2019年10月掲載

脳卒中ってどんな病気?

脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 山本 容子

脳卒中とは

  • 脳卒中ってどんな病気?
  • 脳の血管がつまったり、切れたりして、そのために突然意識がなくなったり、手足が麻痺したり、感覚がなくなったりする状態を脳卒中といいます。脳卒中と脳血管障害という2つの言葉がありますが、どちらも同じ意味です。

脳卒中には

脳出血・くも膜下出血・脳梗塞の3つの型があります。

脳の細い血管が加齢や高血圧によって痛んでしまい、突然切れて脳の内に出血が起こる脳出血
脳の表面を包んでいる3つの膜(外から硬膜・くも膜・軟膜があります)のうち、くも膜と軟膜の間、すなわち、くも膜の下に出血が生じる病気で、多くの場合、動脈にできたこぶ(動脈瘤)が破れて起こるくも膜下出血
脳血管が動脈硬化などで細くなったり、血栓が流れてきてつまったり(塞栓)して脳の血流が悪くなり、その先の脳組織が障害を受ける脳梗塞

脳卒中の検査

CT検査:
脳の断面を白と黒の色合いの変化で表示したり、脳血管を立体的に画像化できるため、脳や脳血管の異常の診断に大変役立ちます。特に脳出血やくも膜下出血などの頭蓋内出血の発症直後からの病巣の抽出や未破裂脳動脈瘤の抽出にすぐれています。
MRI検査:
撮像の条件をいろいろ変えることにより、発病直後の脳梗塞、小さなかくれ脳梗塞やかくれ脳出血、初期の大脳白質病変の抽出が可能です。MRAでは造影剤を使わなくても脳血管を画像化することができ、未破裂脳動脈瘤などの脳血管の異常の診断に役立ちます。
血液検査:
採血により脳卒中の危険因子、動脈硬化や血栓・出血傾向、薬物治療の効果と副作用などの評価が可能です。
超音波検査:
くびの血管(頸動脈)の超音波検査の目的は3つあります。
① くびの血管は全身の動脈硬化の程度を反映しており、これを評価する
② 脳卒中や心筋梗塞を引き起こす危険度を判定する
③ 脳に流れ込む血流を測定することで末梢や心臓側の血管の病変を予測する
※くびの血管の内膜中膜部分の厚さが1.1mm以上になると異常であり、脳梗塞を起こしやすくなります
心電図検査:
心電図検査は脳梗塞と関連する心臓肥大のあるなしや、脳血管病変を合併することが多い虚血性心疾患や心筋梗塞を引き起こす心房細動、脳梗塞や失神の原因になる洞不全症候群などの不整脈をみつけることができます。

脳卒中の治療

脳卒中を疑ったら、1分でも早く医療機関を受診することをおすすめします。救急車を依頼してもかまいません。

脳卒中の種類 主な治療

脳梗塞

内科的治療
・脳の血の流れを元通りにする薬物治療
・脳を保護する薬物療法
・脳の腫れを抑える薬物療法
血管内治療
・特殊な管を血管内に挿入して血栓を取り除く治療

脳出血

内科的治療
・異常な高血圧を阻止する薬物療法
・脳の腫れを抑える薬物療法
外科的治療
・血液の塊を除去する手術など

くも膜下出血

血管内治療
・特殊な管を血管内に挿入して動脈瘤をコイル塞栓する治療
外科的治療
・開頭手術により動脈瘤に対してクリップをかける治療

脳卒中Q&A 20問

① 脳卒中にかかったら薬はいつまで続けますか?
・脳梗塞の原因となる動脈硬化は完全にはもとに戻らず、高齢になるほど進行するので抗血小板薬は飲み始めたら一生飲み続けるのが原則です。心房細動があると心臓内に血栓ができやすくなるので抗凝固薬は一生飲み続ける気持ちでいてください。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの慢性疾患は自然治癒することは少ないので飲み続けることが必要です。
② 手足が麻痺してしまったら、もう治ることはないでしょうか?
・手足が麻痺しても、時間経過とともに少しずつよくなって、1~3ヶ月後にほぼ元通りに動くようになるケースは少なくありません。若い人や最初から症状が手足の麻痺だけに限られている人は、麻痺が治りやすい傾向があります。2週間以上経っても手足の麻痺が全くよくなる傾向が見られない場合は、その後にめざましい回復がみられる可能性は低いと考えられています。
③ 手足の感覚がおかしくなったら、もう治ることはないでしょうか?
・脳卒中発症直後から感覚が鈍くなった場合は、時間が経つとともに感覚がほぼ正常に戻る可能性があります。一方、発症時には一側の手足・体幹の感覚が鈍くなっていたが、その後、徐々に手足の感覚が異常に鈍くなって、ついにはジンジンと強くしびれたり、強い痛みとなって感じられる場合は、なかなか治りません。この場合は痛みを抑える薬を内服してもらいますが、あまり効果がない場合は脳外科的な治療を行なう場合もあります。
④ ろれつがまわらない、失語症などは治りませんか?
・言葉がしゃべれない、ろれつがまわらない状態になっても、脳の言葉の中枢や 舌や喉の動きに重要な部位が障害されていなければ、一般に訓練によって機能は回復してきます。言葉がわからない、でてこない、読み書きができないなどの失語症も訓練によって時間とともに、ある程度の改善が期待できます。
⑤ 寝たきりや認知症は予防できますか?
・できるだけ早期からリハビリテーションを開始し、急性期、回復期、維持期のリハビリを連続的に行うことにより、ある程度は寝たきりを防ぎ、社会復帰を可能にすることができます。
⑥ 飲んだり食べたりするとすぐむせます。どうしたらよいですか?
・窒息や誤嚥に伴う肺炎を引き起こす恐れがあるため、“むせ”がみられたら必ず医師に相談してください。
⑦ 発作後、めまい・ふらつきが頻繁に起こります。再発作ですか?治療は?
・片側の手足の動きが悪い、片側の手足がしびれる、ろれつがまわらないなどの症状が起こった場合は再発が考えられますし、くびの血管の血流が悪くなったり、脳の血管が一時的につまった状態も考えられます。脳梗塞後遺症のめまいの場合は脳の循環や代謝を改善する薬で軽快が期待できます。
⑧ 発作後1ヶ月で自宅に戻りました。今後、何に注意して日常生活を過ごせばよいですか?
・再発作予防のための健康管理が第一で、処方された薬を忘れずに服用して、食事にも気をつけましょう。身体の機能が低下しないように、適度な身体活動を維持し、前向きな日常生活を送りましょう。
⑨ 外出や旅行に行ってもよいですか?
・積極的に外出し、旅行にも出かけましょう。
⑩ 脳卒中後、物忘れなどが目立ちます。どうすればよいですか?
・リハビリテーションで機能の回復や、障害された脳の機能を他の部位で補うための代償訓練を行うことが望まれます。
⑪ 脳卒中後の食事はどのような物をとればよいですか?
・脳卒中の危険因子である高血圧やコレステロール、高血糖の是正には食事療法が重要です。高血圧は塩分摂取量を抑えることが大切です。糖尿病や高コレステロールはカロリー摂取の増大、卵や肉類のとり過ぎが問題で、これらを減らしバランスのよい食事をとることが大切です。
⑫ 運動は散歩くらいで十分ですか?
・運動は有酸素運動である軽度の等張性運動がよく、散歩がもっとも手軽にできるため推奨されます。少なくとも週3回以上することをお勧めします。
⑬ 日常生活では何に気をつけたらよいですか?
・運動、食事療法が重要です。また、喫煙者は禁煙し、大量飲酒を避け、十分な睡眠をとるように心がけましょう。
⑭ 脳卒中再発はどの位の確立で起こりますか?
・年間3~5%の確率で再発します。
⑮ 脳卒中の再発予防にはどうすればよいですか?
・再発予防は、危険因子の管理と抗血栓療法が2本柱になります。脳卒中の危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、大量飲酒、メタボリックシンドローム、心房細動などで、これらを食事療法、運動療法、禁煙、節酒、薬物療法により管理します。
⑯ 高血圧と糖尿病があります。両方の薬を飲むべきですか?
・高血圧と糖尿病がある場合は相乗的に脳卒中発症の危険度が増すことが明らかにされているため、適切な治療が必要です。
⑰ 発作後もコレステロールが高いのですが?
・発作後もコレステロール値が高い方はコレステロール(特に悪玉コレステロール)の値を正常範囲にコントロールしましょう。
⑱ リハビリは脳卒中後いつから始めればよいですか?
・一般に発作の当日や翌日など、早い時期からリハビリを開始して、座位、立位、歩行訓練へと積極的に進めていくほうが、機能的によい結果が期待できます。
⑲ 退院してからの家庭でできるリハビリはありますか?
・臥位(仰向け)での麻痺のないほうの手で麻痺側上肢をもっての肩関節などの屈伸運動・下肢の屈伸運動、座位で立ち上がり運動、立位での歩行訓練・足関節のストレッチングなどを行うと、機能維持に効果があります。日常生活をできること自分で行うようにしたり、積極的に外出して社会に入っていくことも、家庭でのリハビリとして重要です。
⑳ むせたり、物が飲み込みにくいのですが、リハビリで治りますか?
・むせたり、飲食物を飲み込むことができなくなることを嚥下障害といいます。脳卒中ではよくみられる症状で、多くは1~2週間程度で改善しますが、後遺症として残ると誤嚥性肺炎など重篤な障害を引き起こしたりします。