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2018年7月号 ドクターコラム

心電図検査で見つかる病気と
見つからない病気

循環器内科 医長 佐藤 弘典

心電図検査は、採血検査やレントゲンとならび、病院での診察や健康診断の際に施行される頻度が高い一般的な検査です。ですから、心電図検査をこれまで一回も受けたことがない、という方は少ないと思います。心電図は病気を発見するためにとても有用な検査でありますが、心電図検査だけでは見つけることが難しい心臓病もあります。

なぜ、心電図という検査が普及しているのか

なぜ、心電図という検査が普及しているのか

心電図は1903年にオランダの医学者アイントーベンによって考案されました。アイントーベンはその功績により1924年ノーベル医学生理学賞を授与されました。つまり、心電図検査は、当時のノーベル賞の受賞理由になりうる画期的な最先端の科学だったのです。そして100年近く経った現在でも廃れることなく使用されているのですから、心電図の発見・発明がいかに素晴らしいものであるかがわかります。

心臓は拍動すると同時に電気が流れているのですが、その電気興奮を波形として記録したものが心電図になります。現在、病院で行われる心電図検査は12誘導心電図といい、一枚の心電図記録には12種類の波形が記録されます。12種類もの波形を記録する理由は、心臓を流れる電気興奮を12の方向から観察し、全体像をしっかりと把握するためになります。

医学の進歩というのは日進月歩で様々な医療技術が開発されていますが、心電図検査が現在でも重宝されている理由は、患者さんに大きな負担(痛み、放射線被ばく、時間的拘束など)をかけることなく実施することが可能で、すぐに波形記録を確認でき、かつ得られる情報量が多いから、ということになると思います。しかし聴診器のみの診察では限界があるように、心電図検査のみでは心臓の状態や病気のことが全てわかるわけではありません。

心電図は、心臓のこと全てがわかるわけではない

心電図は、心臓のこと全てがわかるわけではない

血液検査ではその結果は数字となって表現されますが、心電図検査では波形が記録されます。心電図には、「正常」波形とされている波形記録があり、それに当てはまらなければ「異常」と判定される(特に心電図健診において)ことになるわけです。しかし、「正常」波形ならば心臓に病気がなく、「異常」波形は心臓に病気を抱えている、と必ずしもなるわけではありません。

心臓は規則正しく動いていますが、それは心臓で規則的に電気が発生して流れているからです。心臓の規則正しさが乱れる「不整脈」の診断は、心電図検査の最も得意とする領域になります。「心筋梗塞」「狭心症発作」のときには、心臓の電気的活動に異常が生じるので、異常波形が出現します。また、「心筋症」という心筋に障害が起きている疾患でも異常波形が記録されることが多くなります。

しかし、弁という心臓内の構造物の働きが悪くなっている「弁膜症」では、だいぶ進行してからでないと心電図波形は変化してこないことが一般的です。また、「狭心症」や「不整脈」などでは発作が起こったときでないと心電図波形に変化がみられないこともありますので、測定時の心電図が正常だからといって心臓病がないとは言い切れません。

逆に、健診結果で「異常」と判定された波形であっても、最終的に「問題なし」や「経過観察」と判断されるケース(病気とは言えず、治療の必要性なし)も結構あります。例えば、心臓の基本的な働き(全身に血液を送るポンプ機能)は正常で、突然死を起こす可能性は高くないと判断しうるのであれば、正常とはやや異なる電気興奮をしていたとしても、そのケースでは「問題なし」「経過観察」という結論になることがあります。

心臓を調べる検査は心電図のほかにどのようなものがあるのか

発作時の心電図記録が有用だと考えられるケースでは、運動負荷心電図や24時間心電図(ホルター心電図)といった特殊な心電図検査を行います。心臓の形態やポンプ機能を確認するためには、心電図よりも心臓超音波検査(心エコー)が有用になります。また、狭心症や心筋梗塞を疑うときには、冠動脈CT検査や心筋シンチグラフィー、心臓カテーテル検査といった検査が、病気の診断の確定や治療法の決定に必要となります。