掲載日:2025年8月26日
転倒を防ぐために重要なこととは?
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高齢者の転倒は、骨折や寝たきりにつながる重大なリスク要因です。転倒を防ぐためにはバランス能力や足の筋力維持が大切だとよく言われますが、実は「足の指(足趾)」の力が密かに重要な役割を果たしていることをご存知でしょうか。
まず、足の指を曲げる筋肉これを「足趾屈筋(そくしくっきん)」と呼びます。この筋肉は、足の裏を通り、地面をつかむように踏ん張る動きを助けています。私たちが歩いたり、立ってバランスを取ったりするとき、足趾屈筋は地面に足を安定させる役割を担っているのです。
しかし、足趾屈筋は加齢や活動量の低下などで衰えやすく、いつの間にか足の指の力が弱くなっていってしまいます。すると歩行時にしっかり地面を捉えることができず、ちょっとした段差でつまずいたり、滑ったりしやすく、バランスを崩した際にも踏ん張りが効きにくくなってしまいます。
最近の研究では、足趾屈筋の筋力低下が転倒リスクと強く関連していることが分かってきました。また、足趾の力がある人ほど歩幅が広く、バランス能力も高い傾向があることも報告されています。
足趾屈筋は「タオルギャザー」という簡単なエクササイズで十分に鍛えることができます。
自宅で簡単にできる運動「タオルギャザー」
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床にタオルを敷き、足の指だけを使ってタオルをたぐり寄せるだけです。テレビを見ながら、食後に椅子に座って、というように日常生活の中で取り入れやすく始めやすいためおすすめです。
また、普段から足の指を意識して歩く習慣も筋力維持に効果的です。
足の指の筋肉は小さく、目立たない存在ですが、健康寿命を左右する大切な「土台」の一部です。ぜひ足の指にも意識を向けてみて転倒しないよう安全に生活していきましょう。
1. Misu S, Doi T, Asai T, Sawa R, Murata S. Association Between Toe Flexor Strength and Falls in Older Adults: A Prospective Cohort Study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2016;71(9):1235–1240.
2. 鈴木基之 ほか. 足趾把持筋力のトレーニングによる転倒予防の効果. 第28回日本慢性期医療学会誌.
3. 吉田知之. 足趾接地の変化が立位姿勢制御に及ぼす影響. 日本感性工学会論文誌, 2023, 22(3).