2019年3月掲載

寒暖差で起きやすい
“ヒートショック”に注意しましょう

脳卒中リハビリテーション認定看護師 中村 隆之

春の兆しが見えてきましたが、皆様の体調はいかがでしょうか。
今回は、春に向けて気温差が更に激しくなってくるため、寒暖差のヒートショックについてお話をします。

寒暖差が体調に及ぼす影響について

「寒さ」による血管の収縮に注意

  • ヒートショック
  • 冬は気温が低く、身体への影響が出てきます。身体は「冷え」を感じると、交感神経が優位に働いて身体の熱を逃がさないようにするため、全身の血管を収縮させます。血管が収縮すると血圧は上がります。
    冬は自宅などの屋内は暖房器具で暖められているため、身体の血管は拡張します。そうすると逆に血圧は下がります。血圧の下降が著しければ、脳血流量は低下し、眩暈やふらつきといった症状を自覚する事もあります。そのため、気温差には特に気を付けていただきたいところです。

「ヒートショック」について

今回の主役でもある「ヒートショック」についてお話をしていきたいと思います。
気温差・寒暖差が身体に影響を及ぼすため、普段の生活の中で気を付けなければならないのは「入浴」です。え?お風呂?と思った方もいるかもしれません。
まだ夜間は寒い日もあるため、日によっては暖房器具で自宅を暖められていると思います。しかし、脱衣所や浴室まで暖められているかと言われると決してそうではない方もいると思います。浴室や脱衣所が生活スペースから離れていれば、必然的に室温は下がっていると思います。
日本医師会ではヒートショックについて「急激な温度の変化で身体がダメージを受けること」としていますが、急激な気温差によって血圧が乱高下し、脈拍の変調を来し、様々な症状が出現します。

入浴中の事故死の実態

厚生労働省の人口動態統計による家庭の浴槽での溺死者数は、平成26 年に4,866 人※1で、平成16 年と比較し10 年間で約1.7 倍に増加しました(図1)。このうち約9割が65 歳以上の高齢者で、 特に75歳以上の年齢層で増加しています(図2)。これは高齢者人口が増えるに従い、入浴中の事故死が増えてきていると考えられます。

入浴中の事故死の実態

入浴の際に気を付けること

  1. 入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう。
    浴室・脱衣所が冷えている場合には、暖房器具で暖める事や、浴槽の蓋を開けて浴室を暖めておきましょう。

  2. 湯温は41度以下、湯に漬かる時間は10分までを目安にしましょう。 身体が温められ、血管拡張しますが、血流量が増加するとのぼせてしまいます。それにより意識障害を来すと溺水などの事故に繋がってしまいます。体温上昇が全身浴に比べて遅い半身浴も手段の一つとして挙がりますが、長時間浸かっていると体温上昇しますので湯に浸かっている時間には気を付けましょう。



  3. 浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。
    入浴中は水圧が身体にかかっています。急に立ち上がる事で圧迫されていた血管が更に拡張し、脳血流量が低下してしまい、貧血状態となる危険性があります。浴槽から出る際には手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がるようにしましょう。

  4. アルコールが抜けるまで、また、食後すぐの入浴は控えましょう。
    アルコールは血管拡張作用があります。のぼせや入浴中の事故に繋がる危険があります。食後すぐの入浴は、胃腸が消化・吸収をするために大量の血液を消化管に送っているため循環変動が起きやすいとされています。また深夜や早朝の入浴は気温差が生じやすい事に加え、同居者が気付きにくくなる可能性があるのでなるべく控えましょう。

  5. 入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらいましょう。
    入浴中に体調の悪化等の異変があった場合は、早期に対応することが重要です。同居者がいる場合は入浴前に一声掛け、同居者は高齢者が入浴した時にはこまめに様子を見に行きましょう。
    入浴事故の発症後の対策として、出来るだけ早く心肺蘇生を開始しましょう。一人での入浴を避けるため、公衆浴場の利用を考えるのも良いでしょう。

温かくなる春までもう少しですが、気温差・寒暖差には注意して体調管理をしていってもらえればと思います。

引用・参考資料

1.厚生労働省HP、人口動態の調査
2.消費者庁HP、高齢者の事故の状況について
3.消費者庁HP、冬場に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!