肝臓病・肝臓がん専門外来

肝臓病・肝臓がん専門外来とは

「肝臓病・肝臓がん専門外来」は黄疸、腹水などの肝障害の症状のある患者さん、肝機能検査異常のある患者さん、肝臓がんの患者さんのための専門外来です。肝障害の症状のある患者さん、肝機能検査異常のある患者さんでは、急性の肝障害なのか、慢性の肝障害なのか、その原因は何なのかを明らかにし、適切な治療を行います。

慢性に肝障害のある患者さんでは、その原因あるいは合併症に対する治療を行うとともに、定期的に肝臓の超音波検査あるいはCT、MRIを行い、肝臓がんの早期発見に努めます。肝臓がんが発見された患者さんにたいしては、最も適切な治療法を提供します。

対象疾患・治療方法

肝臓病とは

肝障害には急性の肝障害慢性の肝障害があります。慢性の肝障害は肝機能異常が半年以上続くものと定義されています。慢性の肝障害が長期に続くと、肝硬変に至り、肝臓がんが出現してきます。肝障害はその原因によりウイルス性と非ウイルス性に分けることもできます。ウイルス性の原因としては、A型肝炎ウイルス感染、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、E型肝炎ウイルス感染、EBウイルス感染、サイトメガロウイルス感染などがあり、この内、B型肝炎ウイルス感染とC型肝炎ウイルス感染は急性肝炎だけでなく、慢性肝炎、肝硬変もひきおこします。

肝臓病の現状と原因

B型肝炎ウイルス感染者は約120万人、C型肝炎ウイルス感染者は約170万人存在し、肝臓がんの年間死亡者3万人の約15%をB型肝炎ウイルス感染者が、約65%をC型肝炎ウイルス感染者が占めています。

非ウイルス性の原因として多いのは薬物性肝障害、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝疾患です。薬物性肝障害の多くは、同じ薬を飲んでもすべての人に起きるのではなく、一部の人だけに服薬を開始してから2週?3ヶ月して肝障害が起きてきます。アルコール性肝障害は一般に男性では日本酒換算で1日平均3合以上(ビール中瓶1本、ウイスキーダブル1杯、ワイン1/3本が日本酒換算1合のアルコール含量に相当)、女性では1日平均2合以上を毎日、長期間飲むと肝障害が生じることが明らかにされています。

最近増加が問題になっているのが、飲酒をしないのにアルコール性肝障害と同じような肝障害が生じる非アルコール性脂肪性肝疾患です。肥満、糖尿病などが原因になり、日本では1000万~2000万人の患者さんが存在し、そのうちの200万~400万人は肝硬変、肝がんに進行する非アルコール性脂肪肝炎と考えられています。肝臓がんの原因としても増加しており、最近では肝臓がんの20~30%がウイルス以外の原因によることが分かってきています。

その他、主に中年以降の女性では体質で生じる自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変が稀ですが、出現してきます。10歳台、20歳台の肝障害では銅代謝以上によるウイルソン病、中年の肝障害では鉄代謝異常によるヘモクロマトーシスも念頭において診療する必要があります。稀ですが、原発性硬化性胆管炎という病気もあります。

肝臓病の治療

肝臓病の診療の目標は肝臓がんの撲滅です。肝臓がんの大多数は慢性肝障害に伴い発生しますので、慢性の肝障害の原因を除くことが肝臓病治療では重要ということになります。

C型肝炎ウイルス感染

肝臓がんの最大の原因であるC型肝炎ウイルス感染は、効果の高い、副作用の少ない抗ウイルス薬の開発で、12週間の経口薬投与により95%以上の患者さんでウイルス排除が可能になりました。B型肝炎ウイルスに対しても副作用が少なく、効果が高い経口薬が開発されており、服薬中はほとんどの患者さんで、血中のウイルス量を測定感度以下、あるいは肝障害が出ないレベルの低値にコンントロールできますが、服薬を中止するとウイルスはほとんどの患者さんで再出現、増加するため、肝臓がんの予防のためには薬を飲み続ける必要があります。C型肝炎ウイルスに対する薬と同様に一定期間の服薬でB型肝炎ウイルスが排除されるような薬の開発が待たれます。

C型肝炎の自然

薬物性肝障害

薬物性肝障害は大多数が原因薬物の中止により治癒しますが、稀に重症化、慢性化する例もあります。特に一部の肝障害を起こしやすいことが知られて薬は、投与開始2ヶ月から3ヶ月は定期的に肝機能を検査し、肝機能異常が見られたら、薬を中止あるいは変更する必要があります。

アルコール性肝障害

アルコール性肝障害の治療は禁酒、飲酒量の制限です。非アルコール性脂肪性肝疾患の治療は減量、糖尿病のコントロールが中心です。いずれの場合も生活習慣の改善が重要です。

その他の肝疾患

自己免疫性肝炎には副腎皮質ステロイド、原発性胆汁性肝障害にはウルソデオキシコール酸が有効ですので、まず的確な診断が重要です。ウイルソン病では銅摂取制限、銅キレート剤投与が有効ですし、ヘモクロマトーシスでは鉄摂取制限、瀉血が有効です。

慢性肝障害

慢性肝障害が進行すると肝硬変になります。肝硬変では腹水、黄疸、肝性脳症、食道静脈瘤が出現することがあります。腹水に対しては安静、食塩制限、利尿薬投与で対処します。治療抵抗性の腹水に対して経頸静脈的肝内門脈大循環シャント術を行うこともあります。黄疸が進行する例で、肝臓がんの合併のない症例に対しては、私たちの施設では施行していませんが、肝移植も考慮する必要があります。

肝性脳症

肝性脳症に対しては、感染、便秘、消化管出血などの誘因を治療するとともに、分岐鎖アミノ酸製剤等を投与し治療します。食道静脈瘤の出血あるいはその予防に対しては内視鏡的結紮術あるいは硬化療法を行います。胃静脈瘤は必要な場合はバルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術で治療します。治療抵抗性の静脈瘤出血には経頸静脈的肝内門脈大循環シャント術を行うこともあります。

肝臓がん

肝臓がんに対しては、可能なら切除あるいはラジオ波焼灼術を行います。必要に応じてサイバーナイフによる治療も加えます。切除あるいはラジオ波焼灼術の適応外の肝臓がんに対しては、適応があれば肝動脈化学塞栓療法を行います。

診療日

  1. 月曜日 9:00~12:00
  2. 金曜日 8:30~12:00

諸事情により変更・休診になることがございます。
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外来診療予約専用TEL(通話料無料) 0800-800-6456

医師紹介

  • 井廻 道夫(いまわり みちお)
    消化器・肝臓病研究所 所長
    医学博士

専門分野・得意な領域 肝臓病
専門医
指導医
日本内科学会認定内科医・指導医
日本消化器病学会認定消化器病専門医・指導医
日本肝臓学会認定肝臓専門医・指導医
主な経歴
昭和47年 東京大学医学部医学科卒業
昭和49年 米国コロンビア大学内科留学
昭和55年 筑波大学臨床医学系講師(消化器内科)
昭和57年 ロンドン大学キングズカレッジ病院肝臓部門留学
平成3年 東京大学医学部第三内科助教授
平成5年 自治医科大学消化器内科教授
平成10年 自治医科大学大宮(現 さいたま)医療センター教授
平成15年 昭和大学医学部第二内科学講座教授
平成20年 昭和大学医学部内科学講座消化器内科学部門教授
平成24年 新百合ケ丘総合病院消化器・肝臓病研究所所長
自治医科大学名誉教授
日本肝臓学会名誉会員・前理事長
日本消化器病学会功労会員・元理事
日本内科学会功労会員・元理事
日本癌学会名誉会員・元評議員