2021年3月掲載

あなたの皮膚は大丈夫ですか・・?

皮膚・排泄ケア認定看護師 吉岡 百合子

スキン‐テア(皮膚裂傷)とは

  • あなたの皮膚は大丈夫ですか・・?
  • スキン‐テアとは、皮膚の摩擦やズレによって、皮膚が裂けた状態をいいます。皮膚裂傷(ひふれっしょう)ともいいます。

    これは、特にご高齢の方で、皮膚が弱くなっていると、何気ない日々の行動によって生じます。ご高齢の方の介助をされているときに、「いつの間にか皮膚が裂けていた」なんていう現象に遭遇された方もいるかもしれません。

!!スキン‐テアができやすい皮膚!!

以下に1つでも該当する方は、スキン‐テアが生じやすいといわれています。

  • 長期間ステロイド薬、抗凝固薬を使用している
  • 屋外で作業することが多かった(農作業など)
  • 抗がん剤などを使用していた
  • 放射線治療をしていた
  • 透析をしている
  • 食事がきちんと摂れていない
  • 皮膚が著しく乾燥している
  • 皮膚に内出血のあとが多数ある
  • むくみがある
  • 水ぶくれがある
  • ティッシュペーパー様に薄く乾燥した皮膚紫斑
    (内出血のあと)も多数ある
  • 皮膚が薄く、紫斑が多数あるスキン‐テアの痕も多数みられる
    (皮膚が白くなっているところは、スキン‐テアの痕です)

スキン‐テアができやすい状況とは・・

スキン‐テアは以下のような状況で発生しやすいといわれています。

  • 物にぶつかりやすい(ベッド柵や車イスなど)
  • よく転ぶ
  • 体の向きを変える介助や、車椅子への乗り降りの介助をしてもらうとき
  • 入浴や体を拭くなどの清潔介助をしてもらうとき
  • 着替えの介助をしてもらうとき
  • 医療用テープをはがすとき
  • リハビリテーションをしているとき

スキン‐テアの予防策

予防の基本は、皮膚の状態を整え、摩擦や皮膚のズレが起こりにくい環境を整えることです。

① ご自身を予防するためのポイント

手や足(四肢)を保護する

サイズの合った衣服を選択し、長袖や長ズボン、アームカバーやレッグカバーなどを着用すると皮膚を保護することができます。

周囲の環境を整える

ベッド柵など、よくぶつけてしまう物、家具の角などには、衝撃を吸収するカバーをつける。特に転びやすい場所の環境を整えるようにしましょう。

優しく体を洗う

弱酸性の洗浄剤を選択する。過度の洗浄を控え、保湿剤配合の洗浄剤を選択する。

保湿ケアをする

低刺激性の、伸びの良い保湿剤を1日2回以上塗布する。擦り付けるのではなく、抑えるように塗る。

栄養を整える

食事と水分をしっかり摂取する。

② 介助をする側のポイント

体を引っ張らない

体位変換や移動の際は、体を引きずらないように工夫します。
ビニール素材や、ナイロン素材の背抜きグローブやスライディングシートなどの介護用品を活用する方法もあります。

手足(四肢)を下から支えて持つ

体位変換、更衣、移動、清潔や排泄のケアといった体を動かす介助をする際は、手や腕、足などを握るのではなく、下から支えるように保持することを心掛ける。

皮膚の極めて脆弱な方では、腕を握って持ち上げただけでスキン‐テアが形成されることがあります。

【引用参考文献】
  1. 日本創傷・オストミー・失禁管理学会:スキンケアガイドブック,日本創傷・オストミー・失禁管理学会,照林社,2017
  2. 日本創傷・オストミー・失禁管理学会:スキン‐テア(皮膚裂傷)の予防と管理,日本創傷・オストミー・失禁管理学会,照林社,2015