2020年12月掲載 薬剤科コラム

骨粗鬆症検診を受けよう

薬剤科 宇賀神 咲美(骨粗鬆症マネージャー)

  • 骨粗鬆症検診を受けよう

  • 日本では、人口の急速な高齢化に伴い、骨粗鬆症の患者さんが年々増えています。
    その数は、現時点で1300万人と推測されていますが、その内治療を受けているのは約200万人と、わずか20%程度です。
    最近骨粗鬆症についての関心が高まりつつありますが、疾患や治療に対する理解は、まだ不十分といえます。
    そこで今回は骨粗鬆症と検診についてお話しします。

骨粗鬆症とは

WHO(世界保健機関)は「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大する疾患である。」と定義しています。

つまり、骨粗鬆症は単なる骨の老化現象ではなく、骨の密度と質が低下した病気であり、それに伴う骨折は合併症といえます。

  • 正常な背骨の断面図正常な背骨の断面図

  • 骨粗鬆症の背骨の断面図骨粗鬆症の背骨の断面図

成長期に骨はカルシウムを蓄積し、20歳までに最大骨量に到達します。その後、骨量は比較的安定に推移しますが、年齢とともに少しずつ減っていきます。

骨量

また、人間の骨は破骨細胞によって古い骨が壊され(骨吸収)、骨芽細胞によって新しい骨が作られ(骨形成)、絶えず新陳代謝を繰り返しています(骨リモデリング)。

加齢、生活習慣、女性の場合は閉経など、様々な要因で骨形成と骨吸収のバランスが崩れ、骨吸収が優位な状態が続くことが、骨粗鬆症の一因とされています。

骨リモデリング

骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症はサイレント・ディジーズ(静かな病気)といわれるように、深く静かに進行していきます。
自覚できるような症状が表れるのは、更年期を過ぎてからです。

骨粗鬆症の症状

脆弱性骨折

骨粗鬆症が引き起こす脆弱性骨折とは、骨強度が低下して起こる骨折で、「微細な外力によって引き起こされる骨折」と定義されています。
微細な外力とは、立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力のことです。

脆弱性骨折は、椎体(背骨)、大腿骨近位部(足の付け根)、橈骨(手首)、上腕骨近医部(腕の付け根)に多く見られます。特に大腿骨近位部の骨折は、歩行能力が低下し、寝たきりになる患者さんが半数以上います。

現在寝たきりの原因の3位が骨粗鬆症による骨折です。健康寿命を延ばすためにも、骨粗鬆症の予防と治療は大切であるといえます。

骨粗鬆症検診について

骨粗鬆症による骨折を減らす為には、骨粗鬆症検診が大切です。2015年度の骨粗鬆症検診受診率は全国平均で5.0%と少なく、 神奈川県は0.9%と、下から3番目です。

骨粗鬆症検診の受診率が低い地域ほど、大腿骨骨折を起こしやすく、介護が必要になる傾向にあることが分かっています。

骨粗鬆症検診の受診率

検診の内容

市町村の検診では、生活習慣や食事内容を書き込む問診票の提出と、骨量検査を主に行います。

骨粗鬆症の有無を検診したのち、正常者には簡単なお話を、要指導者には栄養・運動指導を、要精検者には医療機関を紹介するのが一般的です。

受診年齢について

女性では50歳くらいから骨量が低下し始めるので、閉経後は原則1年に1回測定すると良いです。男性は長期の寝たきりや、胃腸障害などがなければ、70代まで測定の心配はありません。

また、骨量は20~40代まであまり変化しないので、その間に若い時の骨量を知っておくことも大切です。

受診方法

現在国が行っている公的な検診は、40~70歳(5歳刻み)の女性を対象にした節目検診があります。
それ以外の方も検診を受けられるよう、多くの市町村では独自の骨粗鬆症対策を行っています。

まずはお住まいの近くの保健センターや保健所に問い合わせてください。また、民間の医療機関でも、測定機器を置いてある所では、骨量の測定ができます。
※当院でも骨密度検査を行っています。
定期的に骨粗鬆症検診を受けて健康寿命を延ばしましょう。

【参考文献】
・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015
・公益財団法人 骨粗鬆症財団ホームページ
・いいほね iihone.jpホームページ