2019年12月号 薬剤科コラム

処方箋は確認していますか

薬剤科 中島 祐貴

  • 処方箋は確認していますか
  • 医療機関を受診された際に、多くの方が処方箋をもらい保険薬局に提出していると思います。では、渡された処方箋の内容をじっくり見たことはありますか。意外に確認せずにそのまま提出している方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回は処方箋に関して知っていただきたいことを紹介したいと思います。

1.処方箋の使用期限は、「4日以内」

処方箋には、「処方箋の使用期限」と書かれている欄があります。ほとんどの場合、日時が書いていないのでいつまでも有効であると勘違いしてしまいそうですが、これは不備でもなく、小さい文字で「記載がない場合は交付日を含めて4日以内」になっています。

これは土・日・祝日、年末年始、GW等の長期連休も含めてです。月曜日が祝日の場合、金曜日に処方箋をもらって翌週の火曜日にもっていくと5日になるため受付できません。長期連休の際はより注意が必要になります。有効期限を過ぎると原則受付できず医療機関の再受診になりますので、空欄の場合は4日以内に必ず提出するとともに、余裕をもって早めの提出を心がけるようにお願いいたします。

2.ジェネリック医薬品(後発医薬品)に変更できない!?

  • ジェネリック医薬品(後発医薬品)に変更できない!?
  • ジェネリックへの変更は患者さん自身が選択できますが、下記の理由等により変更できないこともあります。また、薬局により在庫がない場合や取り扱いメーカーが異なる場合もあるため、薬局でよく相談してみましょう。

理由 ・特許切れになっておらず、ジェネリック医薬品がない場合
・医師の指示により処方変更不可になっている場合
・先発医薬品と適応症が異なるため変更できない場合

3.処方日数が制限される医薬品

下記の通り、医薬品の種類により処方できる日数が制限される医薬品があります。ただし14日分制限の医薬品は、例外で特殊事情がある場合に限り必要最小限の範囲において30日分まで処方が可能になることもあります。特殊事情には、海外渡航、年末年始、ゴールデンウィークがあり、「国内旅行やお盆休み」は含まれません。特殊事情に当てはまるとしても必ずしも処方できるわけではありません。制限日数のある医薬品の詳細と併せて、ご不明な点は主治医、薬剤師へご相談ください。

医薬品の種類 制限日数
新薬 14日
向精神薬 14日 30日 90日
医療用麻薬 14日 90日

4.備考欄にも注目

備考欄に「高一」、「高7」、「6歳」等の記載がある場合があります。高校何年生だったり高齢者は1割負担というわけではなく、詳細は下記の通りになります。

種類 詳細
高一 高齢受給者又は後期高齢者医療受給対象者であって一般・低所得者の患者の場合
高7 高齢受給者又は後期高齢者医療受給対象者であって7割給付の患者の場合
6歳 未就学者(いわゆる乳幼児)の患者の場合

分かりやすくまとめると、基本70~74歳は2割負担、75歳以上は1割負担(一定以上の所得がある場合は3割負担)、未就学者(6歳に達する日以降の最初の3月31日まで)は2割負担ということになります。ただし、公費負担や医療費助成等により負担金が異なる場合もありますので、ご不明な方は、一度確認してみてはいかがでしょうか。

5.公費負担医療制度は多数

公費負担のない患者さんは、公費負担者番号の記載がなく馴染みがないと思います。その種類は様々で一部負担金がある場合や全額公費負担になる場合もあります。処方箋に記載されている番号で、患者さんがどの公費負担医療制度を使用しているか、またどの社会保険制度を利用しているか知ることができます。簡単に例として挙げると下記の通りになりますが、ここでは書ききれないほどの公費負担医療制度がありますので、詳しくは各都道府県、市町村の担当窓口にてご確認ください。

法別番号 公費負担医療制度の区分
10 感染症の予防及び感染症患者に対する医療に関する法律による、
結核患者の適正医療
12 生活保護法による医療扶助
23 母子保護法による養育医療
法別番号 社会保険制度の区分
01 政府管掌健康保険(日雇特例被保険者の保険を除く)
06 組合管掌健康保険
31 国家公務員共済組合

もう一つお伝えしたいことがあります。病院で保険証を提出しているため薬局では提出不要と思っている方も多いかもしれませんが、上記の番号等は処方箋との整合性を確認し、適正に保険請求しなければいけません。下記の通り法律でも定められているため提出を依頼された場合は、ご協力をお願いいたします。

健康保険法施行規則(処方せんの提出)

第54条 法第63条第3項 各号に掲げる薬局(以下「保険薬局等」という。)から薬剤の支給を受けようとする者は、保険医療機関等において、診療に従事する保険医又は医師若しくは歯科医師が交付した処方せんを当該保険薬局等に提出しなければならない。ただし、当該保険薬局等から被保険者証の提出を求められたときは、当該処方せん及び被保険者証を(被保険者が法第74条第1項第2号 又 は第3号 の規定の適用を受けるときは、高齢受給者証を添えて)提出しなければならない。

6.再利用できる処方箋

一般的にイメージできる再利用のリフィル処方箋(一定期間内に反復使用できる処方箋)とは異なりますが、1つの処方箋を分割して調剤できることもあります。分割調剤されている方はほとんどいないと思いますが、今後はセルフメディケーションのより一層の普及を進める中でリフィル処方箋と含めてピックアップされてくるかもしれません。

分割調剤の主な内容は、「薬剤師のサポートが必要」と医師が判断した場合等に行われ、処方された日数の最大3回分の処方箋が発行され、以下の3つの場合に限り行われます。
長期処方されたが、保存が困難である場合
ジェネリック医薬品を初めて使用する際に短期間試してみる場合
医師の指示による場合(薬剤師のサポートが必要と医師が判断し指示した場合)

分割調剤の処方箋を渡される場合は、処方箋とは別に「分割指示に関わる処方箋(別紙)」も渡されますので、忘れずに両方を薬局まで提出してください。ご不明な点がありましたら、薬剤師へご相談ください。

7.処方箋は保険薬局であればどこに提出しても受付可能です

保険薬局であればどこでも提出可能です。医薬品の在庫の関係もありすぐに調剤できないこともありますので提出する際は薬剤師へご相談ください。もし、かかりつけの薬局があればそちらに一元化して提出し調剤してもらいましょう。お薬手帳も忘れずに持参していただき、可能であれば血圧手帳、糖尿病連携手帳等も確認させていただければ、薬学的管理にも役立ちますのでご協力をお願いいたします。

8.スマートフォンやFAXを用いて待ち時間の短縮ができることも

  • スマートフォンやFAXを用いて待ち時間の短縮ができることも
  • 一部薬局では待ち時間短縮のため、処方箋内容を先に調剤薬局へお知らせすることで待ち時間を短縮できるサービスを行っている薬局もあります。店舗により異なることがありますので、各店舗で相談してみましょう。ただし、処方箋の原本は使用期限内に提出しなければなりませんので、利用される際はご注意ください。

9.処方箋はすべて確認しています

処方箋内容に疑わしい点があれば処方医へ確認してからでなければ調剤することができないように法律で定められています。

当院では、病院・薬局間の取り決めで、一部の内容に限り疑義照会不要で処方内容を変更できるようにし、待ち時間短縮や薬局薬剤師の業務負担を軽減し、より良い服薬指導を提供できるように行っています。待ち時間の間に薬剤師が何を行っているかわからないと疑問に思っている方もいらっしゃるかと思います。医薬品には腎機能、肝機能、年齢、体重等により薬剤の用量調整が必要なることが多く、治療方法等によっても用法用量等が異なることがあります。それらを確認しより安全に服用できるように確認を行っています。一部医療機関では、処方箋に血液検査の結果や抗癌剤等の治療内容が記載されていることもありますので、記載されている場合は併せてご提出をお願いいたします。

10.薬局により金額が異なる!?

薬局により診療報酬に差があるため支払金額が多少異なることもあります。

また近年は、24時間営業や休日も開局していることもあり患者さんがより便利に来局できるようになってきています。しかしながら、夜間(平日19時以降、土曜日は13時以降)、休日に処方箋を受付する場合は、40点加算されます。支払いは多少増えてしまうことになりますが、支払いだけでなくこれらのサービスも含めて自分に合った薬局を選ぶことがなりよりも大切です。ぜひ、かかりつけ薬局を作ってみてください。

最後に

処方箋は公文書です。コピーや偽造は違法行為になります。

また、薬剤師法第21、24条に記載があるように疑わしい点があれば確かめなければならず、正当な理由があれば拒むこともあります。今回紹介した内容も含め薬剤師の職務についてもご理解していただければ幸いです。

薬剤師法

  • 第二十一条 調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあった場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。
  • 第二十四条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。

【参考】
薬剤師法
健康保険法
厚生労働省保険局医療課医療指導監査室「保険調剤の理解のために」
東京保険医協会「処方箋様式」