ドクターコラム

春の不調と自律神経の乱れ~漢方で整える心と体~

内科 医長  濱口 卓也

掲載日:2026-4-24

春は気温や日照時間の変化が大きく、私たちの心身に影響を及ぼしやすい季節です。東洋医学では「春は肝が高まる」とされ、肝は気の巡りや精神の安定、自律神経の働きと深く関わると考えられています。このため春は、気の巡りが乱れやすく、不安感やイライラ、落ち着かなさといった症状が現れやすい時期といえます。

  • 春のイメージ
  • 加えて4月は、新年度の始まりに伴い、異動や新入職員の受け入れなど環境の変化が重なる時期です。ご自身では大きなストレスを自覚していなくても、周囲の変化に影響を受け、自律神経のバランスを崩してしまうことがあります。その結果、気分の落ち込み、睡眠の質の低下、胃腸症状など、さまざまな不調として現れることがあります。さらに、寒暖差や気圧変動も自律神経に負担をかける要因となります。

こうした春特有の不調に対して、漢方薬は体質や症状に応じて心身のバランスを整える治療法の一つです。例えば、不安感や喉のつかえ感(いわゆる「梅核気(ばいかくき)」)がある場合には半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が用いられ、気の巡りを改善しながら緊張を和らげます。一方、イライラや怒りっぽさ、神経の高ぶりが目立つ場合には抑肝散(よくかんさん)が選択され、過剰な興奮を鎮める働きがあります。また、気分の落ち込みやイライラなど情緒の揺らぎを伴う場合には、加味逍遙散(かみしょうようさん)が適することもあります。

日常生活においては、朝に日光を浴びて体内時計を整えること、適度な運動や深呼吸により気の巡りを整えること、十分な睡眠を確保することも重要です。加えて、規則正しい食事やカフェインの摂りすぎや飲酒を控えることも、自律神経の安定に寄与します。

春は新たなスタートの季節である一方、知らず知らずのうちに心身へ負担がかかりやすい時期でもあります。無理を重ねる前にご自身の変化に目を向け、早めに対処することが大切です。症状が続く場合には、医療機関への相談もご検討ください。漢方を含めた適切な治療により、より快適に春を過ごす一助となれば幸いです。