2021年6月掲載 薬剤科コラム

高血圧と循環器病の予防

薬剤科(高血圧・循環器病療養指導士) 堀池ちひろ

長かった梅雨もようやく明け、猛暑の季節となりますが、いかがお過ごしでしょうか?
新型コロナウイルス感染症もいまだに収束の目途が立たず、不安な日々を過ごされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

コロナ禍で「不要不急の外出」を控えることは重要ですが、一方で「巣ごもり」による健康被害も問題視されるようになってきています。

高血圧と循環器病の予防

ここでは高血圧を中心とした生活習慣病予防についてお伝えします。

どうして血圧が上がるの?

高血圧とは日本高血圧学会の基準では、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上と定義されています。

高血圧はさまざまな生活習慣と関連があります。主要な原因として以下のものが挙げられます。

  1. 肥満
  2. 身体活動の不足
  3. ナトリウムの過剰摂取
  4. カリウムの摂取不足
  5. アルコールの多飲
  6. 情動ストレス
  7. 短い睡眠時間や睡眠障害

高血圧患者はこのような生活習慣を是正することで高血圧の改善が期待できます。
※たばこは高血圧の原因とはみなされてはいませんが、喫煙関連がんや虚血性心疾患、脳卒中のリスクを高め、くも膜下出血や不整脈、閉塞性動脈硬化症などの原因となります。

高血圧が続くとどうなるの?

動脈硬化が進み、脳卒中や心疾患、慢性腎臓病などの重大な病気につながります。

どうすれば血圧が下げられる?

①減量

肥満は高血圧のみならず糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、冠動脈疾患、脳梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患の主要な発症要因となります。また、それぞれと合併し各疾患の重症化の原因ともなり得ます。

減量法 効果や留意点
①食事療法 肥満を解消するための基本的な療法。摂取エネルギー量を制限するが、炭水化物、たんぱく質、脂質の摂取バランスを維持し、ビタミンやミネラルも必要量確保できるようにする。
②運動療法 有酸素運動は上記疾患の発症予防効果をもたらす。無酸素運動(筋力トレーニング)は減量中に筋肉量の減量を抑制し、血圧や代謝を改善する。
③行動療法 欠食、夜食摂取、早食いなど肥満の原因となる食行動を意識化させて改善する方法。
④薬物療法 ①~③を行っても有効な減量が得られないか、合併症の改善が認められない高度肥満症例に対して、食欲抑制剤の投与を考慮する。副作用のリスクがある。
⑤外科療法 胃の容量を小さくする手術を行い、物理的に過食ができないようにする。入院が必要。

②減塩(減ナトリウム)・増カリウム

減塩量が大きいほど血圧低下は大きく、高齢者では調整能力が低下しているため若年者よりも減塩による効果は大きく得られます。減塩すれば体液の貯留が減り、むくみも改善します。
カリウムはナトリウムが腎臓で再吸収されるのを防ぎ、排泄を促すため、塩分の摂りすぎを調節する役割があります。

③節酒

飲酒のパターンは大きく分けて、習慣性飲酒(晩酌や寝酒など)と機会飲酒(宴会や会合などの機会がある時に飲酒する)に分類されます。

お酒が大好きでやめられない、という方もいらっしゃるでしょう。
ご安心ください、健康増進法に基づき2013年に策定された「健康日本21」においては、「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで約20g程度である」と示されています。

酒の種類 飲み方 度数 純アルコール量
ビール・発泡酒 350ml 5% 14g
ウイスキー シングル 30ml 43% 10g
焼酎 25度 180ml(1合) 25% 36g
日本酒 徳利・ワンカップ 180ml(1合) 15% 22g
サワー・酎ハイ 350ml 5% 14g
ワイン グラス 120ml 12% 12g
梅酒 シングル 30ml 13% 3g

※純アルコール量(g)=酒の量(ml)×酒の度数(%)×0.8÷100

いつも飲みすぎてしまうという方はまずは1日20gを目安に減酒してみましょう!

④運動

運動の効果は血圧を是正するだけではなく、筋力の増加などの身体的効果、脂質・糖代謝改善、心血管病の二次予防効果など多岐にわたります。

運動の基本は有酸素運動とレジスタンストレーニング(筋トレ)に分けられます。ここでは、コロナ禍でも行える簡単な運動を紹介します。

ウォーキング

  • 日常生活の基本となる運動であり、道具を必要としない取り組みやすい運動です。早朝や深夜、空腹時、食後30分以内は避け、平坦なコースで無理のない距離で行います。

  1. 顎を引いて、首と背筋を伸ばし、軽く胸を張る。
  2. 視線は水平にする。
  3. 腕は軽く曲げ、力を抜き自然な感じでリズミカルに振る。
  4. ややつま先を上げて、踵から地面に着く。
  5. つま先と膝は進行方向に向け、平行した二本の直線状を歩くようにまっすぐ歩行する。

ステップ運動

  • 10~20cmの高さの台を昇降する省スペースでできる有酸素運動および軽強度レジスタンストレーニングです。有酸素運動にスクワット的要素も加わり、筋力アップとバランス感覚の改善効果があります。

⑤薬物治療

食生活を見直したり、適度な運動を行っても血圧の改善がみられない場合は薬物治療へ移行します。

最後に

ここで紹介したものはほんの一部です。
まずはできるところから少しずつ始めてみませんか?
健康のままでコロナ禍を乗り切りましょう!
ご不明な点がありましたら、お近くの高血圧・循環器病療養指導士までお尋ねください!

【参考文献】
日本高血圧学会、日本循環器病予防学会/高血圧と循環器病の予防と管理