栄養管理科コラム

「水分足りていますか?」

栄養管理科 管理栄養士 石田 彩華

2025/9/9掲載

残暑厳しいですが、皆様体調にお変わりないでしょうか。普段から意識的に水分を摂ることができていますか。のどの渇きを感じたときはすでに脱水が始まっているサインとなります。

体の水分量ってどれくらい?

新生児や乳児は成人に比べて大きく不感蒸泄(ふかんじょうせつ)(皮膚および呼吸によって意識されずに水分が蒸発される現象)や汗で失われる水分量が多く、体の水分量は加齢とともに少なくなります。

体の水分量の目安イメージ

水分量が健康を守るしくみ

私たちの体の約60%は水分でできています。水は単なる「のどの渇きをうるおすもの」ではなく、体を健康に保つために欠かせない役割を果たしています。

  1. 老廃物を尿に溶かして排泄
  2. 栄養素や酸素を体中に運搬
  3. 温まりにくく冷めにくい性質を利用して体温調節

このように、十分な水分が保たれていることで、体は本来の機能をきちんと発揮できます。逆に水分が不足すると、以下のような体の不調につながることもあります。

水分が不足するとどうなる?

水分が不足すると、のどの渇き、めまいや吐き気、食欲減退が現れ、10%以上損失すると筋痙攣、失神など生命の危機、また熱中症・脳梗塞・心筋梗塞など健康障害のリスク要因となります。

体の水分量と必要な水分補給の目安

栄養素は食事摂取基準に摂取量が決められていますが、水に関して基準値は設定されていませんが、目安としては健康な成人の場合、1日当たり約2.5リットルの水分が必要とされています。

体内に入る水分~成人の場合~
① 飲み物から摂るべき水分:1200ml + 食べ物に含まれる水分:1000ml + ②体内で代謝によって生じる水分:300ml = 2500ml

排泄される水分
尿や便:1600ml + 呼吸や汗:900ml = 2500ml

1日の必要水分摂取量の目安(25~64歳)は1kgあたり30〜35mlですので、1日の水分摂取量は以下になります。

1日の必要水分摂取量
体重60kgの場合:60×30〜40=1800〜2400ml(1.8〜2.4L)

※腎臓病・心臓病などで水分制限がある方は口に含む程度や氷を舐めるなど工夫しましょう。

水分は一度にたくさん摂っても排泄されてしまい、蓄えられません。
1日3回の食事以外に起床時、就寝時など忘れがちな方は水を飲むタイミングを習慣づけると続けやすいかもしれません。

清涼飲料水について

0kcalや無糖と記載があっても実際にはエネルギーを含み、甘味を感じることがあります。

  • 体の水分量の目安イメージ
  • 食品表示法で飲料100mlあたり5kcal未満だとゼロ、糖類0.5g未満だと無糖の記載が可能になります。安心して飲み過ぎると知らないうちにエネルギーや糖分を摂取している可能性がありますので注意しましょう。砂糖の甘さは高温では強く感じますが、低温ではあまり甘く感じないという甘味の感じ方は温度によっても異なります。

WHO(世界保健機関)は「食事以外で摂取してもよい糖分は1日の総カロリーの5%程度が望ましい」と発表し、平均的な成人の場合、砂糖は1日25g程度となります。下記の含有量を見ると簡単に1日の上限を超えてしまうことがわかります。

飲料に含まれる糖分の量(1個4gの角砂糖が約何個分入っているのか?)

炭酸飲料500ml コカ・コーラ:56.5g(14個)
スポーツドリンク500ml アクエリアス:23.0g(6個)
缶コーヒー190ml ジョージアエメラルドマウンテンブレンド:12.4g(3個)
果汁ジュース500ml ミニッツメイドQooオレンジ:55g(14個)
紅茶440ml 紅茶花伝ロイヤルミルクティー:29.9g(7個)

水分のとり方に注意!ペットボトル症候群とは?

ソフトドリンクケトーシス(清涼飲料水ケトーシス/ペットボトル症候群)は重症化すると糖尿病ケトアシドーシスと呼ばれる状態に陥ります。

清涼飲料水の多飲 ➡ 血糖が上昇 ➡ 頻尿、脱水、口喝 ➡ 再度過剰摂取 ➡ 血糖が上昇
 ➡ 糖分をエネルギーとして使えなくなり、たんぱく質や脂肪を分解し「ケトン体」産生し、体が酸性に傾く。症状の悪化により意識障害や昏睡状態に陥ることも。

まとめ

水分補給は、のどが渇く前にこまめな摂取を忘れずにしましょう。また水分は「水」や「お茶」などを選び、日常的に糖分の多い飲料を常飲しないようにしましょう。

  1. のどが渇く前にこまめに摂取
  2. 水分は「水」や「お茶」などが基本です
  3. 糖分の多い飲料を常飲しない

【出典】
大塚製薬 水分補給 身体と水分
健康長寿ネット 水は1日どれくらい飲めば良いか
株式会社meiji 経腸栄養の基礎シリーズ
厚生労働省 栄養表示基準に基づく栄養成分表示
WHO糖類摂取ガイドライン
コカ・コーラ 製品情報