薬剤科コラム

薬と食べ物の相互作用~飲み合わせに注意したい薬剤とは~

薬剤科

2022/10/19掲載

はじめに

新しい薬が始まったときに、今飲んでいる薬との飲み合わせを気にされる方もいらっしゃるかと思います。薬と食べ物、食品には飲み合わせの悪いものがあるというのはご存じでしょうか。

  • 薬と食事の相互作用
  • 薬と食事の相互作用は、単に食事により薬の吸収が促進されたり抑制されたりするだけでなく、食事によって薬の分解・吸収の過程に影響することにより副作用の増強や、効果の減弱をもたらすことが問題です。

    今回はこのような薬と食事に関して、相互作用が問題となる組み合わせに関してお話ししていきたいと思います。

① 空腹時に服用する薬剤

腸管内で食物に含まれるカルシウムなどの金属イオンと薬剤がキレート結合を起こし、吸収が妨げられるためテトラサイクリン系抗菌薬や、ビスホスホネート製剤(骨粗鬆症治療薬)服用後2時間は食事、牛乳などの乳製品の摂取を控えます。

他にも、食事により薬剤の吸収が低下または血中濃度の低下することがあるため空腹時に内服する薬があります。薬剤により食事までの内服時間が異なることがあり注意が必要です。

代表的な薬剤

リファンピシン(結核治療薬)、エンテカビル(B型肝炎ウイルス治療薬)、エルトロンボパクオラミン(レボレード錠🄬など血小板減少症治療薬)、イトラコナゾール内用液(抗真菌薬)

② 食直前に内服する薬剤

食事からの成分の吸収を阻害する場合、あるいは食事による血糖上昇を抑えるような血糖降下薬は食直前に内服します。

代表的な薬剤

塩酸セベラマー(レナジェル錠®、フォスブロック錠®など高リン血症治療薬)、ボグリボース、ミチグリニド(血糖降下薬)

③ 食直後に内服する薬剤

脂溶性の高い薬剤は小腸から吸収されやすく、リンパ管系を通して吸収されます。また、胃に対する刺激作用を軽減するために食直後に内服させる場合があります。

イコサペント酸エチル(脂質異常症治療薬)、イトラコナゾールカプセル(抗真菌薬)、消化酵素複合剤、フルスルチアミン(アリナミンF糖衣錠®、ビタノイリンカプセル®などビタミンB1)

④ その他注意が必要な食事と薬剤の組み合わせ

  1. チラミン含有食品(チーズ、レバー、ワインなど)×イソニアジド(抗結核薬)
    リネゾリド(ザイボックス錠🄬など抗MRSA薬)
    セレギリン(エフピーOD錠®など抗パーキンソン病薬)
    →薬物がチラミンの分解を妨害するため、血圧上昇、動悸などが現れることがあります。
  2. ビタミンK含有食品(納豆、クロレラ、脂肪乳剤)×ワルファリン(抗凝固薬)
    →拮抗(きっこう)作用によりワルファリン効果が減弱することがあります。
  3. グレープフルーツ×カルシウム拮抗薬
    →グレープフルーツに含まれる成分(フラノクマリン類)が薬物代謝を阻害し、薬物の血中濃度を上昇させます
  4. カフェイン×テオフィリン(気管拡張薬)
    →薬物代謝を抑制し、中枢神経刺激作用(神経過敏、不眠など)が増強することがあります。
  5. サプリメントなど健康食品(セントジョーンズワート、イチョウ、カンゾウ、ビタミン)×免疫抑制剤、抗不整脈薬、抗てんかん薬、利尿薬など
    →薬物代謝に影響し、薬の効果が減弱するものや薬の効果増強により重大な副作用が起こることがあります。

上記の他にも、炭酸飲料や清涼飲料水などの酸性飲料は、薬剤によっては相互作用があり、吸収過程に影響を起こします。また、オレンジジュースなどの酸性飲料と抗菌薬では苦みが増すこともありますので、子供に服用させる場合に注意が必要です。

  • お薬手帳
  • 薬は医師の指示に従い、用法・用量をしっかり守り服用することが重要です。複数の病院やクリニックにかかっている場合は特に注意が必要です。新しい薬が開始した際はお薬手帳を持参し、薬剤師に食品などとの相互作用はないか必ず確認するようにしましょう。

    また、複数の医療機関から薬を処方してもらう場合は1冊のお薬手帳にまとめて管理をするように心がけてください。
    気になることやわからないことがあれば、遠慮なく相談してください。

【参考文献】
・岡山医学会雑誌 第127巻 薬物相互作用(34―食事と薬の薬物相互作用)
・公益財団法人長寿科学復興財団 健康長寿ネット