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2017年12月号

心不全に対するリハビリテーション

リハビリテーション科 理学療法士 小牧俊也

当院のリハビリテーション科では、大きく分けて、下記の5つの分野の領域を扱っています。

① 脳血管疾患等リハビリテーション
脳卒中や脊髄損傷などの脳や神経の病気
② 運動器リハビリテーション
骨折や変形性関節症などの骨や関節の病気
③ 呼吸器リハビリテーション
肺気腫や肺炎などの肺や気道の病気
④ 心大血管疾患リハビリテーション
心筋梗塞や大動脈解離など心臓や血管の病気
⑤ がん患者リハビリテーション
がんに対して手術、化学療法や放射線治療を行う方

それぞれ病気の治療法やリハビリの訓練内容が異なるため班が別れています。今回は、私の専門領域である④心大血管疾患リハビリテーションの領域の、心不全に対するリハビリテーションを紹介します。

心不全とは

心臓は血液を肺や全身へ送り出すポンプの役割を果たしています。血液中には酸素や栄養分など人体に必要不可欠な成分が含まれています。それらが神経や筋肉などの細胞に行き届くため、考えたり、呼吸をしたり、運動したりすることができます。心不全とは、「心臓のポンプ機能が低下した結果、呼吸困難、息切れ、むくみなどの症状が出現した状態」です。

心不全の原因と治療

心臓のポンプ機能が低下し心不全に至る原因には、心筋梗塞不整脈弁膜症高血圧加齢などがあります。心不全の治療では上記の原因となる病気に対する治療をしていきます。薬による薬物治療がメインとなりますが、ペースメーカー植え込み手術運動療法(心臓リハビリテーション)も治療に含まれます。心不全はきちんと治療・管理しないと、再発を繰り返すことがあり、かつ徐々に進行していき重症化しますので、決してあなどってはなりません。

心不全と運動

呼吸により肺では酸素が血液中に取り込まれます。その血液を心臓がポンプとして筋肉に送ります。筋肉がその酸素を利用し収縮することで体を動かすことができます。このように肺と心臓と筋肉は密接に関連しています。肺の病気でも、心臓の病気でも、加齢とともに筋肉が萎縮してしまっても息切れが出現します。心臓の病気に対して運動を行うのは、肺や心臓の機能が落ちても筋肉の機能を維持・向上させることで症状を改善させるためです。運動能力と関係が強いのは、心臓のポンプ機能の強さより、筋肉量と関係が強いと言われています。したがって、筋肉量の低下が息切れの一番の原因ということです。息切れ安静筋肉が萎縮さらに息切れという悪循環が生じています。また、長期間安静にしすぎると、筋肉の萎縮だけではなく、筋力低下、肺活量の低下、起立性低血圧(立ちくらみ)、骨粗鬆症など、全身の働きを調節するしくみの異常が起こります。医師から安静にするように指示があった場合を除き、過剰に安静は避けましょう。

心不全のリハビリテーション

心不全に対するリハビリは①運動療法②教育(疾病管理)です。

① 運動療法

薬物療法にて心不全をコントロールされた状態での運動療法が推奨されています。症状が強くなっている場合は運動療法の適応とならないため注意してください。以下に4つの基本項目を紹介します。

種類
有酸素運動が安全で効果的とされています。ウォーキング、サイクリング、水中ウォーキング、エアロビクス、競技制のない卓球やテニスも含まれます。また、軽い筋力トレーニングやストレッチを併用することがより効果的とされています。
強度
息が切れない程度、会話ができる程度の強度とされています。翌日に疲労が残っている場合は強度が強い可能性があります。
時間
準備運動(ウォーミングアップ)と整理体操(クールダウン)を含め、1日30分から60分が目標です。連続で行うのが体力的に難しい場合は、午前と午後の2回に別けてもかまいません。
頻度
週3日から5日、できれば毎日行いましょう。しかし、梅雨の時期や積雪の日、猛暑日の屋外の運動は避けてください。

② 教育(疾病管理)

心不全の患者さんは「自己管理」の方法を学んでいます。自分自身の努力や家族の協力で再入院を予防することができるからです。入院中は医師、看護師、理学療法士を始め、薬剤師、管理栄養士、社会福祉士などがチームとして支援していきます。自己管理が可能な心不全を引き起こす要因として、内服の中断・忘れ水分・塩分の過剰摂取感染症アルコール多飲過労ストレスなどがあり、これらを管理する事が非常に重要です。また、血圧や脈拍、体重、活動量(歩数)などは数値で管理することができ、変化がわかりやすい指標になります。チームの一員として理学療法士も、これらの管理を促す事、アドバイスをする事も行っています。

何かお困りのことがありましたら、気軽に主治医または担当の理学療法士にご相談ください。