ドクターコラム

糖尿病で起こりうる合併症について

糖尿病・内分泌代謝内科 医長  山根 貴裕

掲載日:2023年11月10日

糖尿病に特徴的な細小血管(細い血管)合併症:神経障害、網膜症、腎症

糖尿病に特徴的な細小血管(細い血管)合併症については、神経障害『し』、網膜症『め』、腎症『じ』の頭文字をとって、『し、め、じ』で覚えます。

細小血管合併症① 神経障害

  • 細小血管合併症①神経障害
  • 糖尿病性神経障害は血中の過剰なブドウ糖が原因で神経細胞が障害されることにより起こります。糖尿病性神経障害には、手足の感覚や運動をつかさどる神経における「末梢神経障害」、胃腸や心臓といった内臓の働きを調節している神経における「自律神経障害」、その他の神経の障害があり、全身にさまざまな症状を引き起こします。

「末梢神経障害」の症状は足の先から現れることが多く、足の裏がしびれ、足の裏に薄い皮が張っているような感覚が生じます。「自律神経障害」の症状は、下痢、便秘、胃もたれ、頻尿、失禁、勃起障害、発汗異常、起立時のふらつきなどがあります。

細小血管合併症② 網膜症

  • 細小血管合併症②網膜症
  • 糖尿病性網膜症では、網膜の血管が傷むことにより光の感知が悪くなります。糖尿病のコントロールが悪いと、単純網膜症→増殖前網膜症→増殖網膜症というように網膜症が進行してしまいますが、無自覚で進行することも多いため、糖尿病と診断された場合は定期的な眼科受診が必要です。

細小血管合併症③ 腎症

  • 細小血管合併症③腎症
  • 糖尿病性腎症では血液を濾過する細い血管の塊である腎糸球体が高血糖により傷むことにより、腎臓の働きが悪くなります。糖尿病性腎症の進行にもっとも大きく影響するのは血糖コントロールですが、高血圧症や脂質異常症も腎症進行の要因となります。腎臓の機能が著しく低下した場合には、人工的に腎臓の機能を補う「透析療法」という治療を行いますが、無自覚で進行することも多いため、糖尿病と診断された場合は定期的な通院、検査が必要です。

糖尿病だけに起こるとは限らないが、糖尿病があるとより進行しやすい大血管(太い血管)合併症:動脈硬化による脳卒中、心筋梗塞や足病変

動脈硬化

動脈硬化とは、動脈の壁が厚くなり、固くなることで、血管が詰まりやすくなった状態をいいます。動脈硬化は年をとれば程度の差はあれ誰にでも起こりますが、糖尿病は動脈硬化のリスクを高める疾患の一つです。その他に動脈硬化のリスクを高める疾患としては、脂質異常症、高血圧症、喫煙、肥満、加齢などがあります。動脈硬化が進行すると、脳卒中、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などが起きる可能性があります。

食生活で気を付けること

  • 食生活で気を付けること
  • 糖尿病治療の基本は食事療法です。適正なエネルギー量で、バランスの良い、規則正しい食事を摂取することが重要です。糖尿病だからと言って食べてはいけないものはありませんが、ブドウ糖や果糖、ショ糖などの単糖類(ジュース、お菓子、果物など)は、糖の吸収が早いため血糖値が上がりやすいため、注意が必要です。糖尿病と診断されている方はご自身の食事を見直すためにも、栄養指導を積極的に活用してみてください。