ドクターコラム

冷えと漢方

内科 科長/ 漢方外来 松元 かおり

掲載日:2023年10月25日

  • 冷えと漢方
  • 「冷え」は冬に特有のものだと考えがちですが、近年、エアコンの普及や過度な冷房使用などにより、夏場でも冷えを感じる人が増えています。

    電車やバスなどの冷房がつらい、職場が寒くて夏でもひざ掛けが手放せない、スーパーの冷蔵品、冷凍品売り場で冷えてしまってゆっくり買い物ができないなどなど、心当たりのある方もいるかもしれません。

漢方外来でも季節を問わず、また年齢や性別を問わす冷えを訴える方は多くなっています。

冷えは万病のもと

漢方では「冷えは万病のもと」とまで言われるほど、冷えは様々な症状の原因やその悪化、慢性化の原因になると考えます。

実際に冷えを改善することで同時に頭痛、肩こり、腰痛、手足のしびれや痛み、月経不順、月経困難症、便秘、下痢、頻尿、睡眠障害、倦怠感などのさまざまな症状が改善されることも多くみられます。

冷えの養生について

冷えに対しても、効果のある漢方薬を使うことはもちろん有効ですが、漢方では「養生(ようじょう)」といって、日常生活上の注意も大切と考えます。健康を維持・増進するために、また病気にかからないように、食事や運動など生活上の注意を守って過ごすことを漢方医学では養生といい、とても重要とされています。冷えに対しても養生、日常生活の中のさまざまな要素を見直すことが大切です。

  1. 食事に気を付ける
    食事は生のものや冷たいもの、体を冷やす食べ物はなるべくとらないようにして、温かいものや体を温めるものをとるようにする。また食べ物は加熱すると性質が変わるため、火を通して食べるようにする。
  2. 運動を行う
    ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動やストレッチは血流を改善し、筋肉をつける運動は熱の産生が増える。
  3. 服装に注意する
    服装は薄着など冷えやすい服装をしない、腹巻やカイロなどを使ってお腹を温める、締め付けの強い衣服は血流を妨げるので避ける、首や足元から冷えるので気を付ける(マフラー、スカーフ、レッグウォーマーなどの活用も)。
  4. 入浴を活用する
    入浴はシャワーですませず、38~40℃のぬるめのお湯の浴槽でゆっくり温まる。半身浴や足湯を活用する。

冷えのある方はできることから生活に取り入れてみるのもよいと思います。

身体を温める食べ物と冷やす食べ物(参考)

  1. 身体を温める食べ物
    くり、もも、ライチ、ナツメ、クルミ、ザクロ、餅米、羊の肉、根菜類(かぶ、ごぼうなど)、納豆、南瓜、生姜、ネギ、らっきょう、ニンニク、タマネギなど
  2. 身体を冷やす食べ物
    キウイ、マンゴー、スイカ、柿、梨、きゅうり、ナス、トマト、セロリ、ほうれん草、レタス、小麦、そば、豆腐、ビール、牛乳、緑茶など

冷えのタイプ

漢方では冷えをいくつかのタイプに分けて、症状はもちろん、タイプを考慮して漢方薬を使います。

  1. 全身が冷えるタイプ
    主に新陳代謝や消化機能の低下によるエネルギー(※「気」)不足による。
  2. 手足が冷えるタイプ
    主に血の巡りが悪いことによる。
  3. 上半身は熱く下半身は冷える(冷えのぼせ)タイプ
    主に血やエネルギー(※「気」)の巡りが悪いことによる
  4. ストレスで冷えるタイプ
    主にエネルギー(※「気」)の巡りが悪いことによる
※漢方では、生命活動を営むエネルギーのことを「気」といいます。イメージは元気の「気」です。

漢方では、体を温める薬があり、冷えに対する様々な漢方薬が使われています。

冷えといっても人それぞれタイプや症状も異なるので、漢方薬での治療を希望される方は漢方外来などで相談していただければと思います。