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NO.152019年5月掲載

点眼薬について

薬剤科 上野 愛美

春になると花粉の飛散量が増えてきます。眼のかゆみや充血といった症状を呈する花粉症の治療にアレルギー点眼薬を使用する方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、点眼薬に関連する注意点ついてご説明します。

眼の構造と点眼薬

点眼薬について
図1 眼の構造と涙液の流れ

眼~口腔までは、「①涙点→②涙小管→③涙のう→④鼻涙管→⑤鼻粘膜→⑥口腔内」というように一本の管でつながっています(図1)。そのため、点眼薬によっては、口腔内へ移行して点眼薬の成分が内服薬同様に吸収されて全身作用を示してしまうことがあります。そのため、緑内障の点眼薬成分の中には、心臓の拍動数を抑制したり、気管支を収縮させる働きを持つものがあり、まれに「脈が遅くなる」・「息苦しい」といった症状を呈することがあります。心臓や呼吸器に病気を抱えている方が使用する場合には注意が必要となります。

点眼薬のさし方について

点眼薬のさし方について
図2 日本眼科医会

誤った方法で点眼薬を使用し続けると、点眼薬の効果が十分に発揮されないばかりか、点眼薬が汚染されるといった問題が引き起こされる可能性があります。この点眼薬の汚染問題を解消するための点眼テクニックがあります。

今回は、『げんこつ法』という手技(テクニック)について御紹介します。まず、親指を中に入れてげんこつをつくります。そのげんこつを下まぶたにあてて口の方向に引っぱり、点眼薬を持った手をげんこつの上にのせて点眼します(図2)。こうすることで、汚染のリスクである点眼瓶の先端が眼瞼周囲(眼の周り)や睫毛に接触するリスクを回避することができるようになります。

また、点眼薬をさした後、静かにまぶたを閉じて、まばたきをしないで約1分間眼をつぶることも効果的です。こうすることで、点眼薬成分が眼内に吸収されやすくなります。点眼後に軽く目頭を押さえることも有効ではありますが、眼を手術した後の場合では、その部位によって、目頭を押さえることで傷口が開いてしまうこともあるため瞼を閉じるだけにしましょう。

点眼薬のさし方について
図3 点眼薬と結膜嚢
(参天製薬HPより抜粋)

また、点眼薬を2滴以上さすことで、点眼薬が結膜嚢(図3)に入りきらなくなり、点眼薬は目からあふれたり、鼻涙管を経て全身へ行き渡りやすくなります(図1)。その結果、先に述べたように、点眼薬の全身作用が増えるきっかけとなります。

他にも注意すべき点として、以下のようなものが挙げられます。
(1)1日の点眼回数は医師の指示にしたがうこと。
(2)あふれた点眼薬は、眼周囲の皮膚疾患である眼瞼炎(眼周囲の炎症)の原因になることもあるため清潔なガーゼやティッシュで拭き取ること。
(3)点眼後すぐにまばたきをすると、まばたきがポンプの作用をして鼻から点眼薬が流れ出してきたり、口の中で苦味を感じたりすることがあります(図1)。

その結果、点眼薬が結膜嚢内にとどまる時間が短くなり、点眼薬の効果が弱くなることがあります。そのため、点眼直後はなるべく瞬きはしないこと(先に述べた閉眼をするとよいでしょう)。

点眼薬の間隔について

複数の点眼薬を使用する際、間隔をあけずに続けて点眼すると、先に使用した点眼薬が後から使用した点眼薬によって鼻やのどに押し流されたり(図1)、成分同士が反応しあったりして、効果に影響が出ることがあります。にこれらを防ぐために、一般的に5分間以上の間隔をあけて点眼することがすすめられています。

しかしながら、点眼薬の中でも、点眼後に涙液と混ざることでゲル化する「チモプトール®XE点眼液」や、点眼後に眼の表面の熱によってゲル化する「リズモン®TG点眼液」は10分間以上の間隔をあける必要があります。

点眼をさす順番について

基本は医師の指示に従いますが、指示がない場合には点眼薬の剤形(特徴)によって点眼する順番が変わってきます。点眼薬の剤形には「①水溶性点眼液 ②懸濁(けんだく)性点眼液 ③油性点眼液 ④ゲル化点眼液 ⑤眼軟膏」があります。 点眼をする順番は①→⑤の順になることが多いですが、これら点眼薬の剤形と特徴を下表にお示しします。

点眼薬の剤型 特徴と代表的な点眼薬の例

① 水溶性点眼液


一般的な点眼薬で市販の点眼薬はこれに該当するものが多い。
・クラビット®点眼液0.5%(抗菌薬)
・ヒアレイン®点眼液0.1%(ドライアイ治療薬)
クラビット®点眼液、ヒアレイン®点眼液

② 懸濁性点眼液


水に溶けにくく吸収されにくい。そのため、「点眼する前によく振りましょう」といった注意喚起がされることが多い。
・カリーユニ®点眼液0.005%(老人性白内障治療薬)
・フルメトロン®点眼液0.1%(ステロイド抗炎症薬)
カリーユニ®点眼液、フルメトロン®点眼液

③ 油性点眼液


効果発現が緩やかで作用時間が長い。有効成分が水をはじきやすく、他の点眼薬の吸収を阻害してしまうことがある。
【現在該当品はありません】

④ 点眼後ゲル化する薬


ゲル化する基剤を配合することで結膜嚢内の滞留時間を延長させる。 他の点眼薬に影響を及ぼす可能性があるため、点眼後は10分以上の間隔をあけることが必要。
・チモプトール®XE点眼液0.25% (緑内障治療薬)
・チモプトール®XE点眼液0.5%(緑内障治療薬)
・リズモン®TG点眼液0.25%(緑内障治療薬)
・リズモン®TG点眼液0.5%(緑内障治療薬)
・オフロキサシン®ゲル化点眼液0.3%(抗菌薬)
チモプトール®XE点眼液リズモン®TG点眼液、オフロキサシン®ゲル化点眼液

⑤ 眼軟膏


水溶性点眼剤より効果発現が緩やかで長いため最後に塗布または、点眼する。
水をはじきやすいので、眼軟膏の後に水溶性点眼剤を点眼した場合には、その効果が発現しない可能性がある。
・フラビタン®眼軟膏(角膜炎・眼瞼炎治療薬)
・エコリシン®眼軟膏(抗菌薬)
フラビタン®眼軟膏(角膜炎・眼瞼炎治療薬)、エコリシン®眼軟膏(抗菌薬)

他にも点眼薬をさす順番について影響を与えるものには以下のようなものがあります。
(1)点眼薬が複数処方された場合には、よく効かせたい重要な点眼薬を後に使用する。(最も効果を期待したいものが先に洗い流されやすいため) (2)pHが異なる薬剤が複数処方された場合、刺激の少ない点眼薬を先に使用する。(涙のpHは7~7.4であるため、中性に近いものを先に点眼した方が刺激が少なく涙も少なくて済む)

点眼薬の保存について

通常、点眼薬は室温保存で問題ありませんが、なるべく直射日光の当たらない涼しい場所に保存するようにしましょう。窓際や車の中などは直射日光が当たったり、温度が高くなりやすいので避けましょう。

点眼瓶に「冷所」「溶解後冷所保存」「10度以下で保存」等の記載があるものは、冷蔵庫で保存する必要があります。凍結させないような注意が必要です。また、点眼後はしっかりふたをして、袋(投薬袋など)に入れて不潔にならないよう注意しましょう。袋には遮光効果があるものがあります。

他にも、開封後の点眼薬の使用期限は約1ヵ月なのでそれを超過していた場合には迷わず廃棄するようにしましょう。

コンタクトレンズと点眼薬について

コンタクトレンズは、「ハードコンタクトレンズ」と「ソフトコンタクトレンズ」の2つに分類されます。

一般的にハードコンタクトレンズの場合には、コンタクトレンズを装着したままで点眼をすることができます。しかしながら、ソフトコンタクトレンズの場合、人工涙液の点眼薬以外を点眼する際にはコンタクトレンズを外す必要があります。

点眼薬には防腐剤が含まれていることが多く、コンタクトレンズは「防腐剤」を吸着してしまいレンズの寿命を縮めてしまう可能性があります。そのため、点眼時にはコンタクトレンズを外す必要があります。また、点眼後すぐにコンタクトレンズを装着するのではなく、点眼後5分以上間をあけてコンタクトレンズを装着することが望ましいです。

まとめ

点眼薬の品質を維持しつつ、効果を十分に発揮させる方法として、代表的なげんこつ法を紹介させていただきました。また、眼の生理解剖的な側面から、点眼薬の効果減弱防止の方法や、望ましくないことの注意点等をお示ししました。

点眼薬の保存方法、コンタクトレンズ装用者向けの注意点についてもご説明しました。点眼薬やその使い方等について、ご不明な点は医師、薬剤師に相談するようにしてください。


【参考資料】
1)日本眼科医会 点眼剤の適正使用ハンドブックQ&A:社団法人東京医薬品工業協会 点眼剤研究会、大阪医薬品協会 点眼剤研究会(初版)平成23年9月、2011年