2021年1月掲載

AHA―BLS G2020
新しい蘇生ガイドラインについての紹介

救急看護認定看護師 伊藤 奈保美

2020年10月21日に新しい蘇生ガイドラインが発表されました。改定で何が変わったのでしょうか? プロバイダーマニュアルの変更点をお伝えします。

  • AHA―BLS G2020新しい蘇生ガイドラインについての紹介
  • BLSの手順や内容については大きな変更はなく、基本的にはG2015講習のままで概ね対応できます。成人・小児・乳児の蘇生法や講習の練習内容や実技試験には変わりがないものの、これまで「特殊なケース」とされていた妊婦の蘇生や溺水、アレルギー対応なども記載されるようになりました。

実技面での変更は補助呼吸の秒数

G2015G2020
成人への補助呼吸 5~6秒に1回 6秒に1回
小児への補助呼吸 3~5秒に1回 2~3秒に1回

妊婦の蘇生

これは昔からガイドラインには書かれていた点ですが、今回初めてBLSレベルで記述されるようになりました。

妊婦であってもCPRはするべきであるし、AEDも普通に使う(胎児に影響はない)という基本事項の確認に加えて、手的子宮左方移動(LUD)が紹介されています。

これは周産期では普通に知られている話ですが、妊婦が仰臥位になると大静脈が圧排されて静脈還流が悪くなります。ただでさえ普段の血流の1/4しか出せない胸骨圧迫下では、大きな腹部を左方に引き寄せるようにして大静脈の圧迫を軽減させる事が重要とされています。具体的には2人以上の救助者がいる場合には、1人は妊婦の左側に位置して両手で腹部を左側に引き寄せるようにした状態でもう1人が胸骨圧迫を行います。

心停止以外の緊急事態の記述の拡大

心臓発作・脳卒中・溺水・女性・アレルギー

心臓発作と脳卒中は以前のガイドラインで記載されていましたが、溺水・女性・アレルギーというのは新しい項目です。女性の傷病者の場合の注意点としては胸骨圧迫の段階では必ずしも服を脱がさなくても良いという点が明記されたのと、AEDを装着する際は必ず服を脱がす、アクセサリー類はパッドにかからなければ外す必要はないとはっきり書かれるようになりました。

アレルギーについては、エピペンの使用方法について詳しく説明されています。

溺水の救助は人工呼吸が先

溺水者の蘇生はC-B-AではなくA-B-Cが望ましいという点は、ガイドラインレベルでは言われていましたが、今回これがさらに発展した形でBLSプロバイダーコースに入ってきました。最初の人工呼吸2回は酸素供給というだけでなく、喉頭痙攣などで喉が閉じているのを開放させるという意味合いがあるものと考えられます。

救助の手順

呼吸確認・なし→人工呼吸2回→脈確認・なし→30対2のCPR開始

コロナ感染リスクと救命

  • コロナ感染リスクと救命
  • 2020年5月28日付けで、新型コロナウイルス感染症を前提とした市民救命法指針の変更が発表されました。厚生労働省のH Pで公示されています。

    詳細はH Pで確認ください。
    厚生労働省HP

新型コロナウイルス感染症を踏まえた市民救命法のポイント

  1. 胸骨圧迫によりエアロゾルを発生させる可能性がある
  2. 新型コロナウイルスが流行している状況においては、全ての心停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対応する
  3. 胸骨圧迫を開始する前に、傷病者の口と鼻にハンカチかタオルをかぶせる
  4. 成人の心停止は、その意志があったとしても、呼気吹き込み人工呼吸は行わない(胸骨圧迫とAEDのみ)
  5. 小児の心停止は、人工呼吸を行う意志がある場合には胸骨圧迫に人工呼吸を組み合わせる
  6. 救急隊引き継ぎ後は速やかに手と顔を洗い、傷病者のハンカチやタオルには手を触れない

感染対策という点では人工呼吸はしない、という事で統一されていると理解している方もいたかもしれませんが、子供の心停止は、窒息や溺水など呼吸障害を原因とする事が多く人工呼吸の必要性が高いため、原則的に人工呼吸は行う、とされている点にご注意ください(救命にあたっては救助者の安全が優先されますので、リスクがあれば人工呼吸はしないという選択肢も出てきます)。