広報紙 しんゆりニュースレター vol.2

成長路線から成熟路線へ

新百合ヶ丘総合病院 名誉院長
よしむら やすのり
吉村 泰典 名誉院長
【プロフィール】
内閣官房参与(少子化対策・子育て支援担当)
福島県立医科大学 副学長
慶應義塾大学 名誉教授
一般社団法人 吉村やすのり生命(いのち)の
環境研究所 代表理事

我が国の喫緊の課題となっている超少子高齢化問題は、医療問題とも密接に結びついています。私が日本産科婦人科学会の理事長を務めていた10年ほど前には、産婦人科医の不足が甚だしく、特に地方ではお産をする施設がないという状況でした。国に周産期医療の立て直しを要望したところ、産婦人科医の待遇が改善され、ようやく人員不足は解消してきました。

当院は、川崎市北部の産婦人科医療の充実に寄与することを一つの目的として2012年に開院。開院から5年で日本有数の産婦人科に成長しました。この伸び率とクオリティーの高さは瞠目に値します。身体への負担が少ない低侵襲の腹腔鏡下手術は年間1100件以上施行されており、東日本では最も件数の多い病院だと思います。またリプロダクションセンターでは年間500件近い体外受精を行っており、その妊娠率も30~40%となっています。周産期・低侵襲婦人科手術・体外受精と、ここまで整っている病院は、大学病院の産婦人科でもなかなかありません。

今後の抱負としましては、年間約450件の分娩件数をもっと伸ばしたい、ということがあります。今の我々の力であれば可能なはずです。また無痛分娩も、麻酔科の協力を得て増やしていきたい。そのためには看護体制の充実と小児科の協力も必要となるでしょう。将来的にはNICU(新生児集中治療管理室)も当院につくることができればと考えています。

これから先、病院全体として取り組んでいきたいのは、院内保育、病児保育、病後児保育、お泊り保育などを利用できるシステムを院内につくっていくことです。そうすれば女性医師・職員は安心して子育てができますし、仕事を継続することができます。当院はこれまでずっと成長路線で来ましたが、これからは成熟路線も目指したいと思います。働く環境を整えて、業務の効率化を図るのが成熟するということです。職員のクオリティー オブ ライフを向上させ、そして患者さんに安全な医療・成熟した医療を提供できる病院となることが理想です。

インタビュー Intervew vol.2

低侵襲婦人科手術のスペシャリストが語る
患者さんにベストな治療を!

新百合ヶ丘総合病院副院長・産婦人科 部長 浅田 弘法 医師

日本産科婦人科学会認定医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医/ 日本生殖医学会生殖医療専門医/日本産婦人科内視鏡学会理事


低侵襲婦人科手術・実際の手術の様子

実際の手術写真

――低侵襲腹腔鏡下手術の方法とメリットをおしえてください。

腹腔鏡下手術は3~15mmのとても小さな傷から腹腔鏡というカメラを腹腔内に入れ、モニターに映った画像を観察しながら、専用の手術器具を用いて行う手術方法です。二酸化炭素ガスでおなかを膨らませて腹腔内を観察します。標準的な切開の部位は、おへその1か所と、おなかの下の方の3か所です。腹腔鏡下手術が適応とされる病気は、不妊症検査、卵巣嚢腫、子宮筋腫、子宮内膜症など良性婦人科疾患のほぼすべてにわたっています。また、子宮体がん、子宮頸がんなどの婦人科悪性腫瘍に対しても、当院では腹腔鏡下手術での治療を行っています。婦人科悪性腫瘍手術への腹腔鏡の応用は、海外では標準治療の一つとなりつつありますが、国内ではまだ、行っている施設が限られているのが現状です。おなかを大きく切る従来の手術に比べて、傷も目立たず、痛みも少なく、入院日数が短いため、社会復帰も早くできる利点があります。

――当院の腹腔鏡下手術は年々症例数が増えていますね。

当院は治療の低侵襲性に力を入れており、腹腔鏡下手術は年間1100件を超えています。従来開腹手術になることが多かった婦人科手術の95%以上が腹腔鏡下手術で行われているのが当院の特徴です。首都圏では最も婦人科腹腔鏡下手術の症例数が多い病院の一つとなっています。2014年4月から、当院では腹腔鏡下子宮体がん手術の施設認定を取得し、保険診療を開始しました。子宮頸がん手術は先進医療として施行しています。子宮頸癌に対する子宮温存手術である、子宮頸部広汎切除術(トラケレクトミー)も腹腔鏡で施行しています。また現在、治療方法の低侵襲化を目指して、センチネルリンパ節生検をとりいれた婦人科悪性腫瘍の治療を開始しました。センチネルリンパ節の婦人科領域への応用はまだこれからですが、この方法はリンパ浮腫の発症予防になるため、病気の治りやすさに影響を与えなければ、よい方法と考えています。この分野でも日本は海外に遅れをとっています。我々にとっては多くの手術のなかのお一人であっても、患者さんにとっては一度きりの大切な手術ですから、まずは「患者さんにとって最善の診療は何か」を模索します。手術をするならば一番クオリティの高い手術をしたいですし、最良の治療を提供したいと考えています。


腹腔鏡手術

従来の開腹手術

腹腔鏡の創部

――婦人科の受診を迷っている女性たちに、アドバイスをお願いします。

診断がついていない方とついている方とでは違いますが、 診断がついていない方で症状がある場合には、迷わず受診されることをお勧めします。最初の窓口は地域のクリニックでも当院でも、どこか受診されてください。診断をされた上で、治療方法はいろいろな医師の意見をききながら、ご自分の納得する治療を受けていただければと思います。当院は病理診断科や放射線診断科による診断や判断が早く、診断から治療まで、迅速な対応が可能な病院です。ご病気や治療方法によっては、ご本人の受け入れのお気持ちを待つこともありますが、治療の方向性や、ご本人の迷いがなく、判断が決まった場合は、できるだけ早めの治療を行うことを心がけています。また週末の土曜日にも産婦人科の診療を行っています。外来が混雑したり、予約が取りにくいなどのご不便をおかけすることもありますが、土曜日の診療も含めた対応が可能ですので、仕事をされている女性も受診がしやすいと思います。もし婦人科の病気でお悩みの方がいらっしゃいましたら、安心のために、ぜひ一歩を踏み出してみてください。


婦人科受診の際は、ご予約をお取りの上、ご来院なさることをお勧めいたします。

【予約電話番号:0800-800-6456(9:00~17:00)】 ※月~土(日・祝日除く)

当院の放射線機器のご紹介

新百合ヶ丘総合病院では、最先端の医療機器を導入し、知識や技術の習得に積極的に取り組んでいます。
先進医療や高度な予防医学の実践、さらには脳・心臓循環器救急やがん治療に貢献するという社会的使命を果たし、
予防と診断、治療の面から皆様の健康を支え、首都圏における“最良の安心”となるべく努めてまいります。

治療部門

サイバーナイフ

  • サイバーナイフは、体にメスを入れず、がんなどの病巣だけを多方面から狙い、放射線(エックス線)を集中照射する定位放射線治療装置です。病巣以外の副作用を極力抑えた治療が可能です。

リニアック

  • リニアックは標準的ながん放射線治療装置で、全身のどの部位に対しても、がんの種類やステージに合わせて柔軟な対応が出来ることが最大の特徴です。当院に導入している装置は、最新型のバリアン社製Exac Trac付「トゥルービーム」で、高精度放射線治療が可能な装置です。

診断部門

CT

CTとは、被写体の周囲からX線を照射し、得られた情報をコンピュータで処理することによって人体の内部を輪切り画像として表示することができる検査です。造影剤を使用することにより、血管の情報も含めたより詳しい検査を行うことが出来ます。輪切りの画像だけでなく様々な断面の画像の作成や、骨や血管の3D画像の作成も可能なため、診断のためにより多くの情報を提供することができます。

MRI

MRI検査は、磁気と電磁波を利用して体の断面を撮影する検査です。X線を使わないので、放射線による被曝の心配もありません。当院には3.0テスラと1.5テスラの磁場をもつMRIが設置されています。MRI装置は磁場強度により利点と欠点があるため、当院では部位や検査目的により2台の装置を使い分け、より良い画像が提供できるよう検査を行っています。

マンモグラフィ

  • PET-CT

  • マンモグラフィは乳がんの早期発見に役立ちます。小さな腫瘍の陰影や微小な石灰化部分も捉える圧倒的な高画質の性質をもっています。撮影は、マンモグラフィ撮影技術認定技師を含む女性技師が担当しています。

PET-CT

PET検査は主にがんの有無・広がりを調べる検査です。まずFDGと呼ばれる糖と放射性同位元素を結びつけた薬剤を体内に注入し、がんに糖が取り込まれる性質(糖代謝)を利用して画像化します。この装置はCT装置を搭載しており、PET画像とCT画像と融合させることで病変の正診率を高める事が出来ます。また従来装置と比べCTの被曝線量を格段に低減できる機能を有しています。当院では2台のPET-CTが稼働しています。

SPECT

SPECT検査はRI(放射性同位元素)を体内に投与し、臓器の機能・状態を視覚的に画像として得る装置です。ごく微量の放射線を放出する放射性同位元素が体内の臓器に特異的に集積する性質を利用し、カメラにて撮像します。この装置は従来よりも短時間で良い画像が得られることが特徴です。またCT装置が搭載されておりますので、ずれのない、より正確で明瞭な画像を得る事が可能です。

専門外来のご案内

  • 井廻道夫医師
  • 肝臓病・肝臓がん専門外来

    黄疸・腹水などの肝障害、肝機能検査異常、肝臓がんの専門外来です

    消化器・肝臓病研究所 所長  井廻 いまわり  道夫 先生

    日本内科学会認定内科医・指導医/日本消化器病学会認定消化器病専門医・指導医/日本肝臓学会専門医・指導医)

専門外来の特長

「肝臓病・肝臓がん専門外来」は、黄疸・腹水などの肝障害の症状のある患者さん、肝機能検査異常のある患者さん、肝臓がんの患者さんのための専門外来です。

肝臓病の主な原因

ウイルスによる肝炎とウイルス以外が原因で起こる肝障害とに分けられます。ウイルス以外が原因で起こる肝障害には、脂肪性肝疾患、アルコール性肝疾患、薬物性肝障害、自己免疫性肝疾患、先天性肝疾患などがあります。

肝臓病の主な症状

肝臓は、障害がみられてもすぐに症状が出ないことが多く「沈黙の臓器」といわれています。障害が高度になると、目や体が黄色くなる(黄疸)、手のひらが赤くなる(手掌紅斑)、体の表面の細い血管が浮き出てくる(くも状血管腫)、出血しやすくなる(出血傾向)、口臭がある、おなかがふくれてくる(腹水)、すぐ眠ってしまう(肝性脳症)などの症状がみられることがあります。進行すると食道の静脈が太くなり(食道静脈瘤)、出血して吐血をきたすこともあります。

肝臓がんの検査・治療

肝臓がんを診断するための検査としては腹部超音波検査、造影CT、造影MRI、腹部血管造影検査、肝生検、腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-Ⅱ)があり、これらを適宜組み合わせて診療しています。当院では、128列マルチスライスCTや3.0テスラMRIなどの最先端の医療機器を導入しており、がんの早期発見や診断に役立てています。肝臓がんが発見された患者さんに対しては、可能なら切除、あるいはラジオ波焼灼術を行います。必要に応じてサイバーナイフによる治療も加えます。適応外の肝臓がんに対しては、肝動脈化学塞栓療法を行います。

診療日

月曜日 9:00~12:00 金曜日 8:30~12:00
外来診療予約専用TEL(通話料無料) 0800-800-6456【予約制】
※諸事情により変更・休診になることがございます。あらかじめ、外来診療担当表をご確認の上、ご予約をお取りいただいてからお越し下さい。

講座・イベントのご案内

医学健康講座

※時間…14:00~15:00/会場…STRホール(新百合ヶ丘総合病院3F、定員150名、先着順)
9月22日(金) 自宅でもできる感染対策 感染対策室 井上 美智 看護師
9月27日(水) ~ストレスに負けない~メンタルヘルスについて 精神科 科長 戸部 有希子 先生
9月29日(金)

新たな現代病、慢性腎臓病(CKD)について

~進行させない治療と生活習慣~

腎臓内科・透析内科 医長

横山 健 先生

市民医学講演会

※時間…14:30~15:30
9月12日(火) 飲んではいけないくすりの話は本当か?
~心臓のくすりの疑問にお答えします~
循環器内科
羽田 泰晃 先生
小田急ホテル相模大野
8F相模野(定員120名)
9月14日(木) この苦痛をちゃんとわかってほしい
~上手に診察を受ける5つのポイント~
総合診療科 科長
川島 彰人 先生
町田市文化交流センター
(けやき) 5F(定員120名)
9月15日(金) 頻尿、尿漏れについて
~男女で違う原因・治療法~
泌尿器科 医長
黄 和吉 先生
小田急ホテル相模大野
8F相模野(定員120名)

※ 講座の講師及び演題は予告なしに変更になる場合がございます。

開院5周年記念講演会を開催しました

  • 原 千晶さんの講演会

  • 新百合ヶ丘総合病院の開院5周年を記念した講演会が8月2日(水)13時より当院のSTRホールにて開かれ、患者さんや地域の方など約200人が訪れました。今回は、特別講師としてタレントでよつばの会代表の原千晶さんをお招きし「大切にしたい、自分の体。2度の子宮がんを経験して」と題して講演を行いました。原さんは、自身ががんを克服した体験談を交えながら、がんの早期発見の重要性を強く訴え、来場者は真剣な様子で聞き入っていました。

2017年6月の手術件数は471件、救急車受け入れ台数は664台でした。