は多岐にわたりますが、ここで内容の一部を紹介します。

①調剤

調剤とは医師から発行された処方箋の医薬品を患者さんに交付することです。病院では内服薬・外用薬のほかに注射薬の調剤を行い、相互作用や投薬効果の確認を行っています。入院時にお薬手帳の確認をさせていただきますが、お薬手帳には今飲んでいる薬やアレルギーなどの記載欄もあり、調剤に必要な情報を得ることができるため、ご持参いただくようお願いいたします。内服薬には錠剤、散剤(粉薬)などの剤形があります。市販の薬では錠剤しかない薬をつぶして散剤に変更することもあります。患者さんの内服状況に合わせた調剤をしています。

②無菌調製

  • 薬剤師の仕事

  • 抗がん剤の曝露による健康被害を防ぐため、抗がん剤の調製は無菌室のなかの安全キャビネットという密閉空間で行います。投与する患者さん本人はもちろん、調製を行う薬剤師、投与時にかかわる看護師を抗がん剤の曝露から守るため、抗がん剤による汚染を広げないよう作業を行っています。

③病棟薬剤業務

入院患者さんに対する最適な薬物療法の実施による有効性・安全性の向上を図るため、各病棟に薬剤師を配置しています。入院時に、今までの内服歴やアレルギーの確認、入院後の治療に使われる薬剤の説明、今飲んでいる薬の説明などを行っています。薬によっては食前に飲むなど服用時間が決まっている薬もあります。なぜその時間に飲まなければいけないのかを知ることで退院後も内服忘れを防ぐよう説明したり、退院薬の服用間違いを防ぐために薬を1つにまとめて1包化することを提案したりしています。医師、看護師からの医薬品に関する問い合わせの対応や、薬剤の面から治療に使われる薬の提案も行っています。同じ効果の薬でも複数ある薬もあり、患者さんの状態や内服回数、予想される副作用などから患者さんにあった薬を選定、提案しています。多剤併用による有害事象(ポリファーマシー)が起こっている患者さんもいます。同じような薬を複数飲んでいる場合には薬を整理し、不要な薬の中止を提案しています。また、病棟内の薬剤の在庫管理や期限管理も病院薬剤師の業務の一つです。院内にある薬剤を管理することで医薬品の適正使用、有効利用に努めています。

病院薬剤師は入院中の患者さんの治療に薬の面から他職種と協力してチーム医療にかかわっています。入院中に薬について気になることがありましたら、遠慮なく相談してください。

【参考】
〈参考資料〉 薬剤師法、病院薬剤師会HP