2019年1月号 薬剤科コラム

風疹について知っていますか?

薬剤科 添野 聖恵

  • 風疹について
  • 寒さが身にしみる頃となりました。皆様いかかがお過ごしでしょうか。

    ノロウイルスやインフルエンザなど季節で流行るウイルスもありますが、昨今風疹感染が増加しており、厚生労働省から風疹感染への注意喚起がされています。 平成30年12月5日までに報告された今年の風疹患者累計報告数は2454人で、1万4344人が感染した2013年の流行以来、5年ぶりに2000人を超え、風疹の流行が深刻化しています。

    そこで、今回は風疹についてお話したいと思います。

症状

  • 風疹は発熱・発疹・リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症
  • 風疹は発熱・発疹・リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症です。感染しても症状が出ない場合や、関節炎を伴う場合、重篤な合併症(脳炎など)併発まで幅広く、臨床症状のみで風疹と診断することは困難な疾患です。

    上気道粘膜より排泄されるウイルスが咳やくしゃみなど(飛沫)を介してうつります。また、インフルエンザと同様に、接触感染でもうつります。

治療

発熱、関節炎などに対しては解熱鎮痛剤が用いられますが、特異的な治療法はなく、症状を和らげる対症療法のみとなります。

予防

男女ともにワクチン接種をして、まず風疹の流行を抑制し、特に女性は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要です。そのためには1歳以上で2回の予防接種を受けておくことが必要です。(後述参照)

現在の風疹の予防接種状況

  • 風疹の定期接種
  • 予防接種には法律に基づいて市区町村が主体となって実施する「定期接種」と、希望者が各自で受ける「任意接種」があります。 接種費用は、定期接種は公費ですが(一部で自己負担あり)、任意接種は自己負担となります。市区町村が実施する予防接種の種類や補助内容の詳細については、市区町村などに確認して下さい。

風疹の予防には、風疹と麻疹(はしか)の2つを予防する「麻疹風疹混合(MR) ワクチン」を打つことを、国や専門家は勧めています。

風疹だけの「単独ワクチン」もありますが、成人は麻疹の抗体が少ない人も多く、妊娠中に麻疹にかかると流産や早産のリスクが高くなります。

風疹のワクチンは2回の接種で約95%、2回の接種で約99%、風疹を予防できるとされています。確実に抗体をつけるためには2回の接種が勧められています。また、接種歴が分からないなどの理由で、3回接種しても問題ありません。

風疹の定期接種

風疹が流行している原因にワクチンの接種状況がある。
予防接種の「空白世代」は要注意!!

風疹が流行している原因にワクチンの接種状況がある。

予防接種法上、男性が風疹の予防接種を受けられるようになったのは昭和54(1979)年4月2日以降に生まれた人からです。それ以前に生まれた男性は風疹の定期接種を受ける機会がありませんでした。

一方、昭和37(1962)年4月2日~昭和54(1979)年4月1日に生まれた女性は、先天性風疹症候群の発生を減少させることを目的として、中学生の時に学校で集団接種として1回、風疹の予防接種を受けていましたので、接種率が高く維持されていました。

次に風疹の流行を抑制することを目的として、平成6(1994)年に予防接種法が改正され、平成7(1995)年度から12~90ヵ月未満の男女小児と中学生男女に1回の個別接種が実施されることになりました。この時中学生であった昭和54(1979)年4月2日~昭和62(1987)年10月1日に生まれた男女は学校での集団接種ではなく、保護者同伴で医療機関を受診して1回接種する方法に変わったために、それまで接種率が高かった女性も接種率が激減し、定期接種として受けられるようになった男性も接種率は高くありませんでした。

そのため、平成13(2001)年11月7日~平成15(2003)年9月30日までの期間に限って、昭和54(1979)年4月2日~昭和62(1987)年10月1日生まれの人については、定期接種として1回の接種機会を与える経過措置が設けられましたが、この接種率も低迷しました。

平成18(2006)年度からは、使用ワクチンは原則、麻疹風疹混合(MR)ワクチンとなり、1歳と小学校就学前1年間の幼児に対する2回の定期接種が始まりました。また、平成20(2008)~平成24(2012)年度には5年間の時限措置として、中学1年生と高校3年生相当年齢を対象に2回目の定期接種が実施されました。

このような経緯から、大人の風疹患者の9割が30代から50代の男性という結果となっています。接種率が低く、また接種する機会があったとしても1回だけであったため、接種していたとしても時間とともに抗体が下がっている可能性があるのです。


妊娠と先天性風疹症候群

風疹に伴う最大の問題は、感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が感染することにより、風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈する「先天性風疹症候群」が出現することにあります。

  • 妊娠と先天性風疹症候群
  • 妊娠初期の女性が風疹にかかると、生まれてくる赤ちゃんが「先天性風疹症候群」になる確率は、妊娠1ヶ月で50%以上と言われています。赤ちゃんが生まれながら持つ病気「先天性風疹症候群」。この病気から未来の赤ちゃんを守るために、妊娠を望む女性はもちろん、みんなでその症状や原因を理解し、風疹を予防していくことが大切です。

厚生労働省からの注意喚起にも「特に妊婦を守る観点から、診療に関わる医療関係者、これまで風疹にかかっていない者、風疹の予防接種を受けていない者及び妊娠を希望する女性等への注意喚起等、風疹に対する一層の対策の実施をお願いします」とあります。患者報告数の多い30代から50代の男性は、風疹にかかったことがあることが検査で確認されている、風疹の予防接種を受けたことが1歳以上で2回ある、又は風疹に対する抗体が陽性であると確認ができている者を除いた者に対して、任意で風疹の予防接種(原則、麻疹風疹混合(MR)ワクチン)を受けるように呼び掛けています。MRワクチンは当院でも接種できます。

『“風疹ゼロ”プロジェクト』

公益社団法人 日本産婦人科医会が先天性風疹症候群児の出生をゼロにし、風疹の完全抑制を目標とした活動を進めています。2017年夏、厚生労働省をはじめ、行政や各種団体等の理解・支援のもと、『“風疹ゼロ”プロジェクト』を立ち上げました。

2月は「風疹ゼロ」月間として、2月4日は「風疹の日」と定めて、ワクチンの接種を呼びかける啓発活動を行っています。


今一度、風疹を考えるきっかけになればと思います。

(参考元)
1)感染症 予防接種ナビ
2)NIID 国立感染症研究所
3)日本産婦人科医会HP
予防接種に関するQ&A集/一般社団法人日本ワクチン産業協会