栄養管理科コラム

「日本人の食事摂取基準が改定されました」

栄養管理科 管理栄養士 石田 彩華

2025/5/28掲載

みなさんは「食事のたんぱく質ってどれくらい摂取すればいいの?」「そもそもなにを基準に決められているの?」など疑問に思ったことはありませんか。今回の改定は2005年「栄養所要量」という名称が廃止され、最初の「食事摂取基準」公表後、ちょうど20年に当たる大きな節目となります。

「日本人の食事摂取基準」とは

健康増進法に基づき厚生労働大臣が食事によるエネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を定めたものであり、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の発症予防を目的とします。

これは5年ごとに改定され、2025年度から2029年度の5年間使用されます。

栄養素の指標
目的 Ⅰ各栄養素の不足、欠乏の予防 Ⅱ過剰摂取による健康障害の予防 Ⅲ生活習慣病の発症予防
指標 ① 推定平均必要量 ④ 耐容上限量 ⑤ 目標量
② 推奨量
③ 目安量

2020年版から2025年の変更点

発症予防と重症化予防がとくに重要であると考えられる生活習慣病の高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病に加え、生活機能の維持・向上に係る疾患として骨粗鬆症が追加されました。社会生活を営むために必要な機能の維持・向上などの観点も踏まえた取り組みの推進に繋がります。

骨粗鬆症とは

  1. 骨の量が減り弱くなり、骨折のリスクが増大する骨格疾患
  2. 骨吸収の増加に対して骨形成が追いつかない状態→骨密度の減少→易骨折性
  3. 死亡原因としてだけでなく疾患による生活の質を鑑みて要介護・要支援になりうる運動器疾患
  4. 骨粗鬆症の主要な危険因子:女性、高齢、低体重、閉経などほかの生活習慣病では肥満がリスクになることが多いですが、たんぱく質や脂質・炭水化物のエネルギー不足による低体重がリスクに繋がるため、適正体重の維持が大切になります。
    目標とするBMIの範囲
    年齢(歳) 目標とするBMI(kg/㎡)
    18~49 18.5~24.9
    50~64 20.0~24.9
    65~74 21.5~24.9
    75以上 21.5~24.9

    ★予防の最終目標は骨折予防であり、軽微な外力によって生じる脆弱性骨折のリスク低減が重要です。

  5. 骨折の危険因子:低骨密度や既存骨折・喫煙・飲酒・ステロイド使用薬・骨折家族歴など食事でのカルシウム摂取は骨量の維持に必要です。
    【カルシウムの1日の推奨量:15~74歳女性650mg/日】
    カルシウムを多く含む食品
    ・乳製品:牛乳コップ1杯200ml→231mg、スライスチーズ1枚18g→114mg
    ・魚介類:ちりめんじゃこ大さじ3杯15g→330mg、さくらえび素干し10g→200mg
    ・大豆製品:豆乳コップ1杯200ml→32mg、絹豆腐1/3丁100g→75mg
    ・野菜、海藻類:小松菜1/4束100g→170mg、乾燥ヒジキ10g→100mg
    ※耐容上限量 男女ともに2500mg/日

まとめ

  • バランスよい食事風景
  • 主食主菜副菜の揃ったエネルギーおよび栄養素をバランス良く摂取することが基本であり、何かに偏って摂取することによって耐用上限量を超えてしまうかもしれません。特に避けるべき食品はありませんが健康被害を防ぎ、生活習慣病の重症化を防ぐために適正体重の維持や運動療法なども取り入れましょう。

【参考文献】
日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書
・臨床栄養 January 2025 vol.146 No.1
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版