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2018年1月号

2型糖尿病で使われるお薬について

薬剤科 寺西 徳子

新春のお慶びを申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、昨年末の忘年会やクリスマスに引き続き、正月休み、新年会など何かと行事が重なる時期ではありますが、ついつい高カロリーの食事を食べ過ぎたり、飲み過ぎたりしてはいないでしょうか。

今回は生活習慣が乱れがちなこの時期、生活習慣病の代表的疾患ともいわれる2型糖尿病で使われるお薬についてお話しさせていただきます。

2型糖尿病とは

2型糖尿病の患者さんは年々増加しています。2016年厚生労働省の行った国民健康・栄養調査によれば、日本人口の6人に1人は糖尿病またはその予備群だとされています。
糖尿病は自覚症状に乏しいことから診断を受けても未治療、あるいは治療を中断するケースが非常に多く、放置しておくと血管の糖化(老化)を起こし、 糖尿病腎症網膜症神経障害といった糖尿病特有の合併症に進展します。これに脂質異常症(コレステロール高値)などが重なれば脳梗塞心筋梗塞となります。

2型糖尿病の治療

糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法です。そして、経口血糖降下薬、インスリン、GLP‐1作動薬を用いて行う薬物療法は食事と運動では十分な血糖コントロールが図れない場合に補助的な役割を担います。

近年、糖尿病治療薬は医療技術の発展に伴い、より効果的で、副作用が少ないものが増えてきました。しかし、処方薬が開始されたあとも食事・運動療法を継続して行っていかなければ期待通りの薬効は得られません。

2型糖尿病において経口血糖降下薬は重要な薬物治療の位置付けではありますが、2型糖尿病であっても妊娠中、あるいは妊娠の可能性のある場合には使用できません。経口血糖降下薬は糖尿病の病態(インスリン抵抗性増大、インスリン分泌低下、高血糖状態)に合わせて薬剤が選択されます。(図1)。

(図1)病態にあわせた経口血糖降下薬の選択

病態にあわせた経口血糖降下薬の選択

現在使用されている経口血糖降下薬はビグアナイド薬、チアゾリンジン薬、DPP-4阻害薬、スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)、αグルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、SGLT2阻害薬があります。これらの薬剤のうち特に注意が必要な薬剤を3つお示しします。

ビグアナイド薬SGLT2阻害薬は注意が必要な脱水が生じる可能性があります。ビグアナイド薬は高齢者、心臓のはたらきが低下している患者さん、肝臓、腎臓のはたらきが低下している患者さんでは意識障害をもたらす乳酸アシドーシス(血液が酸性化する)をきたす可能性があります。
また、 SGLT2阻害薬は高齢者、腎臓のはたらきが低下している患者さん、利尿剤使用中の患者さんなどにおいて、脱水、脳梗塞、血栓・塞栓症の発現に注意が必要です。これらの薬剤を服用中は、水分を1リットル以上摂取するようにします。シックデイ(※1)時には休薬も考慮します。

(※1)シックデイ
発熱、風邪などの感染症や下痢、腹痛などで、血糖コントロールが乱れること

②長期的に飲んでいると効果がなくなる薬があることをご存じでしょうか。有名なものはスルホニル尿素(SU)薬があります。この薬は食事の有無に関係なく長時間膵臓からインスリンを分泌し続けます。確実に血糖をさげるという利点はありますが、膵臓の疲弊を招き薬剤を増量しても効果がみられなくなる(二次無効)ことがあります。この点については医師の総合的な判断が必要となります。(※2)

(※2)経口血糖降下薬が効かなくなる主な原因
1.食事療法、運動療法の乱れ
2.服薬の中断、用量の乱れ
3.ストレス
4.インスリン抵抗性の増加、体重増加、感染症、悪性疾患
5.肝炎、肝硬変の進展
6.高血糖をきたす薬剤の併用、ステロイド゙など
7.インスリン分泌の低下、緩徐進行型1型糖尿病、高血糖の持続による膵β細胞の疲弊、膵疾患による膵β細胞の破壊

αグルコシダーゼ阻害薬と、速効型インスリン分泌促進(グリニド)薬は飲み方に注意が必要です。これらはともに食直前に飲む薬ですが食直前とは食事の5~10分前のことをいいます。αグルコシダーゼ阻害薬は食事をしたときの糖の吸収を緩やかにするため食直前でなければ効果がなくなってしまいます。一方、速効型インスリン分泌促進(グリニド)は即時的に膵臓からインスリンの分泌を促します。インスリンの作用によって低血糖を引き起こす危険性があるため、食事からの糖の吸収が始まる食直前に薬を服用する必要があります。そのためこれらの薬を飲み忘れたことに気付いた場合、食事中や食直後を除いて、すぐに服用してはいけません。

経口血糖降下薬による低血糖

低血糖は糖尿病の薬物療法中、最も高頻度にみられる急性合併症です。血糖値が60-70mg/dl以下になると冷や汗、顔面蒼白、動悸、などが現れ、更に進行すると意識障害、けいれんなどの低血糖症状が現れます。高齢になるにつれて低血糖の発現頻度が多く、これらの自覚症状が現れにくくなることに注意が必要です。

低血糖時の対処法

低血糖を疑わせる症状が出現した場合は直ちに血糖自己測定を行い血糖値を確認します。そして低血糖と確認できた場合はブドウ糖(単糖)10g程度を速やかに服用します。近くにブドウ糖がなければ飴玉、チョコレート、和菓子などの甘いものを口にします。このとき、注意が必要なのは、α‐グルコシダーゼ阻害薬を服用している場合にはブドウ糖またはブドウ糖を含むジュースや清涼飲料水を口にしなければなりません。α‐グルコシダーゼ阻害薬は砂糖などの二糖類をブドウ糖(単糖)に分解するα‐グルコシダーゼ(酵素)のはたらきを抑えることで食事からのブドウ糖の吸収を緩やかにし、食後高血糖を改善する薬です。そのためαグルコシダーゼ阻害薬を飲んでいる場合には飴玉やチョコレートでは速効性が期待できません

また、血糖値が測定できなくても、ブドウ糖を服用後すぐに症状が軽快すれば低血糖であった可能性が高いです。さらに低血糖が起きた場合には、その原因を振り返り再発防止のための生活習慣の見直しを図ることも重要です。