2019年5月掲載
もしものときのために
これからの治療・ケアに関する話し合い
~アドバンス・ケア・プランニング~
緩和ケア認定看護師 榎本 史子
-
誰でも、いつでも、命に関わる大きな病気やケガをする可能性があります。命に危険性が迫った状態になると、約70%の方が医療・ケアなどを自分で決めたり、望みを人に伝えたりすることが出来なくなると言われています。
万が一のときに備えて、あなたの大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自分自身で考えたり、あなたの信頼する人たちや医療従事者と話しあったりすることを「アドバンス・ケア・プランニング=これからの治療やケアに関する話し合い」といいます。
「これからの治療やケアに関する話し合い」は、もしもの時にあなたの信頼する人があなたの代わりに治療やケアについて難しい決定をする場合に重要な助けとなります。
人により受けたい医療・ケアは人により異なります。例えば「自宅で家族に見守られて最期を迎えたい、延命治療などはしないでほしい」と考えていても、その考えが家族や医療従事者に共有されていなければ、本人にとって「不本意な医療・ケアが提供される」可能性があります。
今、このような話し合いは必要ないかもしれません。でも、話し合いをしておけば、万が一あなたが自分の気持ちを話せなくなった時に、心の声を伝えることができるかけがえのないものになり、ご家族やご友人の心の負担は軽くなるでしょう。
またこの考えは、同じ人であっても、時間の経過とともに変わることが予想されます。何度でも、繰り返し話すことが大切です。どうしたいか決定するのではなく、どうしていきたいかを大切な人と話し合っていくその過程が大切です。
なお「これからの治療やケアに関することなど考えたくない」と思われる人も決して少なくありません。そうした方にまで「大事なことだから」といって話しを強制することは好ましくありません。この点にも最大限の留意が必要です。
