広報紙 vol.72しんゆりニュースレター

2024/5/1掲載

消化器外科特集

脳神経内科特集|広報紙

正確な診断と、適切な治療を

  • 新百合ヶ丘総合病院
    脳神経内科部長
    まき ふたば
    眞木 二葉医師
  • 【プロフィール】
    聖マリアンナ医科大学医学部卒業。聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科博士課程修了。聖マリアンナ医科大学脳神経内科助教。聖マリアンナ医科大学講師。2020年より現職。
    日本神経学会神経内科専門医・指導医/日本内科学会総合内科専門医・指導医/日本脳卒中学会専門医・指導医/日本老年医学会老年科専門医/医学博士
  • 脳神経内科では常勤医6人を中心に非常勤医師と協力しながら、日々診療を行っています。私は医大の5年生の脳神経内科の実習で打鍵器(図1)を使ってはじめて腱反射を評価したときに、検査をしなくても患者さんの診察から情報を得て、診断のヒントになることがあるのだということを実感し、感銘を受けて、この脳神経内科という分野を選択しました。脳神経内科の病気には難しい病気も多く、難病といわれるものも含まれます。病気を完治することができなくても、患者さんやご家族の話を聞いて最善の治療やケアを考えていくことは、私の性格にあっていると考えました。

    打鍵器(図1)打鍵器(図1)

    脳神経内科は、脳と神経系に関連する多様な疾患を取り扱います。症状としてはうまく力が入らない、話しにくい、歩きにくい、しびれやめまい、ふらつく、ものが二重に見える、頭が痛いなどたくさんあります。まず、その症状が神経系のどの部位の異常から起きているのかを見極めます。その中で何が原因であるかを特定し、診断していきます。

  • 例えば、脳血管障害:脳梗塞、脳出血など、血管の異常が原因で脳に損傷を引き起こす疾患、神経変性疾患としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、ALSなど、神経細胞の変性が原因のものがあります。

    神経筋疾患:重症筋無力症、筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患など、神経と筋肉に影響する疾患があります。てんかんなどの発作性疾患や髄膜炎、脳炎など、神経組織に影響を及ぼす感染症もあります。これらの疾患に対する治療法にはさまざまなアプローチがあります。例えば、脳梗塞の場合は発症4.5時間以内であれば、投与できる血栓を溶かす作用のあるrt-PAが使用され、パーキンソン病には皮下持続注射などの新しい治療法が出てきました。認知症には新しい点滴治療も可能になりました。さらに、振戦(ふるえ)には集束超音波療法(FUS)などの方法も選択が可能になりました。

    疾患や症状に悩む場合は、一度ご相談いただき、正確な診断を受け、適切な治療法を見つけることが重要です。脳神経内科の分野において、多岐にわたる疾患に立ち向かい、少しでも患者さんの症状が改善できるように、近隣の先生方とも連携をとりながら、地域医療へ貢献していきたいと思っております。

【目次】

脳梗塞

脳梗塞は、脳血管障害の一つであり、血流が途絶えたことによって脳の一部に酸素や栄養素の供給が不足することで起こります。脳梗塞は、早期発見と迅速な治療が重要です。そのため、一般的に使用される早期症状の認識方法として、『顔・腕・言葉ですぐ受診』という、以下のようなチェックポイントがあります(図2)。

  • もし発症したら迅速な受診が人生救う!(参照:日本脳卒中協会)
  • 顔:顔の片側だけが歪んでいるか、微笑んだときに片側の口角が下がっている
    腕:両腕を前方に伸ばした状態で、片側の腕が上がらないか、あるいは落ちている
    言葉:普段と異なる不明瞭な言葉を話しているか、または理解が難しい言葉を話している

これらの症状が発生した場合、急ぐことが重要です。脳梗塞の可能性があると疑われる場合は、すぐに医療機関に連絡し、緊急で救急医療を受ける必要があります。それにより、脳梗塞による深刻な後遺症や合併症のリスクを減らすことが期待できます。多くの方にこのことを知っていただきたいと啓蒙活動にも力を入れています。

脳梗塞の主な原因の一つは、血管内のアテローム(動脈硬化)です。アテロームは、血管内にコレステロールやその他の脂質を蓄積させ、血管の内壁を厚くし、血流を妨げることがあります。このアテロームが動脈を詰まらせたり、血栓を形成したりすることで、脳梗塞が引き起こされます。

また小さな脳血管が閉塞されることで、ラクナ梗塞という、脳の深部に小さな梗塞を引き起こすことがあります。ラクナ梗塞は、高血圧や糖尿病などのリスク因子が関与していることが多く、しばしば特定の神経学的症状を引き起こします。

さらに心原性脳塞栓症は、心臓から脳に至る血管(動脈)に血栓が形成され、それが脳血管に詰まることで発生します。心原性脳梗塞は、心臓疾患(心房細動、心筋梗塞など)や人工弁、心内膜炎などの心臓の異常によって引き起こされることがあります。

予防策としては、健康な生活習慣の維持、定期的な医師の診察、リスク因子の管理が重要です。脳の血管が詰まると、急に手足が動かなくなったり、感覚が麻痺したりします。また、言葉がうまく出ない、他人の話が理解できないなどの症状も出る場合もあります。症状が進むと意識がなくなることもあります。

  • 脳梗塞は早めの受診を!脳梗塞は早めの受診を!
  • 症状が出てから早い時期に、rt-PAという血栓を溶かす薬を注射したり、カテーテルという細い管を詰まった血管のなかに通して再開通させるといった治療(血栓回収療法)をすると後遺症が少なくてすみます。脳梗塞は時間が大切です。早めの受診をお願いします。

パーキンソン病

パーキンソン病は、進行性の神経変性疾患であり、その特徴的な症状は運動障害によって主に表れます。この病気は、脳の黒質という部位でのドーパミン産生が減少することで起きます。ドーパミンは、運動の調節に不可欠な神経伝達物質であり、それが減少することで、身体の運動制御がうまくいかなくなります。パーキンソン病の典型的な症状には、次のようなものがあります。

  • パーキンソン病
  • 静止時振戦・振戦(ふるえ):特に安静時に手や指、足がリズミカルにふるえます。
    筋固縮:筋肉が硬直し、こわばります。
    寡動・無動:日常生活での動作が遅くなり、手足の動きが緩慢になります。
    姿勢反射障害:立位や歩行中に不安定感やバランスが悪くなるなどが生じることがあります。

これらの症状は、日常生活における患者さんの機能や生活の質に大きな影響を与えることがあります。また、パーキンソン病は非運動症状を伴うことがあり、認知機能の低下、うつ病、睡眠障害などの問題も発生します。

パーキンソン病の原因についてはまだ完全に解明されていませんが、遺伝的要因、環境的要因(例えば、農薬や重金属の曝露)、神経毒性物質などの影響が関与していると考えられています。診断は、主に臨床症状に基づいて行われますが、特定の検査が行われることもあります。これにはDATスキャン、MIBG心筋シンチグラフィーなどの画像診断法が含まれます。これらの検査は、パーキンソン病の診断を確定させ、他の神経変性疾患との鑑別に役立ちます。基本的には脳内で減少しているドーパミンを補充する方法を主軸として、外科的治療やリハビリテーションとの組み合わせが重要になってきています。
(眞木医師によるコラムはこちら「この症状はパーキンソン病?パーキンソン病の基礎知識と治療方法について」)

振戦(手のふるえ)の治療

集束超音波療法(FUS)は、振戦治療の画期的なアプローチであり、非侵襲的な治療法として注目されています。この治療法は、超音波を使用して脳内の特定の領域に焦点を当て、その領域を焼灼することでその部位からの異常な神経信号を減少させ、振戦を改善することが可能となります。

  • FUS(集束超音波療法)FUS(集束超音波療法)
  • FUS治療は、外科手術や薬物療法に比べて副作用が少ないことが特徴です。患者さんは通常、全身麻酔や局所麻酔を必要とせずに治療を受けることができ、手術室に入る必要もありません。治療は一般的に頭部MRIのガイド下で行われ、患者さんは意識を保ったままで手術を受けることができます。

  • FUS治療の効果を確認する眞木先生FUS治療の効果を確認する眞木先生
  • この治療法は、薬物療法で効果が不十分である患者さんや手術リスクを避けたい場合に有用です。また、治療後の回復期間が比較的短いこともFUS治療の利点の一つです。

    FUS治療はまだ新しい技術であり、その有効性や安全性についてさらなる研究が必要ですが、当院では200例を越える患者さんたちに行っており、全国でも経験が多い施設の一つです。
    FUS(集束超音波治療)センターはこちら

脳神経内科 医師紹介

脳神経内科 医師紹介ページ

①専門分野/得意な領域 ②卒業大学 ③専門医・指導医・資格等
  1. 長谷川 泰弘(脳卒中センター センター長)
    ①脳神経内科学、脳血管障害 ②鹿児島大学医学部 ③日本神経学会神経内科専門医・指導医/日本脳卒中学会専門医・指導医/日本内科学会認定内科医・指導医/医学博士
  2. 眞木 二葉(脳神経内科 部長)
    ①パーキンソン病、DBS、FUS ②聖マリアンナ医科大学医学部 ③日本神経学会神経内科専門医・指導医/日本内科学会総合内科専門医・指導医/日本脳卒中学会専門医・指導医/日本老年医学会老年科専門医/医学博士
  3. 水越 元気(脳神経内科 部長)
    ①一般神経内科 ②日本医科大学医学部 ③日本神経学会神経内科専門医・指導医/日本脳卒中学会専門医/日本内科学会認定医
  4. 日野 栄絵(脳神経内科 医員)
    ①一般神経内科 ②聖マリアンナ医科大学医学部 ③医学博士
  5. 鏑木 真弓(脳神経内科 医員)
    ①一般神経内科 ②聖マリアンナ医科大学医学部 ③医学博士
  6. 金子 航(脳神経内科 医員)
    ①一般神経内科 ②聖マリアンナ医科大学医学部 ③なし

[非常勤医師]

  1. 大澤 美貴雄
  2. 矢﨑 俊二
  3. 高石 智
  4. 鈴木 祐
  5. 武井 悠香子
  6. 中上 徹
  7. 畠 星羅
  8. 白石 眞
  9. 澤田 和貴
  10. 山野 嘉久